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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(297)

第六章 「血と技」(297)

 茅の息が整うのを待ってから、荒野は本格的に茅の髪を洗いはじめた。茅の提案により、荒野の分担になったこの仕事に、今では、荒野は、かなり熟練してしまっている。毎晩のように繰り返していれば、いやでも熟練する、というものだ。最近では茅が風邪を引くのを防止するため、茅はバスタブに入って貰ったまま、頭だけを外に出して、荒野が作業をするようになっている。茅の髪は長く、量も多かったから、丁寧に洗うと、すべての作業が完了するまで、かなりの時間を必要とするのだった。荒野自身は、この程度で風邪を引くほど柔ではなかったし、また、今夜のように、風呂に入ってから盛大にうちゃついた場合、茅に休憩を取らせるためにも、都合がよかった。髪を洗い終えるまでの間、お湯の中に浸かっていれば、否が応でも身体は暖まる。むしろ、逆にのぼせてしまわないか、心配になる。
 だから、茅は、荒野に髪を洗って貰っている間にも、両腕を湯の中から出したり、もっと身を乗り出したり、と、何度か姿勢をかえて、身体を外気にさらし、のぼせるのを防止した。
 小一時間ほどをかけて、荒野が慎重な手つきでトリートメントまですませ、最後にシャワーで茅の髪を流すと、今度は茅がバスタブの中からでて、茅が手早く自分の身体を洗っている間に、荒野が湯の中に入る。茅の身体の洗い方は、髪を洗う時よりはよっぽど素早く、簡便な動作だったが、それでも、長時間、裸で外にいた荒野の身体を暖めるのには、十分だった。
 そして、茅が自分の身体を洗い終わると、今度は、茅が荒野の身体を洗ってくれる。髪を洗って貰ったお礼……というわけでもないのだろうが、茅は、力を込めて荒野の背中を流したりする作業を、楽しんでいるようだった。ただし、茅が、荒野の全身を洗い終えるのに、洗髪をする時間を含めても、たしてかからない。最近、また伸びはじめているとはいえ、もともと荒野の髪はさほど長いわけではなく、シャンプーして流せば終わりで、茅の場合ほど入念な手入れを必要とするわけでもない。
 最後に、荒野の全身をシャワーで洗い流してから、再び二人で湯船に入り直す。風呂から上がってからも、茅の髪から湿気を取る作業に、また時間がかかるので、二人とも身体をよく暖めておく必要があった。
 これら、一連の作業は、もう何度も繰り返されてきたもので、一度はじめてしまえば、二人の動きにはいささかの遅滞も見られなかった。

