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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(240)

第六章 「血と技」(240)

 基本的に荒野は理性的な少年だ。年齢分相応に冷静であり、観察力もある。だが、そうした資質がかえって足かせとなり、判断力を鈍らせる場合もある。例えば、今回、各種の「分かりやすい兆候」を目の当たりにしながらも、「ヴィにはそんなことをする動機がない」という、ただ一点の根拠で、漠然とした憶測を内心で打ち消し続けていた、というわけで……。
「……ヴィ!」
 荒野は、三人に絡みつかれながら、叫ぶ。
「一体……何が、目的だっ!」
「……決まっているじゃない……」
 いつの間にか立ち上がっていたシルヴィが、嫣然と微笑む。
「いつの時代だって、結束を固めるための一番手っ取り早い手段は、婚姻と性交……血のつながりと肉の交わりが、複数の人間を一つの集団にまとめ上げる……」
「……それは……姉崎のロジックだっ!」
 反論する荒野の口を、茅が塞ぐ。
「そう。姉崎の、ロジック……。
 でも……口先三寸の加納のロジックは、こういう時には役にたたなーい……」
 茅が荒野の口を貪る間にも、荒野の左右にとりついた酒見姉妹は、荒野の着衣をはだけていく。
 茅の顔や手と同様に、荒野の体に触れる酒見姉妹の体も、耳や頬にかかる吐息も、熱い。
「子供だった頃とは違って……ヴィは、姉崎だし、コウも加納になったね……。
 それとも……」
 ……加納の技で、彼女たちの体についた火を、沈めてみせる?
 と、シルヴィは微笑む。
「……やって出来ないことも、ないんだけどね……」
 荒野も、不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。
 両腕に双子をぶら下げたまま、茅の体をそっと押しのけて、立ち上がる……という程度のことなら、荒野なら朝飯前だった。
 今までされるがままになっていたのは、シルヴィの真意を測りかねていたからだ。
「……かわいくなーい……」
 三人の束縛を意に介することもなく立ち上がった荒野をみて、シルヴィが口を尖らせる。
「そりゃあ……」
 荒野は、酒見姉妹を両腕にぶら下げたまま、肩を竦め、のんびりとした声を出す。
「……これでも、男だし……。
 それに、子供の頃ならともかく、この年になってまで、ヴィにやられっぱなしでいたくはないなぁ……」
「……All right……」
 シルヴィも、方を竦める。
「確かにコウは、もう子供ではないし、昔とは違う。それに、やられっぱなしでもない……。
 それは、この前の夜に、証明して貰ったわ……。
 でもね……」
 それだけじゃあ、女は御せないからぁ……と、シルヴィは笑う。
「……新種でしょ、野呂に、二宮……。それに、そこのシスターズのような変わり種までいる……
 今のこの土地、一族の見本市じゃない。
 こういう混沌とした状況下では、加納の言葉よりも、もっと直接的な繋がりの方が……安心できるものよ、女は……ね。
 少なくとも、そこの二人は、コウとそうなることを望んでいるようだけど……」
 シルヴィに説明されるまでもなく、荒野はそのことを体感している。酒見姉妹だけではなく、茅も、はだけたメイド服の合間から、火照った肌を、直接、荒野の肌になすりつけようとしている。
 荒野の両腕を抱き込んでいる姉妹は、スカートの中に荒野の手を導いていた。
「……体で、報酬の前払いか……」
 荒野は、ため息をついた。
 そこまでしなくて、酒見姉妹なら、喜んで働いてくれそうな気もするが……。
「……コウは、自分の価値を、過小評価しすぎ……」
 シルヴィは、再び、方を竦めた。
「……加納の直系の種を求めない、若い女の術者の方が、少数派なんだから……」
「……あー……」
 荒野は、天井を仰いだ。
 優秀な子孫を得るために、優秀な資質の持ち主と交合する……。
 確かに、それは、一族の間では、それなりに支持されている考え方、なのではあるし、この間のシルヴィとの「交渉」も、その一環なわけであるのだが……まだ年若い荒野は、今まで自分自身に引き寄せて考えたことが、あまりない。
「……いっぺんに三人相手では、身が持たないよ……」
 荒野は、視線を落としながら、そういう。
 そんな会話の間にも、茅が立ち上がった荒野の前に跪き、荒野のベルトのバックルと外しにかかっていた。
「……他の女の人とやったら、後で茅と二倍以上、やらないといけないそうだし……」
「……嘘おっしゃいっ!
 この前は、あんなにタフだった癖にっ!」
 シルヴィが、芝居がかった動作で首を左右に振る。
「……それに……」
 相手にするのは、三人だけではなく、四人よ……と、訂正しながら、シルヴィも服を脱ぎはじめた。
「……荒野、の……」
 茅は、下着もろとも荒野のパンツをずり降ろし、荒野の下半身を露出させる。そして、すでに起立している荒野の分身を目の前にし、潤んだ瞳でそれをみつめた。
「……これが……男性の……」
「……加納の、若様の……」
 半裸で左右から荒野に抱きついている酒見姉妹も、耳まで真っ赤にしながら、床に座り込んで荒野の局部に顔を近づけた。
 荒野も、本気で抵抗するつもりはない。
 シルヴィが指摘する通り、こうした方法も、術者を動かす際には有功なのだ。現金が必要ないかわりに、荒野の負担も増えるわけだが……現在の状況では、遠慮することなく、自由に扱える手駒が多いにこしたことはない。
「……コウなら……全て、うまくやれるわ……」
 全裸になったシルヴィが、近づいてくる。
「……最初は、茅だ……」
 荒野はいった。
 それは、譲れない。そうしておかないと、後が怖い。




[つづき]
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