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彼女はくノ一! 第六話(21)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(21)

 佐久間梢は一度台所に手伝いにいきかけたが、三島に「ガキは引っ込んでろってーの」といわれ、真理にも「お客さんですから、気を使わないでいいんですよ……」といわれ、結果として、すごすごと居間に追い返されてきた。
「……で、……」
 梢は、心底不思議そうな顔をして、この家の住人たちにまとわりつかれている香也をみる。
「君……どうして、そんなにモテモテなんすか?」
 炬燵にはいった香也の膝の上にガクが乗り、背中にはテンとノリがもたれ掛かっている。そして左右には、楓と孫子が座り、三人にまけじと香也との距離を詰め、ノートパソコンを香也の前に置いて、なにやら相談だか打ち合わせだかをしている。
「……んー……」
 当の香也は、ずずずっと音をたてて湯呑みを傾け、ついでに自分の首も傾けていた。
「わかんない」
 実際、香也自身にもはっきりとわからない質問には、明瞭に答えようがない。
「……ある意味、加納の若とか姫よりもよっぽど、謎な子だなぁ……」
 梢は、そうぼやいた。
「しょ、正体不明で不気味な佐久間が、何をいいますか……」
 楓が、呆れたような声を出す。
 つい最近まで、「傀儡操りの佐久間」といえば、一族の中では術者が直接姿を現せないことで有名だった。
 いや、今でもその性質は、基本的に変わっていない筈なのだが……。
「あのねー……」
 梢は、大仰な芝居がかった動作で、憤慨した様子を誇示してみせる。
「佐久間の技を伝える家庭教師が欲しい、なんて、前代未聞な要求突きつけてきたの、そもそも君たちでしょ?
 そのわがままをわざわざ聞いてあげるためにここにきてるのに、その態度はないんじゃないかな……」
「そんなもの、現象がしたことに比べれば……」
 楓は、そういって口を尖らせる。
「この子や加納たちは、この土地から離れなければならないような事態になることを、非常におそれています」
 孫子が、説明を補足する。
「そして……現象の襲撃は、自分たちの足元がいかに脆弱であるのかを思い知らされる、格好の事件でした。
 茅やこの三人は、一般人社会というものについての知識が乏しいから、かえって現在の状況の貴重さが実感出来ないのかも知れませんが……」
 そういってから、孫子は、話題を変える。
「現象といえば……あの後、あの子から、何らかの情報は引き出せまして?」
「……全然」
 梢は、首を横に振った。
「そちらで悪餓鬼、とか呼称している子たちについて、こちらもでは、特に長が力を入れてまして、現象に関してもとことん、記憶をさらってみたのですが……めぼしい、有意の情報は、見あたらず……。
 ただ、現象に直接接触してきたのは、そちらから回ってきた似顔絵の二名だけのようです……」
「って、いうことは……」
 今度は、テンが口を挟む。
「その二名には、佐久間の技が使えたってわけだ……」
「……どうして?」
 ガクが、首を傾げる。
「だからぁ……一般人の家庭に預けられていた現象は、記憶の一部と特殊な能力を封じられていたって話しだろ?」
 テンではなく、ノリが、ガクの疑問に答えた。
「現象に直接、接触しているのがその二人だけっていうのなら、その二人が現象の封印を解いたに決まっているじゃないか……。
 いくら佐久間の技っていっても、直接接触していない人間に、微妙な操作を行うのは、流石に難しいと思うけど……」
「おっしゃるとおりです」
 梢が、ノリの指摘に頷く。
「……そうすると……」
 楓は、青白い顔をして首を傾げた。
「その二人は……現状の、子供のままの姿でも……一族の水準を大きく上回る筋力と、佐久間の技と併せ持っている、ということに……」
「でも、それは……かのうこうやも、ある程度、予想していたことだし……」
 緊張した面もちの楓とは対照的に、テンは、のほほんとした表情でいい添える。
「ボクらのデータを持った人たちが、その改良版として合成した子たちだろうって、最初から、いっていたしさ……」
「相手の目的は、まだはっきりしていませんの?」
 孫子は、誰にともなく、そう尋ねた。
 相手が何を欲しているのか……それさえ掴めれば、交渉も可能なのではないか……と、思うのが、孫子の発想である。
「わからないっす。
 声明やメッセージらしいものは、いっさい、発していませんし……現象以外に、やつらに接触したものも、皆無ですから……」
「あの二人が、存在する……ということは、他にも何人か、同等、あるいは、あれ以上のレベルの、仲間がいる……と、思うのですが……」
 孫子が、梢に確認した。
「佐久間も、そう考えています」
 梢は、孫子の言葉に、頷く。
「……大胆なコンセプトの、ヒトを対象とした、遺伝子操作実験、ですから……。
 常識的に考えて、多数のサンプルを作って、その経験からノウハウを蓄積するのが、常道でしょう」
「資金、設備……それに、専門家の手助けが、必要だったでしょうね……」
 といいかけ、孫子は、
「そっちのラインは、シルヴィが調べていますわね、きっと……」
 と、一人で、結論をつける。
「あくまで、噂ですが……姉崎の方では、確かにそっちの線で調べているようです」
 梢は、頷いた。
「姉崎は、経済活動や学会の動向には敏感ですから……時間さえかければ、相応の手がかりを掴むでしょう……」 
「……ええっとぉ……」
 楓が、遠慮がちに、みんなに尋ねた。
「わたし……その、加納様が、悪餓鬼って呼んでいる子たちの目的が……そもそも、見当つかないんですけど……」
 みんなの視線が、楓に集まる。
「その子たちを作った人たち。これは、想像できます。中断した実験を惜しんだ人たちもいれば、現象のお母さんがそうだったように、自分たちをひどい目にあわせた人たちへの復讐の念につき動かされていたのかも、知れません。
 それと、現象の動機、というか、目的も……共感はできませんが、理解は、できます」
 楓は、そこで一度、言葉を切る。
「でも……一族への復讐、が、動機なら……あの時、学校や商店街を同時に襲撃した時……どうしても、もっと徹底的に叩かなかったんですか?
 あの時……今とは違って、この土地には、わたしたちしかいなかったし……相手の総人数まではわかりませんけど……個人対個人の能力比でいえば、下手すれば、向こうが圧勝……一人ずつ分断して個別撃破、という展開も、十分に可能だった筈で……いいえっ!
 それよりも、もっと効果的なのは……むやみに暴れ回って、被害を拡大し……わたしたちが、ここに居られなくなるように、追い込むことっ!
 そうすれば……わたしたちは……」
「……直接交戦しなくとも、散り散りになるところ……だった……」
 孫子が、楓の言葉を引き取る。
「つまり、あの時のは……攻撃、というより……予告? ないしは、警告?
 ……自分たちの存在を……わざわざ、わたしたちに知らせ……準備をする、余裕を与えるための……」




[つづき]
目次

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HONなび




Comments

はじめまして^^

私のサイトで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://vaaksy.blog85.fc2.com/blog-entry-108.html
です。宜しくお願いします。

  • 2007/04/17(Tue) 12:11 
  • URL 
  • 情報分析官 #-
  • [edit]

リンクはご自由に。

>情報分析官様
はっきりいって、リンク先の記事との当ブログとの関連が、まったく理解できませんでした。
が、リンクはご存意にどうぞ。

  • 2007/04/17(Tue) 18:21 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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