2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(200)

第六章 「血と技」(200)

「……って、いうことで、求む説明。
 ぷりーず……」
 裏口から電気屋さんに駆け込んだ玉木は、開口一番、そう尋ねた。
「いったい、何がどうなって、いきなりあんなことになったのか……」
「それは……」
 問われた茅は、目をぱちくりさせる。
「ミスターR、竜齋に直接聞いて欲しいの。
 竜齋は、今……」
「コンテスト出場者の控え室で、被害者一同から吊し上げを食らっている最中です。
 お嬢たちはその後で鉄拳制裁を考慮中、とのことですが、まずは堅気の衆へのけじめを優先した形ですな。
 男子禁制とかで、わたしは、追い出されましたが……」
 しれっとした顔で答えたのは、茅の背後に控えていた東雲目白であった。
「……だ、そうなの」
 茅の「説明」は、以上だった。
「……納得いかなぁーいっ!」
 玉木は天井に顔を向け、絶叫する。
 楓が「まぁ、まぁ」と玉木をなだめはじめる。
「……第一っ!」
 玉木が、楓に人差し指を突きつけた。
「いつもなら、くノ一ちゃんとかカッコいいこーや君、こういう時、真っ先に動くのに、今回だけは他人任せだったっ!
 何でっ?」
「……ええっとぉ……」
 玉木に単刀直入に訊かれ、楓は露骨に視線を宙に泳がせる。
「茅様の傍に、誰もいなくなっちゃったしぃ……茅様が、最後まで出ないで控えていろっていうしぃ……」
 それらの理由も、もちろん一因ではあったが……それ以上に、以前、竜齋にあった時、初対面でいきなり胸を揉まれまくった一件で、楓は竜齋に対して苦手意識を持つようになっていた。
 茅がそういっているから……という口実ができて、ほっと安堵している一面もあって、楓としては玉木からついつい目を逸らしてしまう。
「それじゃあ……カッコいいこーや君は?」
「……手作りチョコの講習中だったの……」
 今度は、茅が玉木から露骨に目を逸らす。
「ちゃ……ちゃんと、連絡は……メールで、いれておいたの。
 いつ見るか、分からなかったけど……あれだけの人数いれば、竜齋を押さえられると思ったし……荒野に余計な心配をかけたくなかったし……」
 玉木は、珍しくしどろもどろになっている茅の顔を、じっと見つめた。
 普段、感情を露わにすることのない茅が……なんだか、分かりやすく動揺して見える……。
 怪しい……と、思った玉木は、さらに突っ込んだ。
「なんで……メール?
 電話なら、ほぼ確実に出るでしょうに……」
「ま、マナーモードにしているかも知れないし……携帯を上着のポケットに入れたまま、上着を脱いでいるかも知れないの。
 電話でも、確実ではないの……」
「……つまり……茅ちゃんは……。
 この不祥事を、どうにかカタがつくまで、荒野に知らせたくはなかった、と……」
 玉木がそう断定すると、茅の顔がてきめんに引き攣った。
 ……わかりやすくて、面白い……と、玉木が思ったその時、茅のポケットが「ぶーん」という震動音を発した。
「……荒野」
 ポケットの中から携帯をとりだし、液晶を確認した茅が呟く。
「はいっ!
 だ、大丈夫なのっ! 本当にっ! 片付いたのっ! そうっ! シルバーガールズの活躍でっ! ノリが帰ってきたのっ!」
 茅は、電話に向かって、無意味に元気の良い語調で話しはじめる。
「……うんっ! そうっ! 詳しいことは、込み入っているから、また後でっ!
 そうっ! 玉木もここにいるし、その他の関係者も集合させるのっ!」
 背筋を伸ばしてしばらくそんなハイテンションな調子で話してから、通話を切る。
 そして、いきなりがっくりと肩を落とし、
「荒野……これから、こちらに寄るの……。
 玉木……みんなを集められる場所……」
「……町内会の集会室、使えるか確認してみる……」
 玉木は、いきなり表情豊かになった茅の様子を興味深く観察しながら、茅に答えた。
「……楓と有働、それに東雲……。
 今回の件に関わった、一般人以外の主だった人たちに声をかけてきて……もうすぐ、荒野が来るからって……」
 荒野と電話していた時の元気良さとは違い、一気にしんなりとした様子で、がっくりとうなだれながら茅が告げる。
 有働が放送部員、楓と東雲が一族関係……という分担は納得がいくのだが……。
「……あの……茅様……だ、大丈夫ですか?」
 茅のしょげかえった様子を気にかけ、楓は、そう声をかけずにはいられなかった。
「……大丈夫なの……」
 俯き加減のまま、茅が答える。
「荒野がいない時も、何とかできるようにならないといけないの……」

「……だいたいの経緯は、理解した……」
 町内会の集会室に主だった関係者が集合し、時にビデオを再生しながら交代交代に事情を説明するのに、小一時間ほどかかった。
「竜齋……何か、いい遺すことはあるか?」
 一通りの説明を聞いた荒野が、喉の底から押し出すような声で、鎖でぐるぐる巻きになった竜齋に尋ねる。
「いい……遺すってっ!」
 竜齋が、いかにも芝居ががった哀れっぽい声をだす。
「わし……もう十分にお仕置き受けたのよ……。
 み、みんなでわしのことあんなにいじめて、さ……。
 わし、もう女性恐怖症になっちゃう……」
 その場にいた全員が、「ない、ない! それだけは絶対にない!」と突っ込みをいれる。
「それじゃあ……なんでこんな騒ぎ、起こしたっ! 竜齋っ!」
 荒野の声が、さらに厳しさを増す。
「……なぁに……」
 竜齋が、にたりと不適な笑みを浮かべる。
「この手の騒ぎに免疫をつけておいた方が……お前らもこの先、やりやすいじゃろうて……」




[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking  HONなび

エロセブン
JPムービーズ
NVネットワーク

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