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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(343)

第六章 「血と技」(343)

 ジュリエッタが両手に持ったのは、刃渡りが自分の身の丈ほどもある、細身の直剣だった。諸刃で、刃が直線状になっている、典型的な西洋のSwordだったが……ただ、幅が狭く、縦に長い。
 あれでは……バランスが悪い、どころではないだろうな……と、荒野は、ジュリエッタが構えた剣をみて、そう疑問に思った。
 いくら、細長いといっても、金属の塊である。二メートル弱の棒状の金属を、片手にひとつずつ持つことを想像してみればいい。いわゆる、「日本刀」も、一部の例外的なものを除いて、刃渡りは六十センチから八十センチほどで……刃渡りが一メートルを超えるものは、ごくごく少ない。祭祀に使うものや儀礼用、それに、ごく希に、野太刀と呼ばれる長大な刃を持つ刀を実用する者もあったようだが……そもそも、人間が使う道具には、適正な重さや形というものがあり、自分の身長ほどの刃渡りを持つ剣……などという代物は、どのような観点から考えても、取り回しに苦労するだけの「無用の長物」なのだった。
 そんな、「異形」の武器を両手にひとつずつ構えて、ジュリエッタは微動だにしない。それどころか、満足そうな、余裕のある笑みさえ、浮かべている。
 ……こうして、剣を構えている姿が、本来の自分だ……とでも、いうように……。
「……オンビンにぃーできない人はぁー、ジュリエッタが斬り刻むねーっ!」
 いきなり、ジュリエッタが脳天気な口調で叫んだので、荒野は、頭を抱えた。
「……何だよ、それは……」
 ジュリエッタの執事だと自称するセバスチャンなる人物が、荒野に「ジュリエッタは、日本語が不得手である」うんぬんとフォローをいれてくれる。
 どうやら、ジュリエッタは、荒野が先ほど口にした、「穏便に」という単語の意味を理解しておらず、何となくノリだけで反復しているらしい……。

 両手に剣を構えたジュリエッタに向かって、「武闘派の姉崎」たちのうち、一番年長の女性が、無造作に近づいていく。
 茅やテンが、その女性と何やら話していたようだが、少し距離があることもあり、また、荒野の周囲にいる三島や孫子、イザベラなどが、いっせいにおしゃべりをしはじめたこともあって、荒野にはその女性と茅たちが何を話したのか、聞き取ることができなかった。しきりに、「ムサシ」とかいう単語が荒野の耳にも入ってくるが、時代劇にも日本のサブカルチャーにも詳しくない荒野は、その人名がどういう意味を持つのか、まるで理解していなかった。
 その女性は、動きやすい、カジュアルな服装をしているが、取り立てて目立つ外観をしていなかった。強いていえば……その表情が、外見から判断出来る年齢と比較して、ひどく静かだ……ということに、違和感を憶える。
 どこか老成して達観したように見えて……その実、裡に、ひどく強靱な芯を持っているような、面構えをしていた。現代の日本で、そのような表情を持っている若い女性は、当然のことながら、少数派だ。
 出来る……な……。
 というのが、はじめて見るその女性に対する、荒野の印象だった。
 単純に、戦闘能力に秀でいている……とかいう、表面的な差異のみではなく……もっと内面的な部分からして、この人は、成熟している……。

 武器らしいものを何も持っていないのにも関わらず、その女性は、無防備にもジュリエッタの目前まで、無造作に歩いていく。
 ひどく長い剣を構えたジュリエッタの攻撃圏は、当然のことながら、かなり広い。腕を伸ばせる範囲も考慮すれば、半径にして二メートル半以内にあるものは、余裕でぶった斬ることが可能な筈だ。
 事実、ジュリエッタは、躊躇することなく、二つの白刃を、その女性に向けて振る。流れるような自然な動作だったが、荒野の目には、力も勢いも、十分に乗った……人間の胴体など、簡単に両断できるだけの斬撃だということが、見て取れた。
 それも、二振りの剣を、左右から同時に振るっている。普通に考えれば……その間にいる女性は、次の瞬間には、絶命している攻撃だった。
 しかし、その女性は、眉ひとつ動かさずに、ごく単純な動作で、自分の死を回避した。
 刀身が自分の肉体に触れる前に、人差し指で刀身の腹を上に押して、あらぬ方向に、斬撃を逃す。
 十分に勢いの乗っていた攻撃を逸らされたジュリエッタも、それで体勢を大きく崩す……ということはなく、一度振り抜いてから、素早く腕を戻してもう一度、その女性を攻撃した。
 しかし、ジュリエッタが何度同じ攻撃を繰り返そうとも……その女性は、汗ひとつ流すことなく、平然と、その攻撃を指一本で逸らしてみせる。
 恐ろしいのは……その女性が、ジュリエッタが振るう剣を、目で追っていないことだ。
 どうやら……音やジュリエッタの腕の動きをみて、剣の軌跡を読んでいるらしい……と、荒野は、しばらく観察した末、結論する。
 ごく短い時間内に、ジュリエッタは両腕をフルに駆使して、その女性を攻撃し続けた。ムキになっている、というのとは、少し違っていて……ジュリエッタは、自分の攻撃を無効化する存在を目の前にして、満足そうな笑みを浮かべている。
 ……あっ……。
 と、荒野は思う。
 ジュリエッタが浮かべている笑みに、心当たりがあった。
 あれは……ある種の者が、自分よりも強い者に出会った時に浮かべる……会心の、笑みだ。
 ある種の者……つまり……常に、自分よりも強い者と戦うことに飢えている者、特有の……どう猛な笑みを、ジュリエッタは浮かべていた。
 荒野は、今までに何度か、そういう「苦戦するほど気分を高揚させる」タイプの、「戦闘中毒者」に、出会ったことがあった。
 つまり……ジュリエッタとは……そういうタイプの人間だ……と、荒野は結論する。

 ジュリエッタの攻撃を避けながら、その女性はじわじわとジュリエッタに肉薄していた。ジュリエッタは、休む間もなく双剣を振るうので、前進するスピードは、ひどくのろのろとしたものではあったが……それでも、これだけの猛攻に晒されながら、退きもせず、傷ひとつ追わずに前に進んでいる……というのは、十分に賞賛に値する……と、荒野は思う。
 何しろ……その女性は、「素手」、なのだ。
 ジュリエッタとの間合いを詰めると、その女性は、なんの予備動作も行わず、いきなり、ジュリエッタに襲いかかった。
 その女性の背が、一瞬にして二割ほど縮んだかと思うと、次の瞬間には、弾かれたようにジュリエッタに殺到している。
 ジュリエッタは、すんでのところで背後に大きく跳躍して、難を逃れた。
 その女性の、全身のバネを使った攻撃を、ジュリエッタがすんでのところでかわすと、その後に、ようやく「ごぉっっ」っと周囲の空気が鳴る。
 ジュリエッタの額から、一筋の血が、流れ落ちた。
 その女性の、手足による攻撃は、辛くもかわしたものの……その時に発生した空気の動きが、ジュリエッタの額の皮膚を、浅く切っていたのだった。
 ……勘がいいな……と、荒野はジュリエッタを評価する。
 ともかくも、あの攻撃を避けることができたのは……十分に、評価に値する……と、そう思った。




[つづき]
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