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隣りの酔いどれロリおねぇさん (2)

隣りの酔いどれロリおねぇさん (2)

 その三島百合香さんを次に見かけたのは、その引っ越しの日から二週間くらいたった、週末の夜だった。ぼくにしては珍しく、職場の同僚と居酒屋で軽く飲んだためぎりぎり終電で帰ってきたぼくは、マンションの共用部分の入り口を塞ぐようにうずくまっている塊を見つけた。はっきりいって邪魔だったので、一瞬、けっ飛ばしてみたい衝動に駆られたが、その物体が「んんんん」とかいう呻き声を上げたので、とりあえずやめておいた。
 近づいて、よくよくみてみると、その物体は、寝ころんで、一升瓶を抱えて丸くなっている三島百合香さんだった。
「あー。あんた、うちのお隣の、あー。なんとかさんでひょ」
 彼女のほうもぼくに気づいたようで、声をかけてきたが、顔が真っ赤で呂律が回っていない。一応スーツ姿だが、その上に汚れの目立つ白衣をひっかけているから、町中でみかけたら、けっこう危ない人かも知れない。
「……こんなところでなにやっているんです。三島さん」
「あのね。開かないの。これが」
 といって、入り口の暗証番号キーを指す。
「故障ですか?」
「わかんないけどね、わたしがやるとね、開かないの。この、意地悪!」
 と、突然叫んで立ち上がったかと思うと、何メートルか後退し、「えやー!」と奇声を発して、入り口の支柱に跳び蹴りをかました。もちろん、金属製の支柱を蹴ったところで、ダメージを受けるのは人間のほうである。
 案の定、彼女は、自分のつま先を手でもって、「いてててて」といいながら、地面に横たわり、そのあたりをごろごろと転げ回った。

 ……いくら酔っているとはいえ、大の大人がやることかよ……。

「ああ。ああ。絶対大丈夫ではないと思いますけど、一応儀礼的にお聞きします。
 ──大丈夫ですか?」
 ぼくは三歩ほどの距離を詰めて、彼女に手をさしのべる。彼女は「いったーい」といいながら、自分のお尻をさすっていた。足を大きく開いているためスカートの中身が丸見えだっただが、彼女の外観も言動も、どうみてもお子さま並だったので、そこにリビドーを感じるということはなかった。っつうか、彼女にはあまりにも色気がなさすぎる。
「ありがとーおにーさん」
 彼女は、子供のように無防備な笑いを見せ、ぼくの手をとって、よっこらしょ、とかけ声をかけて立ち上がった。
「ごめんなさいねー。今夜はちょっと酔ってて」
 これが『ちょっと』というレベルですか? と、小一時間ほど問いつめたくなる。
 普通にたっているだけでもフラフラしているのは、酔いと先ほどの跳び蹴りのダメージによるものと思われた。

 フラフラしている彼女の肩を、近くの壁に預けて、ぼくはマンション共同入り口の暗証番号を素早く入力した。あっけなく、ガラス製の自動扉は開いた。
「あれ。あれれ」
 彼女は目を丸くした。
「なんでぇ? どうして? ずっるい。わたしがやると開かなかったのに」

考えられる原因一。酔っぱらった彼女が、間違った暗証番号を押していた。
考えられる原因二。酔っぱらった彼女は、手元がふらついて正確にボタンをプッシュできなかった。

 そのほかいくらでも原因を予測できたが、それらを列挙してもなんら益があるとは思えないし、かえって彼女を刺激し、逆上させるだけの結果に終わりそうな気がするので、その点には触れず、「部屋まで自分でいけますか?」と、訊いた。
「いけない。あるけない。おんぶして!
 おんぶしてくれなければ泣いちゃうぞ。わめいちゃうぞ。『レイプされるー』って大声だして、警察にも電話しちゃうぞ」
 ……養護教諭とはいえ、仮にも「学校の先生」がそういう脅迫行為をおこなっていいものでしょうか?

 こんなことで夜中に騒ぎたてられてられるのも馬鹿らしいので、素直に背を向けた。ぼくの背中に乗った彼女は、いっこうに自分自身の体重を支えようとせず、それどころかセックスアピールのつもりなのか、ぐりぐりと胸を背中にこすりつけるような真似さえする。
 そんな平坦な胸こすりつけられても、こっちは肋骨がぐりぐりする感触を感じるだけで、ぶっちゃけ痛いだけです。
 彼女自身は驚くほど軽かったが、ほとんど中身が減っていない「清酒美少年」というラベルの張った一升瓶も同時に持ち運ぶことを強要されたので、むしろそちらのほうで難儀した。

[つづき]
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