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彼女はくノ一! 第六話(24)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(24)

 香也がしばらく絵に描きかけの絵に取り組んでいると、ぽつぽつと間隔をおいて、楓、孫子、テン、ガク、ノリといった同居人に加え、佐久間梢までもがプレハブ入ってきた。佐久間梢はプレハブに入る時、小声で「……おじゃましまぁす……」と挨拶し、香也も目礼を返したが、他の面子は「香也がここにいる時は、邪魔をしない」という大原則を心得ているので、黙ったままそっと入って、香也の背中を見ている。
 物音をたてたりしない限り、背後に人がいる程度では、一度絵に取り組みはじめた香也の集中力は乱れはしない。
 香也は、すぐにギャラリーの存在を意識の外に置き、一心不乱に絵筆を動かし続ける。
 香也は休むことなく手を動かし続け、画布の上に絵の具がのり、あやふやなものでしかなかった輪郭や色が、徐々に明確な形になっていく。 
「……ふぁ……」
 はじめて香也が絵を描く様子を目の当たりにした梢が、間の抜けた声をあげるが、小声だったので集中している香也の耳には入らなかった。
「想像していたより、ずっと……はやい……」
「絵を描く」というと、典雅というかゆったりと落ち着いた雰囲気を想像してしまいがちだが、一度集中して手を動かしはじめた時の香也は、手の動きだけをむれば、かなり早い。画布の前にかがみ込み、ぶんぶんと風音をたてて手を動かす。アートとかいうよりも、スポーツといった感じで、実際、プレハブの中は肌寒いくらいなのに、香也の額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
 絵を描いている香也自身が、作業を、先へ先へと描き急いでいる感じだった。
 ……ああ、これは……邪魔を、できないや……と、梢は思い、ふと香也の背中から目をそらす。
 すると、壁際のスチール棚に無造作に積み上げられた膨大な量の紙やスケッチブック、キャンバスなどが目に入る。香也の真剣さは、もはや疑うまでもない。香也は、こうして一人黙々と紙や画材と格闘して、これだけ膨大な成果を蓄積してきたのだ……。
 子供の趣味とか遊びでしかない、とはいっても……心身を消耗させ、少なからぬ時間を削るようにして描き上げた香也の絵には……それなりに、意味も価値もあるのではないか……と、梢は思う。
 昼間、現象とともにここに置いてある絵をみても、梢はとくに感銘を受けるということがなかった。梢は、そうした絵画を鑑賞するような素養が少しもなかったし、ただ「巧いな」ということくらいは、判断できたが、現象がそうであったように、それ以上に感じ入る、ということもなかった。むしろ、魅入られたように次々と絵を手にしていく現象をみて、「……何がそんなにおもしろいんだろう?」と不思議に思っていた。
 しかし、こうして香也が絵を描いているところを実際にみて、梢は認識を少し改める。
 梢は、何故、香也がここまで夢中になれるのか、また、その結果できあがった香也の絵に、どれほどの価値があるのか、よく判断できない。だが、こうして我を忘れるほど夢中になれる対象が存在するのは、羨ましい……と、思った。

 楓に声をかけられて手を止めると、すでに梢の姿はなかった。時刻を確認すると、確かにいい時間になっている。何もなければ、明日もほぼ一日、絵を描いていられる筈だったし、そろそろ片づけて寝た方が、効率のいい時刻になっていた。
 佐久間梢は帰ったのか、姿は見えなかった。
 香也が画材の後始末をして母屋に入ると、三島とシルヴィと三島、それに羽生が、酒盛りをしている。三島と羽生が肩を組んで「わははははは」と延々と哄笑を放ち、シルヴィはそれをみて楽しそうにグラスを傾けている。野呂静流は炬燵に座ったままうつらうつらしていて、真理は炬燵の横に敷かれた布団の中で寝息をたてていた。
 夕食の時にはいた飯島舞花の姿は、すでにみえなかった。
 ……大人の女性同士、盛り上がることもあるのだろう……と思った香也は、ちらりと居間の様子を確認しただけで、すぐさま通りぬけ、自室へと向かう。
正直な話し、まじまじと観察した結果、中の誰かに絡まれたりするのも面倒だと思った。
 それでなくとも、久々に、一日中絵に取り組むことができたその日、香也は心地の良い疲労を感じている。
 その夜、かなり遅い時間まで、居間の方からは人の声や物音が聞こえてきたが、香也は安心して熟睡することができた。

 翌朝、香也は、何か熱い固まりが身体に押しつけられている感覚により目を覚ました。より正確を期するのなら、その固まりが身体に密着して押しつけられた箇所がじっくりと汗ばむ感触に覚えがあり、香也の本能が「やばいっ!」と警鐘を鳴らしたので、一気に意識が覚醒した。
 目を醒ました香也は、予想通り、布団の中で自分に抱きついて寝息をたてている二人の少女を確認し、じわり、とこめかみのあたりに冷や汗を浮かべる。
 この間、風邪を引いた時と、そっくり同じシュチュエーションであり、さらにいえば、今回、以前の時とは違い、家の中に真理もいる。ひょっとしたら、昨晩遅くまで酒盛りしていたお客さんたちの何人かはあのまま泊まったのかも、知れない……。
 つまり、どう考えても、香也は……あの時以上に、身動きがとれない状態にあった。
「……んんんんんっ!」
 楓が、香也のわき腹に顔をつけて、身じろぎをした。
 目を閉じたままだったので、おそらく、起きてはいないと思う。
 香也も、楓も、孫子も……幸いなことに、パジャマを着たまま、香也を中心に密着している。三人とも、パジャマは、とくに乱れた様子がない。
 記憶していないだけで、昨夜、何かをやった……というわけではないらしい……と、判断し、香也は、少し安心した。この様子だと、おそらく、香也が熟睡している間に、楓と孫子が布団の中に潜り込んできて、そのまま添い寝していただけだろう。
 ……だからといって、現在の香也の危機的な状況が、改善されるわけでもないのだが……。
 香也は、二人を起こさないように息を殺しながら、必死になって思考を巡らせる。
 まず、二人を、不用意に起こしてはいけない。どちらかを起こしたら、すかさずそのままえっちな行為に誘導されそうだし、二人を同時に起こしたら、もっと大変なことが起こりそうな気がする……。
 次に、誰かに助けを呼ぶわけにもいかない。
 香也はちらりと目覚まし時計を確認する。香也のいつもの起床時刻より、二十分ほど早かった。まだ羽生は出勤していない時刻だし、真理も、いるだろう。だが、この場で大声を出し、そうした人々を呼ぼうものなら……今度は、この状況について、きちんと説明しなければならなくなる。
 いや。説明しようにも、香也が目覚めたらすでにこの状態だったわけで、香也にしてみても説明のしようがない状態なのだが……。
 香也は、真理の顔を思い浮かべる。
 真理なら、避妊具の箱を手渡して、「我慢できない年頃なのはしかたがないけど、責任をとれる年齢になるまでは、きちんとこれを使いなさないね」とかいいつつ、そのまま放置してしまいそうな気がする……。
 そうなったら最後、香也は、ものの役に立たなくなるまで、二人に搾り取られることだろう。幸か不幸か、今日は日曜であり、時間だけはたっぷりとある。

 さんざん考えた結果、香也は、
「駄目でもともと、出来る限り二人を起こさないようにして、この場から脱出する」
 という選択をする。
 万に一つも成功の見込みがないとはわかっていたが……香也は、その「万が一」に賭けてみることにした。




[つづき]
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