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彼女はくノ一! 第六話(31)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(31)

 浅黄には、周囲の人が一口分くらいづつ取り分けてくれたが、酸味や辛味が強い味付けは駄目らしくかった。しかし、白身魚の香草蒸しはかなり気に入ったようで、何度かおかわりをしていた。もともと、はしゃぎすぎで体力が切れかかったところに満腹してしまったので、ますます眠そうにして、炬燵で横になってしまう。真理が毛布を持ってきて、浅黄の身体にかけていた。
 賑やかな食事が終わると、静流がみんなにお茶をいれてくれた。食事が終わっても、みんなして、しばらくおしゃべりをしている。最近、顔を合わせる機会が多い、ということもあるし、学校のこと、一族のこと、シルバーガールズやボランティア関係のことなど……共通の話題は、いくらでもあるのであった。
 新参の現象や舎人、梢は、神妙な顔をして聞き役に回っていた。まずは、情報収集に務めているらしかった。
 食後も、静流にお茶をいれて貰って、そんなおしゃべりがしばらく続く。

 そんな中、玄関の方で、
「……ただいま帰りました……」
 という、孫子の声がした。
 孫子は、まっすぐに居間に入ってきて、いきなり、
「……日本時間で昨夜未明、南米のホテルで、指名手配されていた、麻薬カルテルの大物が逮捕されました」
 と、告げた。
 その後、続けて、
「……そのホテルは、うちの系列の警備会社と契約していたわけですが……結論を述べると、これにより、ガクの、人相を判別するシステムの実効性が、証明されたことになります。
 今、同システムに関する資料請求や問い合わせが、世界中から殺到しています……」
 と、一息にまくしたてる。
 ガクが反応するのに、しばらく時間がかかった。
「……売れるの?」
「おそらくは」
 孫子は、短く答える。
「使えるものには、金払いがいい世界ですから……。
 ライセンス契約については、使用条件や価格など、専門家ともう少し煮詰めなければなりませんが……試験段階で、実用性が証明されたのは、スタートとして、かなり幸先が良いと思います。
 問い合わせ件数の何分の一かでも、実際の発注に繋がれば……俗な言い方をすれば、かなりの金額になります……」
 孫子の基準で「かなりの金額」とは、具体的にどれくらいの金額になるのだろうか……と、楓は思った。きっと、楓が漠然と想像しているより、ずっと多額なのに違いない……。
「……へぇ……。
 あんなのでも、お金になるんだ……」
 当のガクは、実感がわかないのか、そんなことをいっている。
「……要するに、視覚による、あいまいな認識を、システム化して、プログラムに移植しただけなだけど……さっきみせたモーションキャプチャも、似たような仕組みなんだけどな……。
 人の顔をみて、似てる、とか、似てないとか判断するのと、画像や動画から、こっからここが手、とか、足、とか、指、とか、判断させる、ちょっとの曖昧さも許容した処理系は、実は似たところがあったり……」
「……その、曖昧さを許容した判断をプログラムすることが、今まではとても難しかく……少なくとも、実用レベルでまともに動くものは、皆無に近かった、ということですわ……」
 孫子は、頷く。
「今後も、変なプログラムを作ったら、こっちに知らせなさい。
 応用や実用に関しては、一緒に相談して考えましょう……。
 そうですわね。
 何なら、この部門だけ法人化したほうが、税制上も有利ですし……何なら、その手続きも代行いたしますが……」
「うん。実用ね」
 ガクは、即座に頷く。
「あるよ。ひとつアイデアが。
 このシステムと安物のUSBカメラ多数をネットでつなげて、出来るだけいっぱいの、お店屋さんで使って貰うの。
 そんでね、万引きとかした人、しそうな人、挙動不審な人、それと、閉店時の強盗や窃盗犯なんかも、人相パターンを記憶して、自動でデータベース化して、全国とか全世界レベルでの防犯システムを構築するとか……。
 この間、夕方のニュースで、万引きとか軽犯罪が小さなお店やさんに深刻なダメージを与えているってあったけど……孫子おねーちゃんのおうち、警備会社もやってるんでしょ?
 もう、基本的な判別システムは完成しているわけだから、その程度の改良とダウンサイジングなら、そんなに手間がかからないけど……」
「……いいですわね」
 孫子は、頷いた。
「その場合、監視に使うカメラの解像度は……」
「そんなに高級な機種は、いらない。
 せいぜい、この携帯についているやつ程度でも、十分、顔を判別はできるよ……」
 ガクは、自分の携帯を取り出して、請け負ってみせた。
「……ここのカメラの解像度よりも、設置台数の方が問題かな、どちらかというと……。
 サンプル数が多ければ多いほど、データの信頼度も増すっていうか……」
「……それは、なんとかします」
 孫子は、真剣な顔をして頷いた。
「うちの系列にとっても、今まで未開拓だった分野へ参入する、いいきっかけになりますし……」
「一度、システムを構築しちゃえば、後はほとんど無人で運用できる筈だし……契約金は、できるだけ安くした方が、いいと思う。
 どちらかというと、余裕がなくて、まともな万引き対策ができないような、小さなお店が対象だから……」
「もちろん、それは考慮します」
 孫子は、ガクの言葉に頷く。
「月にせいぜい数万円で、全国規模の、万引き犯警告システムを利用できるとなれば……飛びついてくる顧客候補は、いくらでもいるでしょう」
「そうそう」
 ガクは、頷く。
「一度でもおかしな真似をすれば、全国で、顔が知れ渡る……っていう環境を一度作っちゃえば、ゲーム気分で万引きするような人たちも、いなくなると思うんだよね……」
 孫子は、居間から出て、廊下に何カ所かに電話をかけてから、ガクに、
「……この件が本決まりになりそうだったら、そのうち、うちの系列の技術者と、かなり込み入った話しをして貰います……」
 と言い残して再び外に飛び出していった。

「……けたたましくて、落ち着きのない女だ……」
 孫子がでていった後、佐久間現象が、ぽつりと呟く。




[つづき]
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