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彼女はくノ一! 第六話(18)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(18)

 翌朝、香也は三人娘のボディプレス攻撃を立て続けに受けて目を醒ました。
 ずどん、ずどん、ずどん、と布団の上に三連続の爆撃を受け、香也は「ぐほっ!」とか「ぐはぁっ!」とかわめきながら、悶絶する。
 テン、ガク、ノリの三人も、別段、勢いをつけて身を投じたわけでもなかったが、一人が突撃を開始すれば他の二人もそれに続くのが、この三人である。
 全身を痙攣させて香也が目をあけると、
「おにーちゃん、おはよーっ!」
「朝だよ、起きてー!」
「真理さんが、ご飯だってー!」
「おはようのちゅーしよう、おにーちゃんっ!」
「こら、駄目だって……そういうの……」
「昨日、真理さんが厳重注意してたじゃないか」
 香也の上に折り重なりながら、実に賑やかな三人であった。
「……ん、んー……」
 香也は、震える声で、三人に告げた。
「とりあえず……上から、どいて……」

 その日は夜半から大雨が降っており、毎朝の日課であるランニングだかトレーニングだかが中止になったとかで、三人組はエネルギーを持て余しているらしく、朝食の時も騒がしいことこの上なかった。
「……今日ねー、みんなで、お買い物にいくのー……」
 ガクが、無邪気な口調でいう。
「お買い物?」
 真理が、首を傾げた。
「うん。
 茅さんたちが、春物の服を買いに行くっていってたから、それに便乗して……」
「……ああ。そう……ね。
 そういえば、みんな……ノリちゃん以外は、あんまり服を持っていなかったけ……」
 ノリは、真理と一緒に諸国漫遊をしていた時に、ちょうど身体が一気に育ってきたので、調子にのった真理がスカートなどの女の子らしい服を多数、買い与えている。
 テンもガクも、あまりファッションに興味がないのか、水着やトレーニングウェアなどは必要に応じて買っていたが、自分から衣服を買いあさる、といったこともなく、持っていた服を着回したり、また、物の服でも気にしなかったので、香也のお下がりなどを着用したり、といった具合でいままで過ごしている。特に、ノリに続いて背を伸ばしてきたガクは、動きやすい服が好きだ、ということもあって、香也が昔着ていた衣類を好んで着用している。
 結果、ノリの場合、やはり動きやすさを考慮して、丈が短いスカート、ガクは香也が昔着ていたジーパンやトレーナー、テンだけが、ここに来たときとあまり変わらない、半ズボンにパーカー姿……という具合に、ついこの間まで、ほぼ同じ服を着ていた三人だったが、ここ数日の間に、着ているものにも個人差が出てきていた。
「ノリちゃんほど極端ではないけど……ガクちゃんも、しばらくみない間に、背が伸びて……」
 真理はそういって、目を細める。
「茅ちゃんと、他にはどんな人がいるの?」
「わかっているのは、静流さんと双子……酒見さんたち……って、この人たちは、真理さん、まだ会ったことないか……」
 テンが、真理の問いに答えた。
「その他に、シルヴィと……それに先生も、車出してくれるっていってた……他にも、来る人がいるかもしれないけど、ボクたちにはよくわからない……」
 その他に、茅の知り合いあたりが、便乗してくる可能性もあった。
「ずいぶん、大勢ねぇ……」
 真理は、もう一度、首を傾げる。
「雨が降っているし、そういうことなら、わたしも車を出しましょう……。
 無駄遣いしないように、見張りもしておきたいし……」
 とはいったものの、実のところ、三人に関していえば、調子に乗って「無駄遣い」をする可能性は、極端に乏しい。育った環境のせいか、三人とも物欲は乏しく、むしろ、手持ちのものをいかに効率よく使いきるか、と工夫することに腐心する方だった。
 三人が調子に乗って無駄遣いをした例は、ここに来た時に、マンドゴドラのケーキを馬鹿食いしたことくらいだろう。
「ちょうどいいから、楓ちゃんや才賀さんもいらしゃい……」
 真理はそういって、年長の二人も誘う。
 楓も、冬服こそ真理が見繕って買い与えたが、他の季節用の服は持参していない。孫子は多分、膨大な衣装持ちである筈だが、だからといって真理は、彼女一人を仲間はずれにするつもりもなかった。
「……いえ……。
 今日は仕事……いや、用事が、ありますので……」
 孫子はそういって、真理の申し出をやんわりと断る。
 楓は、表面上、断る態度を示したが、孫子とは違い、楓には断る口実がそもそもない。
 暖かくなれば着るものがなくなる、ということは、動かせない事実だったので、真理や三人組に押し切られる形で、動行に同意することになった。

 そんなやりとりを見ながら……これで、今日の日中は、静かになるな……と、香也は思った。
 真理との買い物につき合った経験から推察すれば、一度出ていけば、夕方までは帰ってこないだろう。真理は、実にうれしそうに、丁寧に時間をかけて、服を選ぶ……ということを、香也は経験上、よく知っている。
 これだけの多人数が相手となると、なおさら、時間がかかる筈だった。

 朝食が終わると、まず羽生が傘をさしていつもより早めに出勤する。スーパーカブに乗るよりは、傘をさしての徒歩を選ばせるほどのどしゃぶりだった。
 みぞれや雪にこそなってはいないものの、一度外に出てみると、真冬の雨は周囲の気温を確実に何度か下げている。雲が厚いのか、周囲は真っ暗だった。
 香也も、羽生と一緒に傘をさして、庭のプレハブに向かう。下書きのスケッチが、かなりたまっていた。そろそろ、完成品を増やしていきたい……と、香也は思っている。
 昨日、玉木に頼まれた仕事を実際に引き受けるとすれば、今度の長期休みは、そっちの方にかなり時間が取られる……と、予測できる。だから、今のうちに、自分の絵に向き合う時間を、しっかり作っておきたかった。

 羽生や香也が出ていって、しばらくしてから、今度は、スーツに着替えた孫子が家を出ていった。落ち着いた雰囲気があり、実際の年齢よりもかなり上にみられることが多い孫子は、そういう固い格好も、よく似合う。
 外見からいうのなら、OL、というよりは、総合職のキャリアウーマンといった雰囲気だったが……そのどちらにせよ、孫子の年齢からいえば、若すぎるのだった。




[つづき]
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