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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(213)

第六章 「血と技」(213)

 荒野と茅は、いつものように狭い浴槽の中に二人で入っている。そうしていると、ほとんど身動きが取れないのだが、二人は特に気にしたことはいない。
 荒野は茅の体を自分の上に乗せながら、ぼんやりと天井を眺めていた。
「……荒野。
 何を考えているの?」
 茅が、囁く。
 さっきよりは、多少落ち着いたようだ。
「おれたちの、関係のこと」
 荒野は、答える。
「茅は……おれと二人きりの時だけ、自分の弱みを……本音をいってくれるよね?
 それって、いいことなのかな?」
 荒野の上に寝そべっていた茅は、半身を起こしてひねり、荒野の顔を直接のぞきこむ。
「茅は……荒野と一緒にいると、どんどん、弱くなっていくの……」
 茅は、何事か考えこみながら、真顔で言葉を紡ぐ。
「茅を弱くした責任は、荒野にあるの」
「茅が今のようになったのは……おれのせいだって?」
 荒野が確認すると、茅は頷く。
「……まいったなぁ……。
 おれ、まったく別の……逆のことを、考えてたよ……。
 茅がいなければ、今のおれは、ない。
 ここでの生活も、仲間たちとの関係も、ない……。
 茅は……ただおれのそばにいるだけで、今のおれの大部分を作ったんだ……」
 今、自分が必死になって守ろうとしているものは……なんなんだろうか?
 先ほどの茅との会話の後で、そう、荒野は考えた。
「……いろいろ、考えたんだけど、さ……。
 おれが守りたいのは、茅やおれも含めた、今の環境全体なんだ……。
 だから……いくら茅の頼みでも、できることとできないことがある。
 おれは……最後の最後まで、抵抗すると思うな。
 たとえこの先、最悪の事態が待ち受けているにしても……本当にどうしようもならなくまで、みっともなく、あがき続けると思う……」
 茅が荒野の言葉に応じるまで、しばらく間が空いた。
「……荒野なら、そういうんじゃないかと思ったの……」
 茅は、ひっそりと、笑う。
「さっきいったのは、茅のエゴ。
 ギリギリまで……場合によっては、ギリギリを越えても耐え続け……その結果、かえってリスクを増やそうとするのは、荒野のエゴ……」
 ……二人とも、わがままなの……と、茅はいった。
「……エゴ、か……」
 荒野は、虚を突かれた顔をした。
「そういう考え方をしたことは、なかったけど……。
 そういわれてみると……」
「エゴであり、わがままなの」
 茅は、荒野に向かい、頷いて見せた。
「茅が、いざという時、荒野に茅を止めてと頼むのも、荒野が、茅を含めて一切合切に責任を持とうとするのも……。
 一族が、利用価値を重視するあまり、後顧の憂いを絶つために、茅たちを始末しなかったのも……。
 全部、エゴであり、わがままなの」
「……そっかぁ……」
 荒野は、にへら、と笑った。
「みんながみんな、私利私欲で動いているんなら、一人だけストイックに構えても、しょーがないなぁ……」
「そうなの」
 茅は、再度頷いた。
「茅には茅の思惑や欲望があり、荒野には荒野の、一族や一般人も、それぞれの背景に応じたものを、欲しているの。
 みんながみんな、勝手なことを願い、それを求めて動いているから、この世の中は複雑で猥雑で……そして、その分、可能性と矛盾に満ちているの……」
「……そっかぁ……」
 茅にそう断言されて、荒野はかなり気が楽になった。
「みんながみんな、わがままにしているのなら、しかたがないな……。
 だったら、おれは……自分のわがままで、全身全霊を賭けて、ぜーんぶ、一切合切を、守ってみせるよ……。
