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彼女はくノ一! 第六話(50)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(50)

「……狩野君っ!」
 教室内にはいっていくらもしないうちに、有働が大判の紙を丸めたものを両手に抱えて香也たちの教室の中に入り、大股でまっしぐらに香也の席に歩いてくる。
 クラスメイトたちが、大柄な上級生の朝からの来訪に一瞬、ぎょっとして注視するのだが、すぐに進入してきた生徒が、顔を知っている有働であることに気づき、驚愕はすぐに好奇心にとって変わる。
 有働が放送部に所属していることは全校的に知られていたし、ことにこのクラスでは、香也や楓、茅がらみで出入りすることが多い。
 今度もまた、何か……という好奇心を持って、教室内にいた香也の同級生たちは、香也と有働の動きに注目した。
「……これ、昨日いっていた、ポスターの印刷見本です。
 チェックして、色とか修正した方がいい箇所があれば、いってください……」
 有働が、抱えてきた紙の束を香也の机の上に広げ、勢い込んで香也にそう声をかける。
「……んー……」
 ……どうしようか……と、香也は本気で悩んだ。
 そもそも、香也は、印刷見本の見方とは、修正の仕方とか……そういう知識が、まるでない。
 香也にしてみれば、「どうしようかな」、というより、「どうすればいいのかな?」というのが、まず、わからない。
「これ、随分……大きいんですね……」
 とりあえず、香也は、有働が広げたポスターの見本を指さして、当たり障りのないことを、いってみる。
「ええ。
 一番、大きいものは、全版になります……」
 有働は、そういって頷くのだが……香也には、その「全版」という用語からして、わからない。
「その……全版、って何?」
「紙の大きさの、規格です」
 有働が、すらすらと答える。
「A版とB版があって……その、キャンバスノートは、A4版になります。教科書は、一回り小さいB5版」
「……ええっ……と……」
 香也が、鈍い反応を返すと、有働はさらに続けた。
「つまり、この、B全版を、五回、半分に折り畳むと、教科書の大きさになります。
 A版とB版では、立てと横の比率が微妙に違うのです……」
 机の上からはみ出す大きさのポスターを、手で延ばすようにして広げながら、有働がいう。
「そ、それで……」
 身を乗り出して説明する有働に半ば圧倒されながら、香也は、肝心のことを尋ねる。
「ぼくは……何をすれば、いいの?」
「はい」
 有働はおおきくかぶりを振った。
「これ見て、色とか修正したいところがあったら、今のうちにいってください」
「あの……」
「……ちょっと、いい?」
 二人のやりとりをみて事情を理解した牧野と矢島
が、香也に声をかけてきた。
「よかったら、その……」
「下の方の見本、よかったら、こっちにも、みせてもらえる?」
 香也は、下の方にある身本の紙を、適当に掴んで二人に渡した。どのみち、香也が今すぐ目を通せる量ではない。
 牧野と矢島は、香也から受け取った大判の紙の束を、せがまれるままにみんなに手渡していく。
 楓や茅が手を伸ばしたのを皮切りに、有働が持ち込んだ見本は、瞬く間に教室内にいた生徒たちに回覧される。
「……あの……」
 楓が、遠慮がちに、有働に尋ねた。
「これ……印刷に出すというと、それなりに、お金がかかると思うんですけど……。
 それ、どうしているんです?」
「ええ、それです」
 有働が、頷く。
「半分くらいは、玉木さんのつてで、商店街の協賛、という形にして貰いましたが……。
 ほら、隅の方に、宣伝が入っているでしょ?」
 有働が、玉木の実家やその他の商店のロゴや電話番号が印刷せれている部分を指さす。
「でも、その程度では、ぜんぜん追いつかなくて……結局、才賀さんに立て替えて貰ってます。
 いずれ、シルバーガールズの方で利益がでる予定ですから、後で、そっちの方で補填するつもりのようですが……」
「……これ、原版は、フォトレタッチで作ったんですか?」
 続けて、楓が有働に質問する。
「だったら……そのまま、カラープリンターで出力しちゃう方が……」
「それも、考えました」
 有働は、またもや頷く。
「だけど……計算してみると、印刷屋さんに出す方が、結局、安上がりになったんです。
 枚数や発色の問題がありますし……それに、大判がプリントできるプリンター、確保するのも大変で……。
 それに、原版までこちらで作ってしまうので、意外にお金はかかっていないんですよ。
 印刷屋さんには、かなり無理をきいていただいているわけですけど……」
 近所の小さな印刷屋さんに発注しているのだが、そこへは、商店街のイベント関係も含めると、玉木経由からの仕事をコンスタントに出していることになる。いわば、お得意さんなわけで、そのこともあって、それなりに無理をきいてくれる……という話しだった。
「単価はともかく……ポスター数種類、というと、それなりの枚数になりますからね。
 あ。
 ボランティア関係の会計は、才賀さんの発案で、ネット上で公開しているので、そこにアクセスすれば、誰でも、見ることができます……」
 もちろん、現在のところ、支出ばかりがかさむ一方で収入源がないから、赤字が累積するばかりである。
「……はぁ……」
 いつの間にか香也の席に近づいてた委員長の羽田歩が、楓と有働の会話を聞いて、ため息をついた。
「なんか……知らないうちに、すごいことになっているんですね……。
 みなさん……行動力が……」
「……知らないうちに、ですか……」
 有働は、苦笑いを浮かべて羽田に答えた。
「ボランティア活動も、まだまだ、広報努力が足りませんね……」
「あっ。
 いえ……そういうつもりでは……」
 大きな体の有働が、いかにも悄然とした様子をしたので、羽田が慌てる。
「いえ。
 勉強会ほど、みなさんの関心を引く活動ではないですから、今の時点ではこんなものでしょう……」
 有働が大きく頷いた時、始業五分前を告げる予鈴が鳴った。
「……あっ。
 では、狩野君。
 これは全部見本だから、修正した方がいい箇所は、直接そのむね、書き込みをいれてください。できれば、赤字がいいです……」
 有働は早口で説明をして、足早に教室を出ていく。

 楓が、牧野と矢島の二人と一緒に、どたばたと教室中を駆けめぐってポスターの見本を回収して回った。
 三人が回収した見本を香也の机の上に集めた時、始業のチャイムが鳴り、ほぼ同時に、担任の岩崎先生が教室に入ってくる。
 日直が号令をかけ終わると、岩崎先生は、不審そうに尋ねた。
「……狩野君……。
 その、机の上のは……」

 香也は、しどろもどろになりながら、ホームルームの時間に、級友たちの前で、そのポスターやボランティア活動について説明するはめになった。




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