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彼女はくノ一! 第六話(40)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(40)

 香也と楓、それに荒野は、そのまま他の生徒たちに混ざって沙織と茅の講義を聴くことになった。当然、二年の荒野は沙織の、一年の香也と楓は茅の、と、それぞれの学年に別れることになる。
 今日の……というより、つい今し方に終わったテストの問題用紙を使用して、順番に解説や規範となる回答を説明していく。今日の試験科目は英語だったが、茅も沙織も、必要な時は、スペルをゆっくりと口で繰り返したため、板書きは必要なかった。多少の質疑応答はあるものの、基本的に、一年生と二年生が、二十名ほどのグループに分かれて茅と沙織を取り囲んで、その話しを静聴している感じで、集まった人数に比較すると、ひどく静かな場となった。
 テストの問題用紙だけを手にして、何のあんちょこや参考書も持たないで、口頭で淡々と詳細な解説をつけていく茅と沙織は、同じ生徒として、楓はどうかと思うのだが……慣れとは怖いもので、この場に集まった生徒たちは、そのことをあまり疑問に思っている様子がない。
 ……ここ最近、毎日のように、放課後になると行われる自主勉強会で、この二人が、同じようなことを繰り返している結果、少なくとも、自分の意志でここに集まってくるような生徒たちに関しては、茅たちのこうした行状も、見慣れて、不思議に思わなくなってしまったのだろう……と、楓は思う。

 香也と楓が駆けつけた時には、すでに最初の問題を何問か解説した後だったが、三十分ほどかけて残りの問題について茅が解説している間にも、玉木の広報アナウンスが何度か繰り返された。
 一通りの解説を茅が終わえた時、茅は、ちらりと時刻を確認してから、
「……十分間休憩をとって、もう一度同じことを説明するの……」
 と、宣言した。
 すると、茅の前に陣取っていた生徒たちが、隣りの生徒たちとなにやら話し合いながら、ばらばらと席から立ち上がり、退出していった。会話の内容は、はやり、テストの点数に関した内容が多かった。彼ら、退出した生徒たちの代わりに、香也や楓のように、後から来た生徒たちが、空いた前の席に進みはじめる。退出した生徒たちは、最初から茅の解説を一通り聞いた生徒たちなのだろう……と、楓は思う。

 一年と二年では、成績に関する感心や執着も違うのか、沙織が担当する二年生たちは、一年生よりも質問を出す頻度が多く、茅が全ての解説を終えても、沙織はまだ解説を続けていた。
 一年生は、退出する生徒と、新たに入ってきた生徒との入れ替えで、多少ざわついている。
「……あのう……」
 一人、目をつむって椅子に座って休んでいた茅に、楓が名前の知らない男子生徒が、遠慮がちに声をかける。おそらく、他のクラスの生徒だろうな……と、楓は思う。
「廊下に、まだまだ、受講希望者がいまして……。
 出来れば、場所を、別の教室に変えて貰えば……」
 茅が顔をあげ、楓も、茅の視線を追って背後に振り返る。
 今、退出していった生徒よりも多いくらいの一年生が、図書室内の椅子に座りきれず、後の方に立っていた。
「廊下に、まだまだ」いる……ということは、確かに、場所を移した方がいいだろう……。
「……分かったの……。
 どこか、適当な教室に……」
 茅がいいかけると、
「近くの教室を、もう押さえてます」
 茅に声をかけてきた男子生徒は茅にそう答え、芝居ががった仕草で、一礼した。
「では、曽根君。
 そこに案内をして」
 茅がいうと、「曽根」と呼ばれた生徒は、まじまじと茅の顔をみつめた。
「おれ……名乗ったこと、ありましたっけ?」
「顔と名前はできるだけ記憶しておいた方が、心証はよくなる……と、佐久間先輩にいわれたので、実行しておいたの」
 茅は、ことなげにそういってのけ、曽根という男子生徒は、困惑した表情をしてみせた。
 ……リアクションに困っているらしい……と、楓は、観察する。

 その曽根に先導され、茅と、一年生たちは、ぞろぞろと別の教室に向かう。
 放課後のこの時間ともなれば、部活で残っている生徒を除き、大半は帰宅している。つまり、どの教室もがらんとしている状態なので、図書室から一番近い教室を確保したようだった。そこに、一年生が、すでに集まっていた。座席は、半分以上埋まっている。
 教室に座っている生徒たちは、制服姿とジャージ姿が半々くらいで、ジャージ姿の生徒たちは、放送とか他の生徒たち経由のクチコミでここのことを聞いて、一時的に部活を抜け出してやってきたのだろう……と、楓は思う。
 茅が教壇に立ち、茅について図書室から移動してきた生徒たちが、空いていた後の席に座る。
 一通り、移動がすんで落ち着くと、茅は、携帯を取り出してどこかにメールを打った(おそらく、放送室にいる玉木への連絡だろうと、楓は思った)後、
「明日もテストがあるし、みんなも、早く帰りたいだろうから……」
 と前置きして、先ほどと同じようにテスト問題の解説を、最初から繰り返しはじめた。
 今度は黒板が使えたので、茅は、黒板に問題と解答を書きながら、話しを進める。茅は黒板を観ずに、生徒たちに向かったままで、口と手を同時に動かしていた。
 早口でテストの問題文をしゃべりながら、手だけを横につきだした姿勢で、しゃべるのとだいたい同じスピードで、今、話しているのと同じ内容の英文と和文を、黒板に書き出す……茅を、生徒たちは、目を丸くしてみている。
 茅は途中で何度か手と口を休め、「……ここまで、質問は?」と繰り返し、生徒たちに確認していたが、図書室での時とは違って、茅により詳細な解説を求める生徒はいなかった。
 どうやら……茅の異能を目の当たりにして、完全に、意識をそっちの方に持って行かれたらしい。

 香也と楓は、最初の数問について茅が解説を終えた時点で、つまり、試験問題について、一通りの解説を全て聞き終えた時点で、そっと席を立った。二人は、そのまま美術室に向かう。

 香也と楓が美術室につくと、有働が待ちかまえていたかのように香也に向かって近寄ってきて、ポスターの構図がどうの、色校正の都合がこーとのいいはじめる。
 他の放送部員たちも、機材を片付けて撤収する仕度をしているところだった。
 香也は、例によって「……んー……」と唸りながら、有働に向かって適当に相槌を返していた。
 香也にしてみれば、絵を仕上げた後の作業には、あまり興味がないのだった。
 しかし、有働は、「……せめて、本格的に印刷に出す前に、構成刷りをみて、意見だけはください」と食い下がり、香也に約束をさせて帰って行った。




[つづき]
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