 甘い考えかも知れないし、そうそううまくは行かないかも知れないけど……それがおれのやりたいことなんだから、しかたがない」
「それがいいの」
 茅も、頷く。
「その方が、荒野らしいし……」
 そういって茅は立ち上がり、荒野の腕を上に引いた。
「立って。
 いつも髪を洗っているから、今日は、茅が荒野を洗うの」
「……おっ。
 ……おおっ……」
 荒野は何となく気圧されて、頷いてしまう。
 茅が腕を引くままに立ち上がると、茅は荒野の下半身をみて、「むぅ」と不満そうにうに短く唸った。
「……何?」
「荒野の、大きくなってないの……」
 茅は不機嫌そうな声をだした。
「そりゃ……今までいろいろやってきてるし……今更、一緒にお風呂に入る程度では……」
 荒野は苦笑いを浮かべながら、そう応じる。
「……いいの。
 これから頑張るから……」
 茅はそんなことをいいながら、立ち上がった荒野の腕を引いて、荒野を浴槽の外に出す。
 そして、
「……ここに、寝そべって……」
 と浴室に敷いてある、バスマットを指さした。
「……寝そべる?」
 イヤな予感がして、思わず、荒野は聞き返した。
「日本の伝統的な荒い方……だそうなの」
 ボディソープのボトルを取り上げながら、茅は、しごく真面目な顔をして頷いてみせた。
「……ニッポンの、でんとー……」
 荒野のこめかみに冷や汗を浮かべて、茅の言葉を反芻する。
「それって……また、先生の入れ知恵か?」
「違うの」
 茅は自分の体にボディソープを大量に垂らし、自分の手で軽く泡立てる。
「これで、直接肌を合わせて洗うと、ぬるぬるして普段とは違った感じになるって、柏あんながいってたの……」
 いうが早いが、茅はそのまま荒野に抱きついてきた。
「……ほら。
 ぬるぬる……」
 茅は荒野の体に抱きついて密着したまま、体を軽く上下に揺さぶってみせた。
「ちょっ……ちょっとっ!」
 珍しく、焦る荒野。
「荒野の……少し硬くなってきた……」
 冷静に事実を指摘する茅。
「荒野が寝そべってくれると、もっと自由に動けるようになるの」
「……か、茅は、もう少し友達を選んだ方がいいな……」
『……日本の学生は、進んでいる……いや、あいつらが例外なのか?』
 ……などと思いながら、荒野はそういって、結局、茅のいう通りに、床に敷いてあるバスマットの上に寝そべる。
 なんだか気恥ずかしかったので、うつ伏せに寝そべった。
 荒野の背中に、冷たい液体を垂らし、掌で軽く広げた後、その上に茅の軽い体が重なる。
 そして、ゆっくりと、茅が体を動かしはじめた。
 荒野の背中と茅の全面とが、生ぬるくなった洗剤を介してこすり合わされる。荒野は、茅の乳首と陰毛がぬめりながら背中で前後に滑るのを、感じた。確かに素肌同志で触れ合う感触とは違い、妙に淫媚な感触だ……と、荒野は思う。
「荒野……感じる?」
 うなじのすぐ後ろで、茅が荒野の内心を見透かしたようなことをいった。
「……ああ……」
 荒野は、ため息まじりに答える。
「思ったより、気持ちいい……」
 素直にそう答えたのは、茅相手に見栄や虚栄を張ったところでどうしようもないし、それ以前に荒野の分身が、早くも反応しはじめていたからだ。
「……本当……」
 茅は、荒野の下腹部に手を入れて、荒野の硬直を確認する。
「荒野の……もう、こんなになって……」
 そういう茅の声も、妙に湿っている。
「そういう茅だって、感じてるんじゃないの?」
 荒野は手を背中に伸ばして、茅のお尻をいったん鷲掴みにする。それから、素早く指を又の割れ目に入れ、茂みの中をまさぐる。
 指先が伝える感触によれば、茅の陰毛は、茅自身が分泌した体液によって、しっとりと濡れていた。




[つづき]
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