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第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(286)
「……問題が、山積みだよ……」
一通り、「現在の問題点」を挙げ終えると、荒野はそういって、小さくため息をつく。
すると、今度は徳川が、
「……そういう問題も、一つ一つ解決していくしかないのだ。
第一、それらの問題のうちいくつかは、もう解決に向け動き出している……」
といいだし、それがきっかけとなって、孫子と一緒になって、いくつかの「事業展開」について事細かに説明をしはじめる。
徳川と荒野に出資させて、孫子が現在、立ち上げようとしている人材派遣の会社は、まだ本格的に開業もしていないので、どれほどの利益を生むのかは、この段階では明言できない。
が、徳川が所有する特許やパテントなどの知財がもたらす利潤を、特に海外で、より効率よく回収するマネジメント事業は、すでに軌道に乗りはじめており、徳川の会社の収益は、目に見えて向上している、という。
才賀系列の企業と、優秀な法務の専門家にコネを持つ孫子は、テンやガクが制作したソフトも、積極的に売り込んでいる。孫子の伝によると、そちらも「手応え良好」ということで、うまく周りはじめれば、かなりの収益をあげそうだ、という。
徳川が行っているのは、まず孫子のライフルや投擲武器類、それにシルバーガールズの装備類などの製造があげられる。が、当然のことながら、それらからは、まるで利益をあげることが出来ない。資金的なことをいうなら、完全に持ち出しだった。
その他に、例の監視カメラの製造、なども行っているが、これはまだまだ試作品の段階であり、無料でこの近辺に設置させて貰って、これから性能テストを行おうという段階だから、現実に利潤を生みはじめるのは、そうとう先になるだろう。また、この過程で、テンやガクに、「ソフトとハード、両面における、製造開発業の初歩」を教え込んでいる……という一面もある。
徳川は他に、工場を開放することで、「シルバーガールズ」の撮影に協力する、なども行っており、このことにより、ここ数日、徳川の工場には、放送部や校外の撮影スタッフ、それに、暇のある一族の者が気軽に立ち寄ってちょこちょこと撮影を手伝う、一種の「溜まり場」になってしまっている。
そのおかげで、妙に撮影機材の扱いに慣れた一族の者が多くなってきたり、端役のアクション・キャストとして「シルバーガールズ」に出演する一族の者が続出したりするのだが、それらの関連についてはいずれ詳細に説明する場面がくると思うのでここでは割愛する。
話題が「シルバーガールズ」のことに及ぶと、荒野は、
「さっきの映像、放映したんだよな?」
と、玉木に確認した。
「反応……どうだった?」
「何を心配しているのか、想像できるけど……」
玉木は、そうした荒野の反応を予測していたので、冷静に返答することが出来た。
「……全然、心配する必要はないと思う。
だって、さ……。
予備知識なしにいきなりこれみて、普通……本当のことだと思う人、いると思う?」
そういって、玉木は、持ち込んだディスプレイを指さす。
そこには、「鉄板を振りかぶって、ミスターRをふっ飛ばすシルバーガールズ」の映像が流れている。
「……確かに……」
荒野は、表情を消して答えた。
「常識的に考えたら……ありえない絵、だよな……」
「みんな……あまり出来の良くない、合成かCGだと思っている……と、思うよ」
玉木は、頷く。
「一部……近くのビルに登って、わざわざアーケードの上を覗き込んでいた人もいたようだけど、大多数の人は、アーケードの上なんか、見えないから……」
ディスプレイ越しの映像と、玉木のアナウンスだけで、この件をみていた人々は……十中八、九、「仕込みだ」と思うことだろう。
玉木は、この映像をリアルタイムで放映していた時、「これが事実である」と断言することは、巧妙に避けていた。
「商店街に大勢つめかいけていた人々の間にパニックを起こしたくはなかった」というのが、主たる理由だったが……。
「……どのみち、学校の関係者には、カッコいいこーや君たちのことはバラしているわけでさ。
だから、生徒の家族とか口コミとかで、地元ではそれなりに伝わりつつあるわけですよ、君たちのことは……。
地元的には、そうした断片的な情報にふれていた人たちが、その情報について確信を得ることになった……ということになると思うな、今回の件は……」
玉木は、そう続ける。
イベントにつられて遠隔地からやってきた人たちにとっては、所詮、一過性のネタであろう。
「……噂が広まっていって、それを裏付けるための事実が次々と人目に晒されていく……そういう過程だ、ということか……」
荒野は、呟く。
「……いずれは……とは、思っていたけど……。
いつも、想定した以上に、早いペースで事態が進行していくんだよな……」
後半は、ほとんど愚痴だった。
「……いいじゃん、別に……」
いきなりそう口を挟んできたのは、テンとともに久方ぶりに再会したノリを囲んで仲間内のおしゃべりに興じていた、ガクだった。
「……過ぎたことをぐちぐちいっても、取り返しがつくわけでもなし……。
それよりも、さ。
シルバーガールズの今後のこと、なんだけど……みんなで前々から話していたんだけど、有りものの素材をうまく繋げて筋の通ったものにする、シリーズ構成とか編集作業をやれる人、今、いないんだよね。
ノリも戻ったし、これ以上撮影を続けるにしても、そういうのがしっかりとしていないと、効率悪いから……できれば、茅さんにやって欲しいんだけど……」
「……茅が?」
荒野とのとやりとり以来、目に見えてしょぼーんとしていた茅が、不意に話しを振られて、顔をあげる。
「……シルバーガールズの?」
「うん。制作総指揮」
ガクが、頷いた。
「全体像がはっきりさせないまま、これ以上進めるのも、本当、効率悪いし……。
シナリオができたら、これから足りないシーンの撮影に入るれし……。
あと、合成とか編集に必要なツールも、三人掛かりでこれから作ろうって話しを、今、していて……」
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つづき]
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