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彼女はくノ一! 第六話(81)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(81)

 佐久間現象の身体データは、今回はじめて採取されたわけだが、ガクやノリほど突出した部分はないものの、それでも、記録を取っていた者たちを十分に感歎させた。現象の筋力や反射速度は、テン、ガク、ノリの平均値を少し上回る程度で、一族の平均値よりは、若干、高い程度。これ自体は、なんら記録者たちの感心を誘わなかったが、代わりに、現象の持久力や我慢強さ……例えば、「無呼吸で活発な活動が出来る持続時間」……に関しては、他の面子に比べて群を抜いていた。
 また、今回行われたテストでは実証することができなかったが、二宮舎人や梢の証言によると、負傷時の回復速度や「打たれ強さ」についても、現象は、群を抜いている……という。例えば、ここに来た当時、現象は佐久間の長によって半殺しに憂き目にあっていたのだが、通常の一般人であれば数ヶ月はベッドの上に縛り付けられ、ギプスをかまされているような大怪我をしていたも、僅か数日で、自力で起き上がれるようになっていた。また、この土地に移ってからも、現象は他の一族の者にオモチャにされている。毎日のように生傷を負わされてくるのだが、翌日には平気な顔をしてすっかり回復している。
 つまり、現象は、がりがりに痩せて見える外見に相反して、「非常にタフ」ということであり……以前、負傷して入院した時のガクも、通常よりよほど強靱な快復力を示したデータが残っていたので、記録を取っていた医師たちは、舎人と梢の証言を、素直に記録にとどめた。
 持久力に関しては……性差、ということが、真っ先に考えられるのたが、まだまだデータのサンプル数が少ない状態なので、判断自体は保留されている。

 茅とテン、ガク、ノリ、それに現象の五人は、素直に周囲の指示に従い、次々と運動能力の試験をこなしていった。時に、その合間に脈拍を測られたり、血液を採取されたり、パズルや計算問題を出されたりする。単調で、退屈な作業ではあったが……誰も文句をいわずに、淡々と提示されたタスクを消化していった。

「……今、小耳に挟んだところによると……」
 三島が、傍らにいる舎人に囁く。
「予想以上に……前の時より、スコアが伸びているって話しだな……」
 三島、舎人、梢らは、見物しているだけで何もやることがないので、退屈といえば退屈だった。この中で、茅たちの動向をかなり初期の段階から見守ってきた、加えて、医師免許と相応の医学的好奇心も持ち合わせている三島はまだよかったが、舎人と梢にとっては、楽しみが極端に少ないイベントであるといえる。
「……普通でも、あの年頃は、化けるからなぁ……」
 三島なりに、気を遣ってくれているのだろう……と、思いながら、舎人は返事をする。
 思い返せば……舎人自身の身体が大きくなりはじめたのも、今のあいつらと、たいして変わらない年頃のことだった……。
「成長期、ってのはわかるんだが……あいつらのは、極端すぎるからな……」
 三島も、珍しく真剣な顔をして、頷く。
「こっちも……いつまでフォローしてやれることやら……」
「少年易老学難成。
 一寸光陰不可軽」
 不意に、三島の隣から、きれいなアルトが聞こえた。
「……未覚池塘春草夢。
 階前梧葉已秋声……」
 三島だけではなく、舎人と梢までもが、驚愕の表情でその女性を見つめている。舎人は、ジャケットの内ポケットから、鉄扇を取り出して身構えていた。
 現在、この場所は……外部から出入りは、厳重に見張られている筈だ。
 相応の警戒をしている中、やすやすとそれを破り、なおかつ、なんの騒ぎも起こさず、舎人や梢にまで、その存在を感知させずに、この場に現れた人物が……ただ者である、わけがない。
「……ニーハオ」
 その若い女は、切れ長の瞳で、鉄扇を構えた舎人を見据え……にっこりと、微笑む。
 こんな場面でなければ、思わず見とれてしまうような妖艶さをたたえた笑みだった。
「……梢っ!」
 舎人は、その女性から目を離さず、梢に合図する。
 即応性や反射神経、瞬発力なら舎人の方に分があるが、長期戦になると、つまり、舎人が時間稼ぎをできれば、佐久間である梢は、どうとでも相手を料理できる。
 施術に時間はかかるが、一度相手をはめてしまえば、ほぼ無敵……というのが、舎人の「佐久間の技」に対する理解だった。
 しかし……。
「……哈っ!」
 舎人の背後で、その梢が、ふき飛ばされる気配がした。
 梢の短い悲鳴と、三島の、
「……おいっ!」
 という声とが、舎人の背後で響く。
 舎人が振り返るよりも早く……ごおぉっ、と、風が鳴った。
「……このぉぉぉっ!」
 そのすぐ後を、ガクの怒声が追いかけてくる。
『……馬鹿ども……』
 と、舎人は、内心で悪態をつく。
 おそらく、異変を察知したノリとガクが、真っ先に突進してきたのだろう。
 その心意気はともかく……。
『相手の力量も、目的もわからないうちから闇雲に突っかかっていくのは……』
 ……どう考えても、上策ではない。

 案の定……ノリの身体が、舎人の背後から、軽々と舎人の頭上を超えて、舎人の目前に落ちてきた。
 ノリは、器用に足を下にして、床の上にふわりと着地する。
「……あれ?」
 ノリは、怪訝な顔をして、小首を傾げた。自分の身に、今さっき何が起こったのか、判然としない……という表情だった。
 そのノリの背中に……。
「……うわぁっ!」
 目前の女性にはじき飛ばされたガクの身体が、ぶつかってきた。
 不意に背中を押された格好のノリは、一瞬、前のめりに床に潰れそうになったが、すぐに床に手をついて、体勢を立て直す。
「……えっ? えっ?」
 ノリの背中に弾きとばされたガクが、目を丸くしていた。
「……ボクが……力負けしたぁ?」
 舎人の目にも、突進していったガクの身体が、目の前の女性のふわりとした動きに、弾かれたように見えた。






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