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第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(0)
「……へっ!
おれを解放したことを後悔させてやるぜっ!」
「……ったく……。
自分の立場ってもんが、理解できないのかな? 君は……」
拘束具が解かれた途端、少年が悪態をつくのを、少女は冷ややかに見おろした。
「……そんな拘束具でどうにかなるようなら、術者としてはかなり半端だし……そんなもん、所詮、飾りだってこと、わかってないのかな……。
君、一応、本家筋なんでしょ?」
「……へっ! こんな飾り、いつでもぶった切れたが、警戒が厳しいからおとなしくしていたまでよっ!」
少年が、吠える。
「今は、何故か知らないが、見張りの気配が消えているし……こんなくそったれな家、おれがぶっ潰してやらぁっ!」
「……あー、あー……。
ほんの数日、閉じこめられただけでこんなに柄が悪くなっちゃって……」
少年の拘束を解いた少女が、大仰な動作で天を仰ぐ。
「……こんな恥部、外に出しちゃっても本当に大丈夫なのかな……。
いい?
見張りがいなくなったのは、君をこれから別の場所に移すことに決まったから。必要がなくなったから、別の任務についただけ。
君は、これからわたしと一緒に、別の場所に移るの……」
「……なんとでもいっとけっ!」
拘束具で締め付けられ、痣になった部分を揉みながら、少年が、吠えた。
「自由になりさえすれば、こっちのもんよっ!」
「君……可愛くないっ!」
少女が、少年に向かって、厳しい声を出す。
「……お役目じゃなけりゃ、こんなガキ、とっくにしばき倒してるわ……」
後半は、ぼやく口調になった。
「……容赦なくしばき倒しても、ええで……」
暗い室内に、もう一人の女性が入ってくる。
「しつけの行き届いてないお子をわざわざ外に出すんは、このお子の性根を叩き直すためでもありますさかい……。
……梢。
あんさんなら、このお子とも年齢が近いし、気性もしっかりしてはる。加納のぼんとの約束もやが、このお子の性根もしっかり叩き直してやりぃな……」
「……ここまでひねくれてると、正直、あまり自信がないっすけどね……」
その女性に、梢、と呼ばれた少女は、大仰に肩を竦めた。
「……わたし……まだまだ未熟者ですし、人の教化とか再教育とか、そういう柄じゃないっすよ……」
「……知っての通り、このお子は、あんはんには逆らえんように書き換えております……」
その女性は、少女に向かって柔らかく微笑みかける。
「……同じくらいの子らの中では、あんはんが一等しっかりしてはるし……それに、他にも手助けを手配しておます。
現地には、一族のもんもぎょうさんおるようですし、このお子にとっても、あんはんにとっても、いい経験になりまっしゃろ……」
「……はっ!」
ゆらり、と床に座り込んでいた少年が、立ち上がった。
「……よくも、のこのこ顔出せたもんだなっ!
このばあぁっ!」
「……なんやて……」
少年が発した最後の言葉……「ばばあぁっ!」に、その女性は顔色を変えた。
[
つづき]
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