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彼女はくノ一! 第五話(265)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(265)

 その、少し前。
「……どうも、ありがどうなの」
「「「……ありがとうございまぁーすっ!!」」」
 茅と酒見姉妹、徳川、敷島、その他もろもろの一族の者は、総出で備品倉庫の鍵を開けてくれた小学校の校務員さんに頭を下げていた。
「いやぁ……別に、いいけど……」
 まだ若そうな校務員さんは、照れくさそうに頭をかきながら答える。
「どうで、今日も校庭の開放日だったし……学校の周辺の歩道だけでも、雪、のけてくれたの、助かるし……」
 校務員さんは、「……ちゃんと返してくれるなら、備品も好きに使っていいよ……」と茅たちにいった。
 校門から玄関まで、あっという間に雪をかきわけて道を作ってくれた人たちに、悪意があるとも思えない。
「その辺の管理は、徹底するつもりなの」
 茅はそういって、ACアダプターを取り出す。
「ついでに……といっては、なんですが……電気も、お借りしたいの」
 と、酒見姉妹が抱えるノートパソコンを指さす。
「あっ……それも、問題ないけど……。
 パソコン使うのなら、校内に入った方が……」
「ここでいいの」
 一族の者たちが倉庫の奥から束にしたスコップを抱えてくると、茅はざっと見ただけで総数を確認、校務員さんに「角スコップ三十五本、角丸スコップ二十八本、確かにお借りするの」と、口頭で伝え、その後、倉庫のシャッター脇にあったコンセントにACアダプタを差し込み、酒見姉妹から受け取ったノートパソコンにジャックを接続して、隅に丸めてあった体操マットの上に腰掛け、自分の膝の上にノートパソコンを置いて広げる。
「みなが、外で作業している時に、自分一人だけ、快適な場所にいるわけにはいかないの。
 ここから持ち出した備品は、持ち出した者が責任を持ってここに返すこと……」
 そういって、茅は、スコップを二本とか三本づつに分けて一族の者に持たせ、それが行き渡ったところで、一人つづにこれから行くべき番地を告げ、「そのまま、現地で雪かきを手伝って」と指示した。
 持ち出した備品をたらい回しにするよりは、そのまま使わせて戻させた方が確実だ、と、茅は判断する。茅は、荒野が持っていたリストの内容を丸暗記しているし、従って、これまでに会ったことがある一族の者の顔と名前も、全て把握している。また、今後の長期的なことも考慮すると、一族同士で固まって作業するよりも、「同じボランティア要員として」一族の者と一般人を混在して作業させ、接触する機会を作っていた方がよかった。
「到着した時と、そこでの作業が終わった時に、メールで連絡を入れるの」
 スコップを抱えて出て行く一族たちの背中に、茅はそう声をかける。
「徳川と敷島には、これから集まってくる人を何人か連れて行って、通学路を、鉄板で除雪……する作業を、指揮して貰うの」
 茅は、ここまで移動してくる時間を利用して、一族の者を十数名、メールでこの小学校に招集している。
 事実、出て行った者と入れ違えに、続々と一族の者たちが集結してきた。
 徳川と敷島は、茅と一緒にノートパソコンに表示させた地図を見ながら軽く打ち合わせをした後、四、五名づつの人員を引き連れて校門から出て行く。
 実際に鉄板を押すものと、前後を確認して通行人とかとかち合わないように監督する者を合わせると、それくらいの人数になる。
 それでも、残った若干名は、先ほどと同じく、二、三本のスコップを持たせて送り出した。
 いよいよ、この場に自分たちしかいなくなると、居心地の悪さを感じはじめたのか、酒見姉妹が、
「……あの……」
「……わたしたちは……」
 とか、茅にいいだす。
「校内の、細かい片付けとか……。
 それと、もう少ししたら、シルバーガールズとその撮影隊が来ると思うの……」
 茅は、ノートパソコンから顔も上げずに、そういう。
「……そっちの人たちが集まってきたら、合流して、手伝って……」
 茅は茅で、次々と集まってくる報告や要請を処理するのに忙しかった。

 成り行き上、そうしたてきぱきとした割り振り作業を目撃していた校務員さんは、完全にあっけにとられている。倉庫のシャッターを開けてからここまで、十分ほどしか経っていない。
『……なんなんだ……この子……この人たち、は……』
 と、そう思いながらも、「じゃあ、おれ、向こうに戻っているから……終わったら、声をかけて……」と茅にいって、その場から去っていった。

 スコップを抱えて先に出ていった人たちが、近所の人たちと合流して作業を開始した、という報告が続々と入りはじめる。それ自体に返信する必要はないのだが、各所の進行状況を予測し、その後の人員の割り振りを考えるのには、かなり頭を使う。
 流石にこの時間になると、ぼちぼち、眼を醒ましたボランティア登録者から「作業可能」という連絡も来はじめていて、その人たちの住所や所在地から行き先を割り振らねばならない。これなどは、いつそういった連絡が入るのか予想できず、また、参加可能な人数も、あらかじめ予測できるものではない。
 また、先行に作業に入っていたグループが、「他の場所も手伝いたい」と行ってきた時にも、適切な移動先を選択する必要がある。
 その場その場での判断力が必要な作業であり、茅にしてみても、それなりの集中を必要とした。
 人数や装備より、各所の進行状況を予測し、不足がある場所にフォローを入れ、全体の効率をよくしていく……という、町内を盤面にしたゲームに、茅はすぐに没頭していく。

 そうした中、テンとガクが校庭に到着する。
「ボクたち……とりあえず、何をすればいいの?」
 と問われ、酒見姉妹は、倉庫の方で管制作業に没頭している茅の方にちらりと視線を走らせる。
 今の茅は、声をかけるのも、憚られる様子だ……。
「……もうすぐ、撮影の人たちが来るそうですから……」
「……それまで、待機していてください……」
 結局、姉妹は交互にそういった。
「……あっ。そうそう。
 途中で有働さんたち、放送部の人たち、見かけた……」
「なんだ……。
 そういう用事なら、一緒にくればよかったな……」
 幸い、テンとガクは、簡単に納得してくれる。
 二人は「この学校に集合」という指示は受けていたが、具体的に何をする、ということは伝えられていなかった。




[つづき]
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