第六章 「血と技」(216)
茅は、脚を開いて繋がった箇所を無防備に晒している。荒野は茅と接続している部分に手を伸ばした。
荒野の指先が、荒野が入っている茅の部分の縁に触ると、茅がビクンと肩を震わせる。
「……今……茅のここに……おれのがすっかり入っているの……丸見え……」
荒野は、自分のモノを根本まですっかり押し包んでいる茅の部分の、自分と茅の境界線に沿って、ゆっくりと指を這わせる。
自分の根本を、円を描くように指を動かすわけだが……。
「茅からも、ここ、見える?」
何気なく、荒野は聞いた。
「おれたち……一つになっているよ、ここで……」
暗くしているわけではないし、荒野と向き合っている茅からは、間違いなく結合部が見える筈だ。
「見えるの」
茅は、かすれた声で答えた。
「そ……そんなところ、触ると……」
「おれ、今、全然動いてないけど……そっと触るだけでも……そんなに、感じるの?」
「か、感じるっていうか……荒野が、へんなことをいうから……んっ!
妙に、意識しちゃうの……」
何気なく動かしている荒野の指が敏感な部分に触れたのか、茅の体が、また震えた。
そういうものなのか……と、荒野は妙に感心した。
いずれ、女性ではない荒野には、自分の内部に異性の一部が入っている……という感覚は、うまく想像できない。
「……動いた方が、いい?」
荒野は遠慮がちに、茅に尋ねてみた。
「それより……ぎゅっとするの」
茅はそういいって、体を荒野の方に倒してくる。
そのまま茅は、荒野の首に腕を回し、体の前面を密着させた。
どちらからともなく、口唇を合わせて、口の中で舌を絡ませる。
抱き合って密着していた時間はさほど長いものではなく、すぐに、やはりどちらともなく、もぞもぞと体を動かしはじめた。
茅にしろ荒野にしろ、まだまだ雰囲気より、もっと具体的な刺激の方を欲しているらしい……と、荒野は思う。
荒野自身もそうだし、茅も、荒野と二人だけでいる時は、快楽を求めるのに貪欲な方であり……まだ若い荒野は、そんな茅を素直に歓迎していた。
あぐらをかいた荒野の上で、荒野に貫かれたままの茅の体が小刻みに、踊る。
大きくはないが、張りのある茅の乳房が荒野の胸板に押しつけられたまま、上下に弾む。
茅は荒野の首に腕を回したまま、体も口も離そうとはしない。性器が挿入されているだけでは飽きたらず、もっとこ荒野と一体になりたい、という願望をことさら強調するように、必死になって荒野に首にしがみつく。
顔や首にかかる茅の息は弾んでいて、熱い。
茅と結合している場所から落ちてきた液体が、荒野の股間を濡らす感触。
もみ合ううちになんとなく動いていた、という態の小刻みな動きが、気づかぬうちにかなり大きな振幅になっている。
荒野の腿の上で体を弾ませている茅。
その振幅が大きすぎて、荒野を迎え入れている部分が、ともすると荒野を置き去りにしそうになる。
動きが激しくなり、そのままの体位では不都合を感じたので、荒野は茅の体を押し倒し、その上に覆い被さって、大きく腰を使いはじめた。
茅は、大きく、抜けそうになるほど引き抜いた時と、逆に、押し込んで、一番奥まで突き入れ、荒野の先端が行き止まりの、阻まれて、それ以上進めない場所にまで行き着いた時に、声を上げて反応する。
いつものように、茅の呼吸と喜びの声、荒野の動きが一体となってリズムを形作る。
荒野が茅の反応に馴染んでいるように、茅の体も荒野のやり方に慣れてきている。
……二人して、か……と、荒野は思った。
茅の反応も、荒野の快楽も……肌を合わせる回数が増えるごとに、よくなってきている……という実感があった。
少なくとも、こうして睦みあっている最中は、茅との一体感を感じることができた。
茅の体を下に敷いて蠢いていると、茅の反応はよくなってきたが、流石に慣れてきたのか、前ほど急激に上り詰める、という感じでもなくなっていた。
