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彼女はくノ一! 第六話(28)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(28)

 寒いだろうから、と中に招き入れられた佐久間梢、現象、二宮舎人は、灯油ストーブの周りに集まって、楓の説明を一通り、聞いた。
 何故、楓が説明しているかというと、香也はしばらくして落ち着くと、後は関係ないとばかりに、書架を少しストーブから離して置き直して黙々と絵を描きはじめたからだ。楓にしても、こうして改めて説明する行為に対し、羞恥は十分に感じるのではあるが、それ以上にこれ以上、香也を邪魔して迷惑をかけてはいけない……という思いが強い。
 それに、これから長いつきあいになりそうだし、誤解のないように、説明すべきことはあらかじめ説明しておいた方がいいだろう……という気も、した。
「……はぁ~……」
 楓の話しを一通り聞いた佐久間梢は、ため息をついて、感心してみせた。
「……こっちの人たちは、随分と、進んでいるんですねぇ……」
「……なんとも、まあ……」
 二宮舎人は、ちらりと香也の方に視線を走らせた。
「どっかの童貞願望充足マンガみたいな境遇なんだな、ここのおにーさんは……。
 どうだ、童貞!
 うらやましいかっ!」
 と、隣の現象を肘で軽く小突く。
「……ど……どう……」
 楓が説明する間中、顔色をなくして目を白黒させていた現象は、舎人に小突かれて上体をぐらぐら揺さぶられながら、露骨に狼狽してみせた。
「ど、どうして……どどど、どうて……その、経験がないと決めつけるのかっ!」
「いや、恥ずかしがることないって、童貞」
 舎人は、大きな掌を、現象の頭の上で、ぽんぽんと弾ませる。
「……お前らの年頃なら、それで当たり前なわけだ、童貞。
 それに、お前さんのように無駄にプライドが高いタイプは、異性の前ではいい格好をしようと身構えるから、なおさら機会が遠のいていくわけだ、童貞」
 いちいち語尾に童貞をつけているあたり、確実に現象をからかっている。
「……おっ。おっ。おっ……」
 現象の方はというと、こういう事態に慣れていなくてどう対処していいのか、戸惑っているのは傍目にも丸わかりで、酸欠になった金魚の様に、口をパクパクさせている。
「こちらの方とは違い、現象が異性に持てないのは今更断るまでもないことですから、こっちは適当にスルーしておいて……」
 梢は、現象の方をみようともせず、なかなかに辛辣な態度をとる。
「お邪魔はしませんし、静かにしますから、少し、ここの絵とか見させてください。
 ほらっ!
 キミも、お願いするんだからしっかり頭を下げるっ!
 違うっ!
 楓ちゃんじゃなくって、こっち絵描きさんの方むいてっ!」
 とか、結構きつい調子でいいつつ、現象の頭に手を置いて、力づくでグリグリと押し下げた。
 梢だけではなく、舎人までもがそれに加勢する。
 ……なんだか……力関係が、もうすっかり、固定しているんだな……と、楓は、内心で冷や汗をかきながら、そう思った。
「……あっ……あの、香也様……」
 とりあえず、立場上、楓は、香也にそう声をかけてみる。
「……んー……。
 いいけど……」
 香也は、しゃこしゃこと高速で手を動かしながら、上の空で答えた。返答に要した時間からいっても、ちゃんと熟考した出した結論……というわけでもなく、上の空のまま、内容をよく聞きもせず、脊髄反射的に返答をしているのだろう……と、楓は思う。
「……ええっと……。
 香也様はこの通り、絵の方に夢中なんで……あまり、話しかけないでくださいね。
 わたしで説明できることでしたら、協力させてもらいますので……」
 楓としては、そう答えるしかない。
「ああ。
 邪魔は、しないし、させない……」
 二宮舎人は、そういって立ち上がり、壁際まで退く。
「おれはあくまで監視役だから、後は若い者同士、好きにしてくんな……。
 もっとも……ここで下手な真似をすれば、最強のお弟子さんが黙っていないと思うがな……」
 おそらく、現象への牽制の意味も含めて、あえてそういう言い方をしたのだろう。
 わざわざ楓の存在を引き合いにださなくとも、それなりの瞬発力と判断力を兼ね備えた舎人なら、仮に何かあったとしても、今の現象を確実に取り押さることが出来る……と、楓自身は、みているが。
 楓と舎人がそんなやりとりをしている間にも、現象は、立ち上がって、勝手にそこいらに放置してある香也の絵を手にとって、眺めはじめる。
「すいませんねぇ、礼儀がなっていないもんで……」
 楓の視線を追った梢が、楓に向かって頭を軽く下げた。
「いえ……いいんですけど……」
 現象にしてみれば、楓や香也の目の前で、梢と舎人にああいうあしらい方をされて、ばつが悪いのだろう……と、楓は想像する。
 それに……。
「他意はなく、純粋に、絵に興味を持っているようですから……」
 思いの外、真摯に一枚一枚の絵を見ていく現象の態度から、楓はそう判断する。
「……なあ……」
 現象が背中を向けたまま、誰にともなく、尋ねた。
「なんで……ゴミの絵が、多いんだ?」
「それは……そういう絵を、頼まれたからです」
 香也が答える前に、楓が、説明を開始する。
 不法投棄ゴミを片づけるボランティアのこと、そこから、香也が宣伝用のポスター描きを頼まれたこと……など。
 現象は、たまたま目に付きやすいところにある、上の方から順番に……いいかえれば、最近、仕上がった絵から順番に、みていっている。
 ゴミの絵が多いのも、当然だった。
「いや……そういう表面的なことではなしに、だな……。
 絵描き……お前は、何でゴミを描くことに、こだわる?」
 現象は、いきなり香也の肩に手を置いた。
 香也は、首だけを現象に、向け、答えに詰まったように、
「……んー……」
 と、唸る。
 しばらくして、
「自分でも……よく、わからない……」
 と、口にした。
 その時の香也は、本当に困惑をした表情をしている。
「……そうか」
 香也の返答に関わらず、現象は、ひどく腑に落ちた表情になる。
「お前も……捨てられたのか。
 ぼくと、同じか……」
「……キミっ!」
 梢が、厳しい声を出して、現象に近づいた。
「本人の同意なしに……勝手に読んじゃあ、駄目でしょっ!」
 ……えっ?
 と、楓は、不審に思う。
 読んだ……って……何を?
「その本人でさえ、記憶の奥底に押し込んで、忘れようとしている記憶を、盗み見ただけだ」
 現象は、梢の剣幕にも構わぬ風で、うっそりと答える。
「本人が望まない限り……盗み見た内容を、伝えるつもりはない。
 そうか……。
 貴様とぼくは、同じ……廃棄物同士、だったんだな……」




[つづき]
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