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髪長姫は最後に笑う。 序章 (4)

序章 (4)

 話しがそこまで進むころには、老人が「加納家」とか「一族」という言葉を使うとき、通常とは違う意味合いが含まれていることに、気づいていた。
「一族」に、固有名はないという。「加納家」は、一族を代表する血族で、代々、多くの頭目を輩出してきた名家だそうだ。その時々の頭目は、同世代の人材の中から、もっとも抜きんでいる能力を持つものが選ばれる、とかで……るって、いまどき、そんな「頭目」を必要とする、無名の一族ってのも、今わたしの傍らでにこやかに話しを続けている老人の実直そうな印象とは反対に、かなり、胡散臭い。

「わたしらの一族はかなり特殊な存在でしてね。
 何十代か前のご先祖さんの頃から延々何百年も、ある種の稼業を請け負っていまして……なに、人間が社会を形成して生きている限り、決して廃れない稼業です」
 そう前置きして、加納老人は、「自分たち一族は、世襲の戦闘プロフェッショナルなのだ」という意味のことをいった。「自分は加納家の、現当主であり、同時に一族の頭目でもある」とも、つけ加える。
 ……正直、聞いていて、途中から頭がクラクラしてきた。なんで、どんどんトンデモな方向に話しが転がっていくのか。この老人、みかけによらず、ピーな方なのか? でも、そうな人を恩師の先生がわざわざ紹介してくるわけないしなぁ……。
 そう、思い直し、もう少し、三流劇画じみたお話しを拝聴することにした。
「とはいっても、正規軍に組み込まれる傭兵ではなく、諜報や情報攪乱が一番得意なんですがね。何百年か前は、草とか素破、乱破とか呼ばれていたそうです。
 どちらにせよ、あまり表だって吹聴にできる稼業ではないことは確かですが……」
 どこかに隠しカメラが隠してあるのではないかと、わたしは、急いであたりを見渡した。
 よりにもよって、ザ・ニンジャときたよ。「現代の闇に生きる続ける忍者軍団」……だとぉ?
 ここまでいくと、三流劇画を通り越して、伝奇小説かライト・ノベル、もしくはアニメか、はたまた、ハリウッドのC級低予算映画の世界だ。

 だが、隠しカメラと「大成功!」とか書かれた看板、ならびにそれを担いだレポーターはどこにも見あたらず、どこからも現れない。
 傍らに座る加納老人の態度は、きわめて真摯に思えた。
「まあ、いきなりこのような事を信じろ、といっても無理でしょう。
 今回の会見はこれまで、ということで。これ以上、われわれにおつき合いいただけるようなら、さっきの名刺の番号にご連絡ください」
「ちょっと待って! 一つだけ!」
 わたしは、急いで加納老人を引き留めた。本当は一つどころではなく、聞きたい疑問点は山ほどあった。が、その中で、一番気にかかったことを、問いただす。
「計算が、あわない。加納仁明とあなたとの年齢差が、ありすぎるわ。
 いったい、あなたが何歳の時に生まれた息子?」
「ほほう」
 加納老人はにやりと笑った。不適な、名乗った通りの、「忍者の頭領」に似つかわしい、不適な笑みだった。
「やはり聡明な方だ。そう。仁明は、わたしの孫です。その息子である荒野は、曾孫ということになりますな。
 あなたと同じで、わたしも年齢通りにみられることが少ないので、こと年齢に関する話題に限り、こういうどうでもいい、細かい部分については、適当に誤魔化すのが習いになっているんですよ」
 加納老人は、とても自称する「大正生まれ」とは思えないキビキビした物腰で、伝票を手にして、席をたった。
「もし先生がお断りになっても、今日、お時間を割いていただいた分のお礼は、振り込ませていただきます。
 それでは、また。ご縁があったら、お会いしましょう」
 そういって狐にでも担がれたような気分のわたしを残して老人は去り、一回目の会談は終わった。

 数日後、わたしの口座に「冗談では済まされない」金額が、振り込まれ、わたしは今後の身の振り方について、真剣に考えることになる。

[つづき]
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