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彼女はくノ一! 第五話(284)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(284)
「……こーちゃーん!
 こっちにいるー?」
 表の方から香也を呼ぶ真理の声がしたのは、昼食が済んで奇妙な男女二人連れが出ていってからしばらく経った昼下がりのことだった。
 朝からバタバタしていて、ゆっくりと絵に集中できる状況ではなかったが、何しろ数日ぶりに聞く真理の声だったから、香也はすぐに立ち上がってプレハブを出ていった。
「……こーちゃん。
 ちょっと、お洗濯をする物、中に入れるの手伝って……」
 真理はワゴン車のエンジンも切らず、家の前に停車したまま、車の中からトランクとか紙袋を出している。どうやら、車を車庫に入れることもなく、そのまますぐに出るつもりらしい。
 香也は、素直に真理のいうとおり、車の中から出した荷物を玄関の中に運び込んだ。
「……途中までノリちゃんも一緒だったんだけどね、急用が出来たとかで途中で降ろして来ちゃった。
 こーちゃん、今度、ノリちゃんと再会したら、驚くわよぉ……」
 真理はいたずらっぽく微笑みながら洗濯物を香也に押しつけ、
「……それじゃあ、あと一週間くらいしたら、本格的に帰ってくるから……」
 といい残して、再びワゴン車に乗り込み、姿を消した。
 僅か五分にも満たない、あっさりとした再会だった。

 荒野が茅からのメールに気付いたのは、手作りチョコ講習が終わりって携帯を確認した時のことだった。
 着信していたメールを開いて文面を確認し、荒野は軽く眉をひそめた。そこには、「どうみても野呂竜斎にしか見えない覆面の男が、商店街で女性たちに悪戯をしかけてきた。関係者が総出でその男の身柄を確保しようとしている」といった文面が簡潔にしるされているだけで、続報はない。
 今まで、荒野に連絡を取ろうとしてこなかった所をみると、「それなりになんとかなってはいる」のだろうが……「続報がない」という事実が荒野を不安にさせた。
 荒野は後かたづけを開始した部員たちに一言声をかけてから、茅の携帯に電話をかけ、詳しい情報を求める。
 茅はすぐに電話をとったが、何故が動揺してうわずった声で、「もう、竜斎は確保した」、「真理に同行していたノリが帰還して、竜斎の確保に尽力した」などの事実を荒野に告げる。
 荒野は、「場所が場所だし、かなり派手なことになったのではないか」と思ったが、それを確認する前に、茅の方から「関係者を集めておくから、後で合流してからしっかりと説明する」といった意味のことをいわれたので、いくつか感じていた疑問を保留にして、「こっちの片づけが終わってから、そちらに寄る」と告げて通話を切った。
 通話を切ると、料理研の部員たちが荒野の顔を心配そうな顔をしてみつめていた。
 荒野は、
「……問題があったけど、なんとか解決したそうです。
 今からおれがいってもやれることはないんで、ここの片づけを終わらせてから、ゆっくりいきますよ……」
 と告げた。

「……って、いうことで、求む説明。
 ぷりーず……」
 裏口から電気屋さんに駆け込んだ玉木に問いつめられたことと、前後して荒野から連絡が入ったこともあって、茅は楓と東雲、有働に対し、主要な関係者を召集するように指示した。
 今回の件に関しては、関係した人数が多い割りに、全体像を把握している人間が極端に少ない、という特徴がある。第一、原因兼元凶である竜斎の身柄を確保したのはいいが、その竜斎からまだ詳しい情報を引き出していない。
 だから、茅にいわれるまでもなく、関係者を一カ所に集め、情報を交換しあうことには誰も反対しなかった。

 玉木が手配した町内会の集会室に、主要な関係者が集合したのは、それから十五分ほど経過してからであった。
 参加者を一通り記述すると、事件を起こした張本人であるミスターR、こと、竜斎、楓、孫子、テン、ガク、ノリのシルバーガールズ三人組、徳川と敷島、放送部員を代表して玉木と有働、小埜澪と東雲目白、野呂静流、それに、事態の収集に協力した野呂系の術者と二宮系の術者から、それぞれ代表が五人ずつ参加していた。
 この面子に、さらに様子を見に来た飯島舞花、栗田精一、柏あんな、堺雅史の毎度おなじみのバカップル二組、さらにさらに、荒野と茅が加わる。
 なかなかの多人数であり、ともすると収集がつかなくなりそうな気配もあったが、司会役を務めた茅がうまい具合にそれぞれの発言者を牽制し、徳川や有働などが中心になって膨大な映像素材(実際にミスターRこと竜斎が暴れていた時間は、ごく短かいものだったが、複数のカメラでその姿を追っていた為、映写された素材の量はどうしても多くなる)を手際よく披露したりして、関係者各位から効率よく話しを引き出していった。
 それでも、関係した人数が多いため、重複した証言が多く、前後の辻褄を確認しながら聞いていったりしたので、その分、どうしても時間がかかり、荒野がだいたいの経緯を聞き終わるのに、小一時間ほどの時間が必要だった。
 一通りの話しを聞き終えた後、その場にはいなかった荒野以外の人たちも、事件の全体像を掴めたような気がした。
「それじゃあ……なんでこんな騒ぎ、起こしたっ! 竜齋っ!」
 荒野が厳しい口調で、竜斎にそう問うと、その場に居合わせたほとんどの者が、頷く。
 大方の者にとって、今、この時点で、この土地で、竜斎が暴れなければならない理由……というのが、想像できない。
 前の「首脳会談」のおりにも、竜斎は荒野の「現地での融和策」を咎めるといったことはなく、むしろ助言らしきコメントをくれた筈であり……少なくとも、一般人社会にとけ込もうとする一族に対して、悪意や害意は持っていた様子ではなかった。
 短刀直入な荒野の問いに、鎖で拘束された竜斎は、不敵に見える笑みを浮かべてこう答えた。
「……なぁに……。
 この手の騒ぎに免疫をつけておいた方が……お前らもこの先、やりやすいじゃろうて……」




[つづき]
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