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彼女はくノ一! 第五話(295)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(295)

「……ふぅ……」
 湯船に浸かった香也は、深々と息をついた。
 今日は、人の出入りが激しく、なんだか慌ただしい休日だった。絵の方は進行した方だとは思うが、香也の心情的には、落ち着きがない一日だった。
『……絵といえば、ノリちゃん……』
 随分、いいたいことをいってしまったが……自分に、他人を教えるような資格があるのかな……とか、香也は思いはじめている。自分に、他人に何かを教える資格なんかあるのかな……と。
「……んー……」
 低くうめいて、香也は手足を伸ばして湯船にずるずる浸かり、鼻の下までお湯に浸かった。
 半ば、お湯の中で寝そべっている形だが、風呂が広いため、こういうこともできるのだった。
 そのままゆっくりと体を温めていると、不意に脱衣所に誰かが入ってくる気配があって、香也はギクリとする。
 今までの経験から、入浴時の人の気配に対して、過剰に反応するようになっていた香也だった。
 しかし、ビクビクしながら香也が様子をうかがっていると、脱衣所に入ってきた気配はどうやら二人で、楓と孫子らしい……と、察しがつく。幸い、二人とも浴室に乱入してくるつもりではないらしく、すぐ洗濯機が音を立てはじめた。
 どうやら、真理が持ち込んだ汚れ物を片づけに来ただけらしい……と気づいて、香也は、深く安堵する。
『……そう、だよな。
 いきなり乱入してくるなんて、そうそう……』
 あるわけがないか……と、香也が思いかけたその時……。
「……えっ! あっ! あっ!
 そんなっ!」
「ちょっ……な、何っ!
 あなたたちっ! その格好っ!」
 楓と孫子の狼狽しまくった声が聞こえる。
 楓はともかく、いつも冷静な孫子がうろたえる、というのは、滅多にあることではない。
 何事か?
 と、怪訝に思いつつ、香也は腰を浮かしかけた。
 ごく短い間、脱衣所でもみ合うような気配がして、すぐにガラリと戸が開く。
「……お風呂イベント、発生っ!」
 といって、一糸もまとわないノリが、成長した白い裸体を隠すこともなく、浴室に入ってきた。
 その後ろでは、やはり全裸のテンとガクが、それぞれ楓と孫子と組み合っている。
 三人組は、どうやら、服を脱いだ状態でここまで来て、楓と孫子という関門を、強行突破したらしい……などいうことを考える間もあらばこそ、香也は、突進してきたノリに抱きつかれている。
 香也は、自分の胸に飛び込んできたノリを、反射的に抱き止めた。
「……えっ……あっ、あっ……」
 予想外の事態に、香也は、パクパクと口を開けたり閉めたりするが、軽くパニクっているため、この場にふさわしい言葉を思いつかない。
「……えいしょっ!」
「離さないと、おねーちゃんたちもこのままお風呂にいれちゃうよー」
 みると、楓や孫子と組み合っていたテンとガクの二人は、それぞれ組み合っていた相手の体を軽々と持ち上げて、浴室に入ってきていた。
 テンにせよ、ガクにせよ、まともに組み付いたら容易に持ち上げてしまえるほどには、力が有り余っている。
 楓と孫子も、準備や心構えさえしていれば、ここまでいいようにはされていないのだろうが……不意をつかれたことと、三人がいきなり全裸で現れたことで、すっかり動転してしまったらしい。
「……いい加減に、おろしなさいっ!」
 孫子が、少し怒った声を出す。
「ボクたち、おにーちゃんと一緒にお風呂に入りたいだけだよ?」
 ガクは、自分で高々と掲げた孫子の顔を見上げながら、いった。
「おねーちゃんたちみたいに、例えば今朝の孫子おねーちゃんみたいにえっちな……」
「……わっー!!!」
 孫子は、ガクに最後までいわせず、わんわんと響く大声をあげて、ガクの言葉をかき消した。
「わかりました、わかりましたっ!」
 孫子は複雑な表情をしながら、早口で妥協案をまくし立てた。
「もう、邪魔はしませんから……。
 そ、そのかわり、わたくしも一緒に入浴しますっ。
 そのっ! ……か、監督するためにっ!
 そうっ!
 いかがわしい行為がないよう、監視するためにっ!」
「……わかった……。
 本当に、ボクたちの邪魔しないでね……」 
 ガクは軽く念を押しただけで、あっさりと孫子の体を降ろした。孫子は、「……まったく、何でこんなことを……」とかなんとか、ぶつくさいいながら、脱衣所に向かう。
「……えっ? え? え?」
 一方、テンに抱えられていた楓は、何でこういう展開になるのかまるで理解できず、眼を白黒させるばかりだった。
「どうする?
 楓おねーちゃん……」
 そんな楓を両腕で抱え上げながらテンが確認した。
「……ええ、っとぉ……」
 楓は、周囲を見渡す。
 荒々しく脱衣所の戸を後ろ手に閉めた孫子。
 悠々と湯船に向かう全裸のガク。
 全裸のまま、ノリと抱き合って表情を無くしている香也。
 特に最後の、一体となって固まっている二人を眼にした時、楓の表情がこわばった。
「……わたしも……間違えがないように、監督しますぅ……」
 楓が、低い声でそういう。

「……なんだ、何が起こった?」
 脱衣所の方で、羽生の声がした。
「今、三人が裸で飛び込んできて、香也様と一緒にお風呂に入るといってきかないので、わたくしも監督するために一緒に入ることになりました……」
 テンに降ろされた楓は、脱衣所の戸をガラリと開く。
「わたしも、ご一緒するのです」
 低い声で楓がそういうと、羽生は半歩後ずさった。
 孫子はすでに服を脱いでいて、下着姿になっている。
「……ああっ。
 ま、まあ……そうだよ、な。
 お風呂に入るだけ、だもんな……」
 羽生は楓と孫子の顔を見回して、自分自身を納得させるような口調でそういった。
「……混浴……というよりは、家族風呂みたいなもんか……」
 その時、浴室から、
「……ちょっと、駄目。
 そんなにひっつかれたら……ああっ。
 そんなところ触らないでっ!」
 という、香也の弱々しい声が響く。
 楓と孫子と羽生は、顔を見合わせて頷きあった。
「……わたしも、一緒に入って様子見る……」
 結局、羽生もその場で服を脱ぎはじめる。




[つづき]
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