2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第六話(0)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(0)

「……へっ!
 おれを解放したことを後悔させてやるぜっ!」
「……ったく……。
 自分の立場ってもんが、理解できないのかな? 君は……」
 拘束具が解かれた途端、少年が悪態をつくのを、少女は冷ややかに見おろした。
「……そんな拘束具でどうにかなるようなら、術者としてはかなり半端だし……そんなもん、所詮、飾りだってこと、わかってないのかな……。
 君、一応、本家筋なんでしょ?」 
「……へっ! こんな飾り、いつでもぶった切れたが、警戒が厳しいからおとなしくしていたまでよっ!」
 少年が、吠える。
「今は、何故か知らないが、見張りの気配が消えているし……こんなくそったれな家、おれがぶっ潰してやらぁっ!」
「……あー、あー……。
 ほんの数日、閉じこめられただけでこんなに柄が悪くなっちゃって……」
 少年の拘束を解いた少女が、大仰な動作で天を仰ぐ。
「……こんな恥部、外に出しちゃっても本当に大丈夫なのかな……。
 いい?
 見張りがいなくなったのは、君をこれから別の場所に移すことに決まったから。必要がなくなったから、別の任務についただけ。
 君は、これからわたしと一緒に、別の場所に移るの……」
「……なんとでもいっとけっ!」
 拘束具で締め付けられ、痣になった部分を揉みながら、少年が、吠えた。
「自由になりさえすれば、こっちのもんよっ!」
「君……可愛くないっ!」
 少女が、少年に向かって、厳しい声を出す。
「……お役目じゃなけりゃ、こんなガキ、とっくにしばき倒してるわ……」
 後半は、ぼやく口調になった。
「……容赦なくしばき倒しても、ええで……」
 暗い室内に、もう一人の女性が入ってくる。
「しつけの行き届いてないお子をわざわざ外に出すんは、このお子の性根を叩き直すためでもありますさかい……。
 ……梢。
 あんさんなら、このお子とも年齢が近いし、気性もしっかりしてはる。加納のぼんとの約束もやが、このお子の性根もしっかり叩き直してやりぃな……」
「……ここまでひねくれてると、正直、あまり自信がないっすけどね……」
 その女性に、梢、と呼ばれた少女は、大仰に肩を竦めた。
「……わたし……まだまだ未熟者ですし、人の教化とか再教育とか、そういう柄じゃないっすよ……」
「……知っての通り、このお子は、あんはんには逆らえんように書き換えております……」
 その女性は、少女に向かって柔らかく微笑みかける。
「……同じくらいの子らの中では、あんはんが一等しっかりしてはるし……それに、他にも手助けを手配しておます。
 現地には、一族のもんもぎょうさんおるようですし、このお子にとっても、あんはんにとっても、いい経験になりまっしゃろ……」
「……はっ!」
 ゆらり、と床に座り込んでいた少年が、立ち上がった。  
「……よくも、のこのこ顔出せたもんだなっ!
 このばあぁっ!」
「……なんやて……」
 少年が発した最後の言葉……「ばばあぁっ!」に、その女性は顔色を変えた。




[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking HONなび




Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