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彼女はくノ一! 第六話(42)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(42)

 前半は、香也の絵を撮影作業していて、何かとばたばたと慌ただしく、香也と楓が来てからは、楓に釣られるようにして、楓と一緒になって香也の手際をしばらく観察してしまい……そこで明日樹は、最終下校時刻まで、もう一時間と少ししか、時間がないことに気づき、慌てて自分の絵に取り組みはじめた。その程度の時間、絵に取り組みはじめてしまえば、あっという間に過ぎ去ってしまう。道具の片づけの時間も考慮しなければならないから、なおさら、時間が不足する。
 明日樹は、現在、部活引退前の、最後の一枚に取り組んでいた。香也ほど、「絵を描く」という行為にのめり込んでいない明日樹は、三学期一杯の時間を使ってこれを書き上げてしまえば、後は受験が終わるまで、一年近い長い期間を、絵筆を握らずに過ごすことになる。その「節目」の絵を描くことができる時間も、もう残り少ない。
『……なのに……』
 と、明日樹は自嘲的に、思う。
『……何を、浮ついているんだか……』
 香也と「体験」して以来、明日樹は軽い情緒不安定に罹患している……と、少なくとも、本人は、思っている。
 具体的にいうと、部活の時、香也と二人きりになると、急に甘えたくなったり、香也が他の女性と二人でいるのを見ると、明らかに不愉快になる……など、明日樹は、比較的堅実な価値観の持ち主で、現実的な性格でもあるため、少し時間がたって我に帰ると、軽い自己嫌悪に陥るのが常だった。 
 もう……そういうことで、不安定になっていい時期ではないのに……とも、思ってしまう。
 また、競争相手の女性たちと自分を引き比べれば、客観的にみて、自分の方が、かなり分が悪い……とも、自覚している。また、それが軽い苛立ちの元になっていることも……。
 香也は、一心不乱に絵を描いている香也と、背中からその手元をのぞき込んでいる楓の二人をみて、二人に気づかれないように、そっとため息をつく。
 この二人は……細々としたことに気を取られがちにな自分に比べて、シンプルで、邪気がないな……と、そう思う。
 香也は例によって絵に夢中だし、楓は楓で、まっすぐに香也のことしか、見ていない。
 まったく、打算とか計算というものが感じられない二人の様子をみていると、邪念ばかりに自分が、また、疎ましくも思えてくるのだが……一方で、
『……どうして、そんなに……』
 無邪気に、無防備で、いられるのか……と、二人の純粋さを危ぶむ思いも、明日樹には、ある。

 最終下校時刻の予鈴が鳴る直前に、鞄を持った茅が、美術室を訪れた。
 時刻を確認し、
「もう、こんな時間か……」
 とかいいながら、香也と明日樹が、画材を片づけはじめる。
「今日、お迎えは……」
 楓が茅に尋ねると、
「双子は、引っ越しの準備に入ったから、今日は断ったの」
 と、答える。
 香也と楓が去った後も、茅は、何度かの休憩をはさんで、テスト問題の解説をもう一度、繰り返していたという。
「……よく、生徒がそんなに残っていましたね……」
 楓は、半ばあきれた。
 それだけ繰り返し、そのたびに、楓たちが参加した時のように、満席だったとすると……のべ人数でいえば、学年のうち半数以上が、茅の解説を聞きにきている勘定になる。
「……何人か、繰り返し、参加した人がいたし……それに、メールとかの口コミで、いったん帰ったのに、引き返してきたグループも、何人か、いたの……」
 それが本当だとすると……参加者の中の何割かの生徒は、純粋な向学心というよりも突発イベントを見逃さないように、という野次馬的な関心で、茅のことを見物しに来たのではないだろうか……と、楓は、予測する。
 普段のクラスメイトたちをみていても、勉強熱心な生徒の割合は、そんなに多くはいないように、楓は認識している。
「まあ……ご苦労様でした」
 とりあえず、楓は、茅のことをねぎらった。
 茅が苦労したのは事実だし……それに、茅にしてみれば、他の生徒たちがどのような心つもりで参加したのか、という部分には、あまり関心がないのかも、知れない。
「……行こうか?」
 楓と茅とが、そんなことを話している間に、帰り支度を整えた香也と明日樹が、声をかけてくる。
 全員で帰宅、ということになった。

 校門を出てしばらく行くまで、同じく学校帰りの生徒たちに挨拶をされることが多かった。ほとんどが、一年生だったが。
「さっきまで、一緒にいた人たち……」
 それら、向こうから挨拶をしてくる生徒たちに関して、茅が楓たちに説明をする。
「……佐久間先輩の方も、同じくらいに盛況だったの」
 それから、今日の様子を尋ねた明日樹に答える形で、茅はそう説明する。来年、受験生になる明日樹としては、やはり気になるらしい。
「佐久間先輩なら……そうでしょうねぇ……」
 学年はひとつ上だが、成績優秀、という噂は、明日樹の耳にも届いている。というより、この学校内で「絵に描いたような優等生」である沙織のことを知らない生徒は、ほとんどいないだろう。そうのような「出来すぎ」の生徒は何かと妬まれそうなものだが、沙織は裏表のない性格であり、誰が相手でも面倒見がいいので、疎んじる者もほとんどいないようだった。
 明日樹にしてみれば、三学期になってこの学校に通うようになった荒野や茅が、いつの間にか「その」沙織とかなり親しそうにしているのが、不思議といえば不思議だった。
 別に、知り合うことが、不自然とは思わないが……少なくとも明日樹は、荒野や茅が沙織とつき合うようになった契機について、何も聞かされていない。
 普通なら……こちらから聞かなくとも、登校の時などの話題に出てきそうなものだが……。
「……んー……」
 そんなことを考えている明日樹に、香也が尋ねる。
「それじゃあ、明日は、いくの?」
 沙織の、テスト問題の解説に……という意味だ。
「うん。行く」
 明日樹は、特に考えることもなく、答える。
 どのみち、今週、香也は掃除当番で遅れるのだ。成績に関わることだし、自分も、数十分、部活を開始するのが遅れても、支障はないだろう。




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