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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(179)

第六章 「血と技」(179)

 荒野と茅、酒見姉妹、東雲目白、甲府太介という六人でマンションを出た。
 このうち、東雲だけが成人で一応スーツにコート姿。他に、大人びて見える荒野もいるが、こちらは外見年齢以前に、髪の色とか彫りの深い顔立ちが、東洋人離れしている。その他の茅、酒見姉妹、太介の四人は、特にこの中では一番年上の酒見姉妹が幼く見える外見であるため、ちょっとみでは同年配の友人、と見えないこともない。
 しかし……この六人が一緒にいると……。
『奇妙な組み合わせ……に、見えだろうな……』
 と、荒野は思う。
 どう見ても、東雲は、他の連中の引率者とか保護者に見える風体ではない。
 休日の朝、しかも雪が積もっている、ということで、路上に出ている人がほどんどいないのが、まだしもの救いだ。
 酒見姉妹の一人が、ノートパソコンを広げて、茅の前に掲げている。茅を、そのパソコンを、当然のように操作し続ける。もう一人の酒見が、ノートパソコンを抱える酒見の前にいて、先導している……などという所を大勢の住民に目撃されたら、一体、どう思われるのだろう?
 という危惧もあるのだが……。
『まあ……なんとか、なるだろう……』
 そう割り切ってしまう気持ちも、今の荒野にはあった。
 今まであれだけいろいろな経験をしてきて、それでも何とかなっている。それに、ここに移ってきた時と違って、今の荒野たちは、孤立していない……というに認識が、いつの間にか荒野の内部に巣くっている。
 それに、今、大勢の……茅の話しによれば、数百名単位の……ボランティア登録者に対して速やかな指示を送れる者は、茅一人しかいない。
 どうせ、当座の目的地である商店街までは、歩いてもいくらもない。

 そんなことを考えながら歩いていると、楓が、見覚えのあるトラックの横に立って、運転席の者と話し合っている所に行きあった。
 かなり距離があったが、荷台にいる人たちが荒野たちの姿に気づいて手を振ってきた。
『……あっ……あいつら……この間の工場で、宴会した時のやつらだ……』
 荒野は、荷台にいた面々の顔をみて、思い出す。一人一人詳細に紹介されたわけではないが、荒野は人の顔と名前に関する記憶力は、それなりに優れている。というより、一度見た顔は忘れないように、脳裏に刻み込むのが習いになっている。
 マンションの時の話しでは、楓は、テンやガクと一緒に徳川の工場へ行きかけて、そこで商店街方面に進路を変えた、ということだったが……。
『……早々に準備を終えて出てきた徳川たちと、ああしてでくわした、と……』
 荒野は、周辺の地図を脳裏に思い浮かべながら、そんな風に想像する。
 荒野たちが追いつく前に、楓一人を残してトラックが出発した。
 普段であればそれなりに急ぐのだが、この積雪で、おまけに茅は歩きながらパソコンを使っている。それに、急いで合流するほど緊急の用件、というわけでもないしな……。
 などと荒野が思っていると、茅が、
「……楓!」
 と声をかけながら、楓に走り寄っていった。
 酒見姉妹が、そんな茅を慌てて追いかけていく。
 楓との距離は、まだ百メートル以上ある。茅の後を追う酒見姉妹も慌てていたが……。
『……茅……。
 そんなに、楓と仲が良かったかな……』
 楓とは、今朝も顔を合わせたばかりだった。
 雪の中を駆けだしていくほど、茅が楓のことを気にかけているのが、荒野には少し意外だった。
『いや……あの年頃の女の子の、仲間意識と考えれば……』
 別に異常はないのか、と、荒野は思う。
 荒野のクラスメートの女子が、集団でトイレに向かう風習については、荒野も常々不審に思っていた。
 荒野が納得できまいが、「そういうもんだ」と飲み込んでおく方が、いい事柄なのかもしれない……と、荒野は思う。
 前方で、なにやら談笑している茅と楓を遠目にみつつ、荒野はゆっくりとそちらの方に近寄っていった。

「……白いのが、お知らせメールに返信がない人か、不参加の表明をした人。
 黄色いのが、参加希望の返信をした人……」
 荒野が追いついた時、ノートパソコンを抱えていない方の酒見姉妹が、楓に説明している所だった。
「……今回の活動に参加する意思あり、と返信をしてきた黄色い人は、今後、どこにいってなにをやったらいいのか分かっていない状態だから、こちらから詳しい指示を送ってあげなくてはならない。
 もしくは、条件を設定して、自動で返信するするようにしておかなければならないの……」
 茅が、その説明に詳しい解説を付け加える。
「つまり……登録者の現在地を表示する、インターフェースなんですね、これ……」
 パソコンのディスプレイを指さしながら、楓は茅に尋ねた。
「残念ながら……まだ、その所在地は、さほど正確ではないけど……コンセプト的には、それでいいの」
 と茅は頷き、マンションでした「登録してある携帯の機種によっては現在地が判断できなので、所在地不明の場合は、現住所が表示されている」という説明を楓に繰り返す。
 楓は、
「……それでも、ここまで作ってくださると、いざという時、かなり便利ですよ……」
 と、真剣な顔で頷く。
「既存のインフラを利用してここまでのシステムを構築できれば……この先、かなりやりやすくなる……と、思います……」
「……今回は、ちょうどいい稼働実験だになると思うの……」
 茅も、真剣な表情で頷いた。
 荒野は、楓の言葉の中にある「いざという時」、「この先」という言葉が……言葉に込められているニュアンスが、ひどく気にかかった。
『この場で……非常時、とかいわないだけ、ましか……』
 荒野も茅も、楓も……いつか、この町が、あの「悪餓鬼ども」に、無差別に攻撃される……という事態を危惧し、それに対抗するための準備を進めている。
 楓の言葉に込められたニュアンスを、荒野はそう受け止めた。




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