 そして、二人は、もとのように、狭いバスタブの中で身体を密着させる。例によって、荒野の股の間に、茅が身体を割り込ませるような、格好だった。
「……荒野の……また、硬くなってる……」
 茅が、お尻をもぞもぞ動かして、荒野の硬直を自分の肌に擦りつける。
「はいはい」
 荒野は、軽く応じた。
 茅の髪を洗っている時などは、意識が別のところに集中しているため、荒野のそこは力なくうなだれているわけだが、こうした肌を密着させていると、どうしたって茅の存在を意識してしまう。
 荒野は、若い男性として、当然の反応だと思っていた。
「そういうのは、また後でな。
 まずは、暖まって、髪をちゃんと手入れしながら乾かして……」
 髪や身体を洗う前にいじりすぎたせいか、今日の茅は、普段にもまして、興奮しているようだ……と、荒野は思った。
 そう思っている荒野にしてからが、全裸の茅を目前にして、自制しきれなかった……という側面は、あるのだが……。
「髪のお手入れが、終わったら……今日は、日曜だから……」
 そういう茅の言葉は幾分、弾んでいた。
『……するのは、週末だけ……っていったの、おれだもんな……』
 今の生活を続けるためにも、どこかで一線を引かねばならない……という判断が、間違っているとは思わない。やはり、無制限に欲求を解放すること……に対しては、いくら慎重になっても、慎重にすぎるということはない……と、荒野は、今でも、思っている。
 荒野も、茅も……時折、欲望が強すぎて、自分たちで決めたその一線を、なしくずし的に無効にしてしまうことを、怖がっていた。
 だから、荒野は……このような時、ことさら、冷静な態度で、茅に接しなければ、ならない。
「明日の授業とかに、差し障りのない程度にな……」
 荒野は、できるだけ素っ気ない声をだしたつもりだったが……それが成功したのかどうかは、わからない。
 何しろ、荒野にしてからが……茅の中を貫いている時の感触を思い出し、分身を身震いさせ、硬度をさらに増しているくらいなのだ。
 荒野は、理性を総動員して、自分が茅に襲いかかるのを、自制しなければならなかった。
 必死で自制しなければ……このまま、茅の身体を前に倒してお尻を高く持ち上げ、そのまま、貫いてしまう。そういう衝動と、荒野は戦っていた。
 そうしても、茅は、いやがらないだろう。それどころか、歓迎するだろうが……一度、そうなってしまえば、荒野は他の何物も放り出して、際限なく、最後の破滅の瞬間まで、茅の肉に溺れてしまうだろう……という、かなり確実な予感があった。
 それほどに、茅との行為は、荒野にとっては甘美なものだった。
 茅も、荒野の欲望を見透かしたかのように、さらに背中を荒野の肌に密着させ、荒野の腕をとって、自分の前にまわす。そうすると、荒野の腕が、ちょうど茅の胸にあたるようになる。茅の乳房は、そんなに大きくはなかったが、張りと弾力はなかなかのもので、直接触れているだけでも、荒野の欲望を十分に刺激する。
 荒野の股間は、お湯の中で痛いほどに勃起していた。

 風呂から上がると、バスタオルで身体を丁寧に拭い、その後、荒野はパジャマ、茅はバスローブを着て、物置代わりにしている部屋に向かい、暖房をよく効かせる。そこには鏡台もあるから、茅の髪の手入れをするのに都合がよかった。
 再度、茅の髪をバスタオルでよく拭い、できるだけ湿気をとってから、二人がかりでブラッシングを施し、同時に、髪を痛めないように、慎重な手つきでドライヤーを使う。
 この日は、二人とも気が急いているのか、どうしても手つきが乱雑になる傾向があり、何度かお互いに注意しあった。後になって後悔するのは二人ともいやだったので、どうしても丁寧になる。

 ようやく、茅の髪が、なんとか乾くと、茅は鏡台の前から立ち上がって、背中にいた荒野に抱きついてきた。
 荒野は、茅に口唇を塞がれながら、手探りでドライヤーを片づけ、その後、茅を首にぶら下げながら、物置代わりの部屋をでる。
 この場で茅を抱き返して、床の上で犯したい……いや、犯しまくりたい……という欲望も、当然あったが、同じ行為をするのなら、やはり快適な環境でやったほうが、いい。
 ベッドがあるのは、どうせ隣の部屋だし、茅の体重なら、しばらく首にぶら下げていても、荒野にとっては、まるで苦にはならない。
 リモコンをとってその部屋の暖房を切り、灯りを消して、相変わらず荒野の口を貪っている茅を首にぶら下げながら、荒野は隣の部屋に移動する。
 茅の身体をベッドの上になげだし、乱暴な動作で茅のバスローブを左右に押し広げる。茅は少し、荒野から身体を話し、自分の身体にまとわりついたバスローブを脱ぎ捨てて、ベッドの脇に放り、再び荒野に抱きついてくる。
 荒野は、白く目を射る茅の裸体を楽しむ余裕もなく、茅に抱きつかれ、二人して、そのままベッドの上にもつれ合って、転がった。

 二人とも……相手が自分に、自分が相手に、餓えている……という事実を、当然のように、認識していた。




[つづき]
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