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第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(83)
「……次は、ぼくがいく……」
佐久間現象が、表情にありありと闘志を現し、前に進み出た。
三人の乱入者のうち、一番小さな、ユイ・リィが、現象の前に立ちはだかる。現象は、全体に細身で華奢にみえるが、その現象と比べても、ユイ・リィと名乗った少女は、格段に小さな体つきをしていた。
「……いくぞ」
ユイ・リィという少女から三歩ほどの間隔をあけた場所で、現象は立ち止まり、拳をつきだして構える。
「無茶ね」
現象の構えを一目みただけで、ユイ・リィは、一言のもとに切って棄てた。
「怪我をするだけね」
「怪我をするのは……」
……お前だ!
とか、叫びながら、現象は、ユイ・リィに向かって突進する。
ユイ・リィは、避けずに、突進してくる現象に向けて、踏み出した。
「……踏み込みと同時に現象の軸足を払う。
さらに同時に、こめかみに掌底。足を払うのとは逆方向に、頭部にダメージを与え、身体全体に横向きの力を与える……」
茅が、冷静な声で今の技を解説する。
現象の身体は、茅の言葉通り、横向きにきれいに回転していた。ぐんにゃりと、現象の身体から力が抜けて見えるのは、こめかみのあたりに打撃を受けた時点で、意識を失っているからだろう。
「……相手の攻撃が届く前に踏み込んで、同時に、数カ所に打撃を与える。
とても合理的な……攻撃と防御が一体となった、きれいな技……」
一連の乱入者の動きに共通する性質を、茅は、そう総括し終えた時、空中で回転していた現象の身体が、ぺちっ、と、音をたてて床に落ちた。
床に寝そべった現象は、うめき声を上げている。
「……流石は、姫様……」
フー・メイと名乗った、一番年長の女性が、呟く。
「我らの技の真価を、あれだけで見抜きましたか……」
「……あなた方の、目的は?」
茅は、フー・メイの目をまっすぐに見返して、話しかける。
「今、先生がここでのことを荒野に連絡しているの。もういくらもしないうちに、荒野たちが駆けつけてくる。あなた方がいくら強いといっても、荒野や楓たちを相手にして、無事で済むとは思わないの」
「命乞いをするでもなく……真っ先に、こちらの目的を聞きますか?」
フー・メイは、柔らかい微笑みを見返して、答える。
「あなた方の実力なら、わたしたちを圧倒できる。
その目的が、殺戮でも誘拐でもないことは、今、こうして話していることで証明されている……」
茅は、抑揚のない口調で続ける。
「……だとすれば、こうして話し合いの場を持つのが……それも、出来れば、荒野がいない場所で、わたしたち新種と接触するのが、あなた方の目的……と、そう、予測するの」
「……ご明察の通りです、姫様……」
フー・メイは目を細め、眩しいものを見るような視線を茅に送る。
「……たったこれだけのことで、そこまで推測できますか……」
「さらにいうと……普通の頼みごとや取引なら、荒野を通せばいい。交渉事は、加納の本領なの。
でも、こんな強引な真似をしなければならない必然性があった……ということは……こちらに相応のダメージを与え、現時点での実力差を、強く印象づける必要があったせいなの……。
そんな条件があり、なおかつ、荒野と接触する前に、わたしたちに接触しなければならない必然性……というものを考えると……考慮できる可能性は、かなり限定されるの……」
「……あっ!」
突然、テンが、声をあげる。
「……そうか!
そういうことなのかっ!」
「……なんだよっ!」
床にのびたまま、苦しそうにあえぎ続けていたガクの様子をみていたノリが、顔をあげる。
「勝手に納得しているなよ!
どんな理由があろうと、いきなりやってきて、ガクを、こんなにしていいって理由にはならないだろ!」
そういうとノリは、立ち上がり、六節棍を取り出して構えた。
「……今度は、ボクが行く!
相手は誰っ! 三人、いっぺんにでもいいよ!」
その言葉が終わらないうちに……ノリが、増殖した。
「……ヘン・ハオ! ヘン・ハオ!」
三人の中で最年少のユイ・リィは、ノリの猛攻を余裕で回避しつつ、両手をぱちぱちと叩く。
「……これ、野呂の技ね!
はじめてみたよっ!」
素直に驚きの声を上げているが……ユイ・リィは、今や二十人以上に見えるノリの、六節棍による攻撃を、ことごとくかわし続けている。
ただでさえ、突く、打つ、払う……と、棍による攻撃はバリエーションが多く、攻撃を予測するのは、かなり難しい。ノリが操る六節棍は、加えて、関節部を、カーボン・フィラメントに取り替えていた。強靱さも折り紙付きだったが、これは、何より視認しにくい代物で……剥き出しの皮膚に絡んだ上、ノリたちの力で横に引いたりすれば、人間の皮膚など、ざっくりと簡単に裂くことができる。
しかし……今では二十名以上に見えている、ノリによる、全方向からの同時攻撃を受けても……ユイ・リィは、平然とかわし続けた。
「……嘘、だろう……」
舎人が、愕然とした表情で、間の抜けた声をあげる。
これだけの分身攻撃を見るのも、舎人は初めてだったし、それを、背後や死角からの攻撃を含め、最小限の動きで、難なく、ことごとくかわし続けるユイ・リィの身のこなしも……舎人の理解できる範疇を、遙かに超える。
全身、全包囲に向けた「目」があるとしか思えない、動きだった。
「……でも……」
茅が、冷静な声で、ノリの攻撃を評する。
「こんな派手な動き……そんなに長く続くわけ、ないの……」
茅の言葉通り……ノリの分身は、すぐに数を減らしていった。一度人数が減りはじめると、ノリの人数は、すぐに半分、さらに半分……といった具合に、加速度的に減っていき……しまいに、たった一人に戻ったノリは、荒い息をついて、その場に膝をついた。
ノリは、顔中に玉の汗を浮かべて肩を上下させており、疲労のため、分身を維持することは……もはや、出来そうもない。
[
つづき]
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