2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(341)

第六章 「血と技」(341)

 荒野は、一通り、ジュリエッタとイザベラの事情とやらを聞き終えると、深々と息をついた。
「……出稼ぎと、興味本位に見物……か……」
 両極端の動機だな、と、荒野は思う。
「……ええと……イザベラさんは……」
「わしのことは、ベラでええ」
 イザベラは、そういって荒野に笑いかける。
 ……容姿と、イザベラが祖母に習ったとかいう方言は、見事なまでにミスマッチだな……と、荒野は思う。
「では、ベラ。
 住むところとか身分の保証とかは、そっちで手配して来たんだな……」
「そうじゃ。
 学生ビザ、とってきた」
 イザベラは、頷く。
「長期逗留が目的じゃからの。
 そのへんは、ぬかりない」
「……学生ビザ……」
 いやな予感を感じながら、荒野は聞き返す。
「……どこの学生に、なるつもりだ……」
 外見から言うと……イザベラは、孫子や楓と同じくらいに見える……。
「……今、この地方の教育委員会に手を回して、留学生を受け付けるように、手配しておるとこじゃ」
 イザベラは、にやりと笑った。
「……この国の、new termは、四月からじゃろ?
 時期的にも、ちょうどええ……」
 ……何もかも、手配済みかよ……と思いながら、荒野はさらに確認する。
「……つまり、おれたちの学校に、転入してくるつもりなんだな……」
「おうよ……」
 イザベラは、頷く。
「本当はもっと早うに来たかったのじゃが。
 ここまで細工するのに、思いのほか、手間がかかってしもうて……」
 ……どうやら、両親でさえ容易に連れ戻せないよう、かなり周到に計画しての家出らしい……と、荒野は納得する。
「……ヴィは……この二人のことを、どこまで知っていた?」
 荒野は、試しに尋ねてみる。
「何人かの姉崎が、こっちに向かっている、っていう情報はつかんでいたけど……」
 シルヴィは、肩を竦めた。
「この二人のことは、正直、掴んでいなかった……。
 ヴィが警戒していたのは、武闘派の三人で……」
 その時、荒野の携帯が鳴る。
『……ついさっき、だな。
 フー・メイだかホン・ファだかいう、姉崎が三人、テンたちに声をかけてきてな……。
 茅とか舎人とかが止めようとしたが、三人組と現象が揃って挑発にのっちまって……結構、えらい騒ぎになっている……。
 一応、人目を避けて、検査用に確保していた体育館の中で暴れてくれているが……』
 荒野が出ると、三島の声がまくし立てる。
「……ヴィ……その、武闘派の三人、というのは……Chineseか?」
「……Yes……」
 シルヴィは、真剣な表情で頷く。
「……年少ながら、本格的に功夫を積んだ、武術の達人ね……」
 シルヴィは、「武術」の部分を「ウーシェイ」と発音した。
「……どうやら、その三人が、うちの新種たちと接触しているらしい……」
 荒野は口早に三島と情報を交換しながら、その合間に知り得た情報を、その場にいる全員にも告げた。
 荒野が電話をしている間に、楓と孫子が立ち上がって居間を出て行き、ジュリエッタもセバスチャンに対して「例のものを」と囁き、セバスチャンは、無言のまま一礼し、静かに出ていった。
 それらを横目に見ながら、荒野は、三島から現在地の住所と向こうの現状を聞き出してから、通話を切る。
 荒野が携帯を切る頃には、ゴルフバッグを肩にかけた孫子と、外見上は変化がない楓が戻ってくる。
「……住所でいうと、そんなに、離れていない。
 おれたちなら、人目を避けても、五分もかからないだろう……」
 孫子と楓に、荒野はそう告げた。
「なんか……どうした加減か、検査をそっちのけで、ウーシェイの講習がはじまっちまったそうだ。
 三人娘と現象が突っかかっていくのを、新参の人たちがいなし続けている状態らしい。
 あんまり急ぐ必要もないかな……って気もするけど、万が一ってことがある」
「わ、わたしも……い、一緒に行きます」
 荒野がそこで言葉を切ると、静流が、即座に続ける。
「いや、この場にいる人たちは……だいたい、止めても来るんじゃないかな?」
 荒野は、そういいながら立ち上がる。
「土地鑑のない方は、ほかの人についてきてください。
 もちろん、気配は絶って……」
「ほれ。おんしもじゃ……」
 そういってイザベラが、素知らぬ顔でお茶を啜っていた香也の腕を掴んで、立たせようとする。
「……んー……。
 ぼくも?」
 香也は、イザベラに引き上げられながら、不明瞭な声をあげた。
 ……今まで、一族の関係者も何人かみてきたが、こういう強引さを持つ者に、香也ははじめて接する。
「……こげに面白かみせもん、滅多になか。
 加納の親分と同じ名を持つおんしが、こなくてどうする?」
 そういってイザベラは、邪気のない笑みを浮かべる。
「おんしにその気がなけりゃあ、わしがおんしを負ぶさって向こうまで運んでやるけ」
「……結構です!」
 楓が、イザベラの手から香也の身体をひったくるようにして、取り戻す。
「香也様の身柄は、わたしが運びます!」
「……わたくしたちが、運びます!」
 すかさず、孫子が横合いから口を挟み、楓と両側から、香也の両腕をがっしりと掴む。
 イザベラは一瞬、虚をつかれた表情になり、次の瞬間、破顔した。
「……よかよか」
 イザベラは、ひとしきり笑い声をあげた後、しきりに頷きながら、そういう。
「こりゃ……予想外の、楽しみじゃの……。
 加納の親分、ここは、ほんに楽しか場所じゃ……」
「……それじゃあ、いきます」
 荒野は、全員を見渡して、告げた。
 香也を除く全員が、荒野に向かって頷き返す。
 ……香也も、どんどん深みにはまっていくな……と、荒野は思った。

