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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(339)

第六章 「血と技」(339)

 結局、静流が荒野を離そうとしなかったので、二人はかなり長時間、結合したままだった。二度目の射精までは、静流が主導権を握って、荒野の上で蠢いていた。一度目の時のような急速な昂揚はなく、代わりに、ゆったりとした流れの中で、二人の情感を確かめ合うような交わりの果てに、いつの間にか精が漏れていた。
 膣内の感触で、荒野が放ったことを悟った後も、荒野の分身が力を失わないのをいいことに、静流は、上から荒野の胸の上に覆い被さって、ゆっくりと動き続け、荒野の口を塞ぐ。
 結合部周辺に、相変わらず痛みを感じていたが、それよりも、荒野から離れたくなかった。静流が動く度に、結合部で、じゅ、じゅ、じゅ、とか、たぷ、たぷ、とかいう水音が聞こえる。二度の射精と静流自身の愛液で、そこは必要以上にぬるぬるになっている。二人の体温でぬるくなっているため、あまり違和感を感じないていないだけだった。また、ぬるぬるになっているから、静流も、摩擦による痛みを回避できている。ぬるぬるの中心に荒野の硬直があり、その周辺を静流の肉が包み込んでいる、という形だった。静流の膣は、ほぐれてきた静流の心理を反映してか、最初の頃の硬直から解放され、やんわりと荒野を包んでいる。静流が口の中に舌を入れてきたことで、荒野と静流は、上下で結合しながらゆるゆると揺らめき続けた。

 二度目の射精から三度目の射精までは、一度目の射精から二度目の射精までにかかった時間の、倍以上の時間が必要だった。

 荒野が三回目の精を静流の中に放つと、昼をだいぶ過ぎていた。
 静流は、ようやく荒野の上から離れ、二人で時刻を確認してから、「……随分……」長いこと、睦み合っていたものだ……と、それぞれ、実際には言葉にしないまま、同じような感慨を持った。
 二人で裸のまま一階にある風呂場に降り、シャワーを浴びる。二人とも、汗をかいていたし、静流は、それに加えて局部が大変なことになっており、ざっと身体を流した荒野を風呂場から退出させた後、二十分ほどをかけて自分の内部を洗い流した。
 静流が身体を清めている間、荒野は自分の身体をよく拭いて乾かし、二階に上がって乱雑に脱ぎ捨てた自分の衣服を身につける。静流が脱ぎ捨てた服は、まとめて風呂場まで持って行き、静流に声をかけて踊り場に置いた。
 その際、静流に「二階で待っていてくれ」と声をかけられたので、荒野は素直に従い、長火鉢の上に置いてあった鉄瓶から湯呑みに白湯を入れて啜っていた。
 なにより、喉が渇いていたし、この季節、暖房も完備していない部屋では、火鉢に手をかざして暖かい飲み物を飲むくらいしか、暖を取る手段がない。今日はなにも予定がなかったので、静流と過ごす時間が長くなっても、荒野に不都合はなかった。
 しばらくそうして待っていると、バスタオルで髪をまとめ、バスローブに身を包んだ静流が二階に上がってきて、
「お、お昼、ここで食べますか?」
 と荒野に尋ねる。
「ご馳走になるのは、いいですけど……」
 荒野は、即座に答えようとして、言い淀んだ。
「食事は、静流さん、いつもどうしているんですか?」
 長時間、たっぷりと運動した後だから、腹は空いている。しかし、そういった目の前のことよりも、静流がこの家で、どういう生活をしているのか……といったことが、気がかりになってきた。
「ど、どうしている、って……自分で、普通に調理していますが……」
 この時、静流は、若干頬を膨らませて、不満そうな表情を浮かべた。
「わ、わたしが料理するのが、何か、おかしいですか……」
 どうやら静流は、料理の腕を疑われた……と、思ったらしい。
「いや、そういうわけでもないんですか……」
 静流の目のことを、面と向かって指摘するのも憚れるので、荒野は言葉を濁す。
「それじゃあ……なにか、一緒に作りましょうか?」
 自分の当惑を誤魔化す必要もあって、荒野はそう提案してみた。
「か、加納様も、お料理をなさるんですか?」
 今度は、静流が自分の偏見を披露した。
「そこそこ」
 荒野は頷く。
「半径五十キロ以内に誰もいない場所に、一人で何週間も過ごしたことがあったし……そうなれば、最低限の料理くらい、自然と憶えます」
 実際には、そういうシュチュエーションの時は、料理の材料を調達するところからはじめなければならなかったわけだが、そのことは、わざわざ静流につげなかった。
 荒野の返答を聞くと、静流は「……そ、そうですか……」と頷き、
「そ、それでは……一緒に、何か作りましょう……」
 といってくれた。

 冷蔵庫の中の材料をチェックして相談した結果、「オムライスを作ろう」ということになる。玉子と冷や飯が多めに残っていたからだった。
「……ひ、一人だと、多く用意し過ぎちゃって……」
 と、静流はいう。
 ここに来るまで、静流は一人暮らしの経験がなく、自分で料理する時も、たいていはまとまった人数分を作ることが多かった、という。静流の家とはつまり、野呂本家なわけで、身内の者が年中出入りしているような環境なのだろうか……と、荒野はそんな想像もしてみる。
 冷蔵庫に残っていた材料を刻んで冷や飯と炒め合わせ、ケチャップ・ライスを作り、オムレツを乗せる。そのほとんどの作業を、静流が手早く仕上げた。荒野がやったのは、ケチャップ・ライスを作る際、鍋を振ることくらいなもので、その手際の良さを目の当たりにした荒野は、静流が普段から自炊している、というのも、嘘ではなさそうだ……と、納得する。
 材料を刻んだりする作業はともかく、調味料の瓶などは、どうやって見分けているのだろうか……と、不思議にも思ったが、ともかく、静流の手際に遅滞は認められず、むしろ、たいていの健常者よりは手際がよいのではないだろうか……とさえ、思った。
 あっという間にできあがった二皿分のオムライスを二階に運び、そこで、二人で向き合って食事をする。
 あくまで、通常の大人の「一人前」であり、荒野にしてみれば、量的に少々物足りないくらいだったが、静流の味付けは文句のつけようがなく、荒野は素直に「おいしかった」と感想を述べることができた。

 食後に静流がいれてくれたお茶を飲みながら、荒野は、しばらく電源を落としていた携帯を立ち上げ、そこではじめて、留守電とメールが予想以上に溜まっていたことを知る。




[つづき]
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