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彼女はくノ一! 第五話(308)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(308)

 翌朝、香也はボディプレスをかまされて目を醒ました。
「ごはんだよー、おにーちゃんっ!」
 目を開けると、ガクの顔がごく至近距離にある。
「……早く起きないとこのままディープキスしちゃうぞぉー!」
 香也は目を細めながら、「……んー……」と唸ってガクの額に額をあてて、どかす。
「……起きるから、どいて……」
 朝から元気だなぁ……とか、香也は思っているわけだが、香也と羽生以外の住人は二時間ほど前に起床して日課のランニングを終え、シャワーを浴びて身支度をしていりのであった。
 ガクの体からも、ほのかに石鹸の匂いが漂ってきている。
 香也が押しのけると、ガクは素直に体をどかした。
 香也はパジャマのボタンに手をかけたところで、ハタと手を止める。
「……ガクちゃん、出る……」
 香也は、開け放たれた襖を指さして、いった。
「……えっー!」
 ガクが不満そうな声をあげる。
「今日一日、お世話ぁー……」
「着替えくらい自分で出来るし。
 そんなこと、手伝わなくて良いから、出る……」
 香也は、少し強い語調を作った。
 ガクは、しぶしぶ、といった調子でとぼとぼと廊下にでいていき、襖の向こうに姿を消した。
 香也はようやくほっとした表情を浮かべ、着替えをはじめる……。

 なんでこのようなことになったのか、といえば、昨夜、孫子が切り出してきた「妥協案」が、そもそもの原因であった。
 昨夜、孫子は、
「……はなはだ不本意ではありますが……」
 と前置きして、以下の条件を香也に提示した。

 その条件とは……。
 一、楓、孫子、テン、ガク、ノリの五名交代で、月曜から金曜までの五日間、一日づつ、香也の身の回りの世話をする。
 二、また、その当番の日に、当番に当たった者が香也とどのような行為を行っても、他の者はとやかく干渉しない。
 三、その当番の順序は、毎週、くじ引きで決める。
 四、香也が将来、特定の女性と正式につき合うようになったら、この取り決めは無効となる。
 逆にいうと、香也がこの取り決めを破棄したい時は、この五人であるなしに関わらず、誰か特定の女性と正式にお付き合いをすればいい。
 五、たとえ、「香也番」に当たった者でも、香也当人の意思を無視して、香也に肉体的な関係を迫ってはいけない。
 言い換えれば、香也の意思でありさえすれば、毎日とっかえひっかえで関係を持っても、少なくともこの五人は文句はいわない……。
 六、土曜日曜は、特定の誰かを香也にあてがう、ということはしない。
 ただし、香也が誰かを選択して一緒にいることを望めば、他の者はこれを邪魔してはいけない……。

 ……それらの条件を聞いているうちに、香也はぐらぐらと目の前の光景が回り出す錯覚にとらわれた……。
「……香也様もご承知の通り、今、ここにいる五人は、例外なく、超人的な戦闘能力を持っています……」
 孫子は、冷静な声でそう指摘する。
「わ、わたしくしも……このような条件は、非常に不本意、なのですが……」
 このあたりから、孫子の声が若干、震えてくる。
 孫子の膝に置いた拳が、ぷるぷると小刻みに震えていた。
「……このまま、現状を放置すれば、家庭内の痴情のもつれで、取り返しのつかない乱闘事件が起こる可能性も、十分にありえます……」
 翻訳すると、「香也に、彼女たちの欲求不満をはらすための役割を、日替わりで、順番に行え」ということであるらしかった。
 最後に孫子は、
「脅すわけでは、ありませんが……こ、香也様が、仮に、この申し出をお断りするようなことがありましたら……」
 ……この子たちもわたくし自身も、どこまで自分を抑えられるか、保証の限りではありません……。
 と、押し出すような声で付け加える。
『……脅しだよっ! それ、立派な脅迫だよっ!』
 と、香也は内心で絶叫する。
 外見tけいな表情としては、「唖然」の一言で表現できる顔をしていた。
 より具体的いうと、ぽかんと口を開けたままであった。
「……んー……」
 全員が見守る中、香也が口を開くまでにたっぷり三分以上の時間が必要だった。
「……羽生さんは……そのことについて、どういってた?」
 風呂場でのアレがあったのは、ついさっきのことだ。
 その「話し合い」とやらの現場にも、羽生がいたに違いないのだ。
「……それが、その……」
 楓が、いいにくそうに、言葉を濁しながら……それでも、告げた。
「途中まで……それなんてエロゲ、とか、どこのエロコメですか、とか、合いの手入れてたんですけど……。
 途中で、疲れた、とだけ言い残して、お風呂から先にあがっていきました……」
 ……羽生も、途中まで聞いた上で、あきれ果てて退出したようだった。
 いや、確かに……彼女たちの相手をすることは……かなりの疲労を伴うだろう……。
 今現在、香也がすっげぇ疲労を感じているように……。
 香也はさらに三分以上、「……んー……」と唸りながら考え込んだ末、
「……本当に、ぼくが止めて欲しい、っていえば……それ以上、誰も何もしないんですよね……」
 と、確認する。
 全員が、「うん、うん」と熱心に首を縦に振った。
 他の少女の邪魔をされない期間を公然と作る……ということで、彼女たちの意見と利害は一致している。その間に香也にアプローチして、他の少女たちより密接な関係を作れれば……というわけである。今のままでは、そもそも、アプローチするだけでも、横槍がはいって、事実上、何もできない。

 結局……香也は、熟考の末、彼女たちの提案を受け入れることにした。
 あくまで比較の問題だが……五人全員を一度に相手にするより、一人づつの方が、まだしも気が楽だろう……と思ったからだし、それ以上に、その提案を蹴って、無秩序状態になった時のことを想像したら……その条件をのまないわけには、いかなかった。




[つづき]
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