「……かなり飛ばしますから……怖かったら、眼をつぶっていてくださいね……」
 楓は、香也と肩を組みながら、そういう。
「眼も、ですけど……出来れば口も、しっかり閉じていてください。
 目立ちたくはないので、悲鳴はあげないでください……」
 香也の反対側の肩を組んだ孫子が、耳元でそう告げる。
「「……それでは……」」
 香也を両側から抱え込んだ二人は、同時に地を蹴った。
「「……行きます!」」
 ごおぉっ、と、眼をきつく閉じた香也の耳に、風鳴りが聞こえた。

「……なんだかんだいって、いつの間にか、仲がよくなっているな、あの二人……」
 荒野は、ひと塊に弾むように移動する三人にすぐ後に続き、さらにその後に、静流、シルヴィ、ジュリエッタ、イザベラが続く。
 静流については、目のことがあったから、こうした行程差のある屋根や塀を伝った機動行為は無理なのではないか……とも、荒野は思ったが、
「……加納様の足音を正確に追っていきますので……」
 と、静流自身がありそうな物腰で言い切ったので、その言葉を信用する事にした。
 実際に移動しながら、時折、振り返って確認してみると、静流は、器用にも、荒野が足をついた場所に、正確に足をかけて移動している。
 地上では、呼嵐の白い影が、静流の後を追って、飛ぶように駆け抜けていた。
 ……良く仕込んでいる……と、荒野は関心する。

 目的地であるスポーツジムに到着すると、すぐに、「警護を担当していた者です」といいながら、若い男が荒野に近寄ってくる。
「……中の様子は?」
 荒野は、短く尋ねる。
「変化ありません」
 男は、荒野に答えてから、荒野の後をついてきたイザベルやジュリエッタの顔を目線で追う。
「客人……姉崎の者、だそうだ……」
 荒野は、警護の者にそう告げる。
「……ドン・カノウ!」
 合流してきたセバスチャンから、一抱えもあるケースを受け取ったジュリエッタが、荒野に声をかける。
「この件……わたしに、任せてくれませんか?
 姉崎の始末は姉崎の手で!
 わたしの腕を、アピールさせてください!」




[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび


業界老舗の安心サイトでチャットレディ始めませんか?実績のDXLIVE!貴女にもチャットで大金が入る。
企業制服など「裏地付制服」に拘った着。20代の若くて可愛いORきれいな本物の素人モデルさん以外は起用しないと公言する完全オリジナル制服動画

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