いいところまでは「昇る」のだが、ギアがトップまでは入らない、という感じで……茅は、荒野の動きに合わせて声を上げながらも、それでもまだ余裕があるように見えた。
荒野は腰の動きを止めずに、茅の腿を、片方だけ、持ち上げる。
残りの腿に跨り、茅の腿を抱え、従って、茅の脚を大きく開いた状態で、ザクザクと茅の中にうちつけた。
「……ふぁっ! ああっ!」
そういう格好だと、いつもとは当たる場所が違うのか、茅の反応がひときわ良くなった。
自由になる上体をくねらせ、シーツを掴んで声をあげる茅をみて、荒野は、
『……また一段、「昇った」な……』
とか、思う。
そして、口に出しては、
「……茅。
こうしていると、動いているところ、丸見えだよ……」
と、指摘した。
茅は、シーツを鷲掴みにしながら、乱れた髪の隙間から、荒野が出入りする自分の股間を見つめ、
……ふっ。
と、強く息を強く吹いた。
髪が茅の顔を隠しているので、表情は読みとれない。
挙動から見ても、感じていることは、確かだと思うが……。
荒野はもっと茅を反応させたくなって、さらに腰の動きを速くした。
荒野が刺さっているそこは、すでに潤沢な潤滑油にまみれていたが、さらに夥しい液体が、荒野の動きに応じて外に掻き出され、結合部の周辺とシーツの上に水滴となって降り注いだ。
茅がシーツを掴む力が、明らかに強くなっている。
……あっ。あっ。あっ……。
と、茅の喉の奥から声が漏れた。
と、思ったら、突如、茅が上体を起こし、荒野にしがみついてくる。素早く手足を荒野の胸と腰に巻き付けて、密着した。
荒野はしばらくそのままの体勢で茅を上下に揺さぶり続けたが、座ったまま、茅にしがみつかれたままではできることに制約がありすぎる……と考え、茅の体を抱えて、立ち上がることにした。
荒野が茅の体を抱えて立ち上がると、茅は悲鳴に似た声をあげて、さらに力を込めて荒野にしがみつく。
「……いくよ」
とだけ告げて、荒野は茅の体を前後左右に振り回しはじめる。荒野の腕の力を持ってすれば、茅一人の体重を支えて振り回すなど、造作もないことだった。
茅はなおさら荒野にしがみつきながらが、
「……あーっ。あっー。あっー……」
と鳴きはじめる。
荒野を包み込んでいる部分が、複雑に収縮している。
おそらく、今までにない刺激に、茅の性感も一気に高まったのだろう……と、荒野は思った。
もっともそれは、荒野自身も同じことだったが。
荒野の中心、茅に包まれている部分に、熱がこもってくるような感覚が、ある。
……終わりが近いな……。
と、荒野は思った。
「……おれ、もういきそうなんだけど……」
荒野は茅に、そう告げた。
「いくのっ! 茅も、いくのっ!」
茅も、そう叫び返す。
荒野は茅の体を、上体だけをベッドの上に置き、腰と脚は空中に浮かせた格好で、そのまま腰を動かし続ける。
荒野がラストスパートに入ると、茅は苦悶に似た表情を浮かべ、ベッドの上で背を反らせ、頭を左右に振りながら、髪の毛をかきむしった。
「……いくよっ! 茅、いくよっ!」
茅の腰と腿を手で持ち上げながら、ここぞとばかりに動きを激しくする。
「いくのっ! 茅も、いくのっ!」
いやいやをするように首を左右に振りながら、茅が復唱するように、叫ぶ。
……自分が何を口走っているのか、もはや、まともに意識していないんだろうな……と、荒野は思い、茅の粘液に包まれたまま、避妊具の中に長々と射精した。
茅は、ゴム越しにでも荒野が放出したことを感じたのか、脚と腰を荒野に持たれたままその場で全身を硬直させ、ビクビクと痙攣に似た動作を繰り返す。
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つづき]
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