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彼女はくノ一! 第六話(76)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(76)

「……香也様ぁ……」
 小声でいいながら、楓は、香也の部屋の襖をそろそろと、開ける。
「入りますよぉ……」
 しかし、襖を開けて中に一歩踏み入れた楓は、そこで動きをとめた。
「……んー……」
 すでに香也は、パジャマも着替えて蒲団を片づけているところだった。
「……おはよぉ……」
 眠そうな顔をした香也が、楓に朝の挨拶をする。
「お……おはようございます……」
 楓は、複雑な心境で、挨拶を返す。
「毎朝、みんなに起こされるから……目覚まし、早めにセットして、できるだけ、自分で起きるようにした……」
 ぽやぽやーっとした口調で、香也はそんなことをいう。
 毎朝のようにあれこれされていたら、流石に身が保たない……ということを、ようやく悟った香也だった。
「そ、そうですか……」
 できるだけ残念そうな口調にならないように、気をつけながら、楓はそう答える。

 テン、ガク、ノリの三人は、今日は精密検査があるとかで、朝食が終わっていくらもしないうちに、茅と一緒に三島の車に乗り込んで出かけていった。
 孫子と羽生も、早々に出勤していき、香也は例によって、プレハブに籠もる。
 楓は、真理を手伝って食器の片づけや掃除、洗濯などをした後、珍しく手が空いてしまった。というか、真理が、
「……楓ちゃん、明日から試験でしょ?
 そんなに一生懸命、こっちの手伝い、しなくてもいいのよ……」
 といってくれたので、適当なところで家事を切り上げて、自分の部屋に籠もることになった。

「……勉強……か……」
 がらんとした部屋に自室に戻ると、楓は座布団の上にぺたりと座る。
 考えてみると、こうして一人きりになる時間を楓が持つことは、実に珍しい。この家に来てからも、なにかと賑やかなわけだが……それ以前に、一族の養成所にいた時も、あそこは楓と同じような境遇の子供たちが共同生活をしている場所だったから、一人になれる時間というのは、かなり、限られていた。個室を与えられたのだって、ようやく、この家に来てからのことで……。
 故に、楓は、自分一人だけで、周囲に他人がいない状況というのに、慣れていなかった。
「……勉強、しよう……」
 独り言をいって、楓は、折り畳み式の小さなテーブルを組立て、その上に、教科書やノート、筆記具などの勉強道具を広げる。
 英語や数学、物理関係は、ここに来る以前にある程度知識を仕込まれていたので、特に苦労するということもなかった。
 が、歴史や現代国語、古典、化学、生物などの知識は、学校に通いはじめてからはじめて触れたことになり楓にとっては、未知の分野であった。それだって、一日数時間、机に向かい続ければ、それなりに頭には入ってくる。それ以前の生活で、もっと厳しい修練に明け暮れた楓にとって、学校の勉強程度のことは、苦痛のうちに入らない。だから、それら、まるで予備知識がなかった教科についても、楓は、三学期に入ってからの短い期間で、一年間に学ぶべき内容のほぼすべてを、頭にいれることが出来た。茅ほど極端な記憶力はないものの、楓は努力家であり、同時に、きわめて真面目な性格でもある。また、香也の勉強を見るようになってからは、自分が学んだ知識を使って香也の手助けを出来る、ということも、楓のモチベーションを高める要因になった。
 だから楓は、学校内でのみ通用する基準に照らしあわせれば、かなりよい成績を取り、生活態度も真面目な規範的な生徒でもあった。ごく身近に、茅という、もっと完璧な優等生がいるおかげで、あまり目立たないのだが……楓自身は、あまり自分が注目されることを好まなかったから、それくらいでちょうどよかったわけだが。

 真理が、昼の用意ができたと告げに来るまで、楓は勉強を続ける。もともと、楓は、集中力がある方であり、一度集中してはじめると、時間の経過を忘れる。
「うちのこーちゃんも、呼んで来てちょうだい……」
 と真理にいわれて、楓は庭のプレハブに向かった。

「……香也様ぁ……」
 楓が、声をかけながらプレハブの中に入ると、キャンバスの上に身を乗り出して中腰になっていた香也は、入り口の楓の方に顔を向け、
「……んー……」
 と、生返事を返す。
 ……ああ。また、絵に入り込んでいたな……と思いながら、楓は、
「お昼、出来ましたよ。
 真理さんが、呼んでます」
 と、一区切りづつ、力を込めて発音する。
 このような時の香也は、心、ここにあらず、といった態で、思考能力が半ば以上、麻痺している……ということを、楓は、これまでの経験から学んでいた。
「……んー……。
 お昼……」
 香也は、のろのろと返事をし、目を瞬いた。
「……んー……。
 わかった……。
 行く……」
「駄目です」
 楓はそういって、ずかずかと大股で香也に近づき、香也の腕を取る。
 生返事をした香也を放置して一人で帰ると、かなり高い確率で、香也はまた絵に戻ってしまう……ということも、これまた経験上、楓は学んでいた。絵に向かった時の香也の集中力は、先ほどの楓の比ではない。
 真理も、結構鷹揚なところがあるので、声をかけても香也が動かなければ、一食や二食、香也が食事を抜かしても平然としている。だから、このような場は、多少、強引なことをしてでも、楓が香也に食事を摂らせなければならない。
「さ。
 早く片づけて、お昼にしてくださいぃ……」
 楓は、香也の腕を抱きしめ、珍しく甘えたような声を出して、ぐいぐいと引っ張る。
 香也は、
「……んー……」
 とか、うなりながら、
「今、少し、片づけるから……」
 と、もごもごと不明瞭な声でいう。
 端から見ていると、二人でいちゃついているようにしか見えないのだが、当事者である香也と楓には、そういう自覚はない。
 香也は、自分の腕に押しつけられる楓の胸の感触と体臭とに困惑した。あらぬ方向に目を反らし、楓の腕から逃れようとする香也の様子に、何を勘違いしたのか楓は、さらに身体を密着させる。
 しばらく、軽く揉み合っていたが、この手のことで香也が楓の相手になるわけもなく、そのままずるずると母屋に連れて行かれた。

 楓に腕を引かれて母屋に入った香也は、真理を含めた三人で昼食を摂る。
 食べ終わると、真理が何気ない口調で、
「……明日から、期末試験ね。
 楓ちゃんは午前中も勉強してたけど、こーちゃんは大丈夫なの?」
 といい出し、その言葉に応える形で、香也と楓は、居間の炬燵で一緒に勉強をすることになる。香也は一度プレハブに戻り、放り出してきた画材をきれいに整理してから、自室に教材を取りにいくことになった。
 何だかんだで、毎日のように教科書を開く習慣ができていた香也は、以前より、習う内容を理解していることもあり、こうして勉強することも、あまり苦にならないようになっていた。
 困るのは、こうして二人で勉強していると、隣に座っている楓が、ことさらに身体を密着させてくることだった。
 真理もいる手前、楓も誘惑とかそういう計算でやっているのではないと思うのだが……太股や脇に楓の柔らかい身体が押しつけれると、まだ若い香也は、身体がそれなり反応してしまうし、だからといって、真理もいるこの場でナニかをして発散するわけにも、不自然に席を立つわけにもいかず……。
 香也は、出来る限り熱心に、机の上に広げた教科書に目を凝らした。




[つづき]
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