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彼女はくノ一! 第六話(64)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(64)

「……納得いかぁーんっ!」
 香也にしても、朝、教室って自分の席につくなり、口泡を飛ばして怒鳴られたのは、はじめての経験だった。
「……朝っぱらから、メイド眼鏡ロリと楓ちゃんと才賀先輩を一緒にぐるぐぐると回りやがってこの野郎!
 この町中の美少女を一人のこらず独占するつもりか! 誰でもいいから一人くらいこっちにまわせ! まわして、紹介してください、先生! 頼むから、お願いだから!」
 朝っぱらから香也の机の両手をついて身を乗り出して力説する柊誠二に、登校していた生徒たちが一斉に注目する。柊は、最初のうちこそ香也を非難する口調だったが、そのうち、懇願する口調に変わり、しまいには顔を伏せて肩を震わせはじめる。
「……んー……」
 香也は、どう反応していいのもか、しばらく思案したが、すぐに楓の方に顔を向け、
「こういっているけど……どうする?」
 と、尋ねてみる。
 香也の声に反応して、柊が顔をあげ、香也が声をかけた方をみて、ぎくり、と身体を強張らせた。
「……柊君……」
 困惑顔で苦笑いをしている楓の隣で、柏あんなが指の骨をポキリポキリと鳴らしている。その他に、このクラスの女子が、ほぼ全員、総動員で柊をは半円状に取り囲んでいた。
「向こうで、ちょっとお話ししましょうか……」
 幼少時から空手を習っている柏あんなが、凄みのある笑顔を浮かべて柊の首根っこを掴んで、教室の隅に引きずっていく。
 それから朝のホームルームがはじまるまでの約五分間、柊は、教室の後ろでクラスの女子に取り囲まれ、集中「口」撃を浴びて過ごすことになった。
「……正直で、素直すぎる。
 まるっきり……お馬鹿だ」
 その光景を目の当たりにした男子某は、実感の籠もった声で誰にともなくそう論評した。柊に対して下されたその評価は、香也を含め、成り行きを見守っていた男子生徒たち全員の気持ちを代弁していた。

 そういった椿事はそうそう起こるものではなく、その朝の小さな騒動を除けば、香也のその一日は昨日とほぼ同じことを繰り返す、平々凡々たる一日となった。
 つまり、内容こそ微妙に違えど、いつもと同じように授業を受け、合間の休み時間に有働が訪れる。校内の各所に香也の絵が飾られていることもあり、上級生である有働が頻繁に下級生の香也の元を訪れて詳細な打ち合わせてして帰って行くここ数日の光景も、このクラスの中の空気に、すでに馴染んでしまっていた。他のクラスメイトたちに、「香也は、そういう生徒である」という印象が、強く刻まれてしまった形である。
 だから、有働と香也が机の上に製作途中のポスターを広げ、それなりに白熱した議論を交わすようになっても、意外に思うものは少なかった。むしろ、「香也なら……」こういう流れも、納得ができる……と思っている生徒が、大半を占める。香也が有働にそういう扱いを受けていることについて、「意外」というよりは「やっぱり」という感想を持つものが多かった。
 三学期がはじまった時、多くの生徒たちが香也の家に来訪し、膨大な香也の絵を見ていった。地味で目立たず、あまり、他人としゃべりたがらない香也が、その実、黙々と絵を描き続けていることは、このクラス内では周知の事実であり……また、ボランティア活動のため、香也が依頼されて描いた絵が目立つ場所に張り出されたおかげで、現在は、その認識が全校規模に拡大されようとしている最中であった。
 口数が少なく、たまに口を開けばもごもごと不明瞭なことしかいわない香也も、こと、絵に関することになると、なかなか雄弁になっていた。多少は、印刷関係の用語や概念について知識を得たことで、勢いづいている部分もあったろうし、打ち合わせの際の有働の誘導がうまく、なかなか自分の意見を言おうとしない香也の本音を、巧妙に引き出している、ともいえる。

 その日の六時限目の授業も、実力テストに割り当てられていた。が、香也のクラスの生徒たちの間には、前日、前々日と比較すると、かなりリラックスした様子でテストに臨むことができた。さらに細かい補足をしておくなら、初日であった月曜日には、大半の生徒たちがテスト前にはかなり緊張していたものだが、火曜日、前日、今日……と、いくにしたがって、明らかに緊張がほぐれていた。
 放課後ごとの茅の講義が、徐々に奏功しているのだった。
 茅は、テストの範囲内から予想される出題傾向を勘案し、その中から、配点が大きそうな順に問題を予想し、みんなに教えていた。全学年の学習内容を丸暗記し、以前より自習のための教材作りをしている茅にしてみれば、そのあたりの目安はかなり明瞭に見えている。
 そして、茅に教えられた生徒たちは、テストの回数を追うごとに、茅の予測が確かであり、茅が指摘した部分を重点的に記憶すれば、効率的に点数を取れる……という確かな手応えを感じるようになっていた。一昨日、半信半疑で参加した生徒か昨日のテストで成果を確認し、その後、昨日の放課後には、どうしても外せない用事や部活がある生徒を除いて、このクラスの生徒のほとんどが自主的に残って茅の講義を聴いた。用事があり出席できなかった生徒も、後で学校のサーバ上にアップされた茅の映像を見たり、人づてに重点を教えて貰ったりしている。
 だから、この日、香也のクラスの生徒たちは、試験直前になっても、比較的余裕を持った態度でいることができた。

 最後の授業時間が当てられた試験とその後の掃除当番が終わると、昨日と同じように、撮影に必要な機材を抱えた放送部の部員たちが教室内に入ってきて、教壇にレンズを向けて三脚でカメラを固定した。
 この茅のと、それに、二年生の教室で行われている佐久間沙織の講義は、リアルタイムでネット配信される他、後でいつでも参照できるよう、学校のサーバ上にも動画データがアップされている。中継データは当然、編集されていないままだったが、茅や沙織が二つの講義を同時進行させたりしていたので、一晩の置くと無編集版の他に、放送部員の手により、わかりやすく編集されたヴァージョンの動画ファイルもアップされた。自宅にPCやブロードバンド環境がなかったりする生徒のために、そうした動画データをDVDーRなどのメディアに焼いて友人に配布したりする生徒も現れはじめている。
 また、放送部以外の一年生、二年生の中にも、撮影作業や編集などの手伝いを申し出てくる生徒が出はじめたのも、ここ数日の傾向だった。こうした生徒たちは、自宅から埃を被っていたホームビデオを持ち込んだり、学校のサーバ上にアップされた動画を編集して再アップしたり……といった活動を、自主的に行いはじめている。
 機材や人手は常に不足しがちだったので、こうした「手助け」は、誰もが歓迎した。




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