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彼女はくノ一! 第一話 (7)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(7)

 冒頭から昏倒したままで、まるっきり存在感のない我らがヒロイン、松島楓嬢が目を覚ましたのは、昼過ぎになってからだった。
 気がつくと布団の中に寝かされており、なにやら賑やかな、というか、賑やかすぎる、「今や宴たけなわ」的な、ハイ・テンションの人声が聞こえてきて、それで目が覚めたわけだが……。
『……ええっとぉ……』
 当然のことながら、松島楓は、今、自分が置かれている境遇、というものが理解できなかった。
『……たしか、わたし、ボールペンに足を取られて、落ちて、たぶん、そこで気を失って……布団に寝かされている……ということは、誰かに介抱されているということで……』
 ここまで「これまでの経緯」を推測を交えて思い返したところで、跳ね起きたくなった。
 任務遂行中の忍は、無関係の他者にその姿をみられてはいけないのだ。
 が、すぐに、「ここに寝かされている」、という時点で、介抱してくださった人には忍装束の自分の姿を既に見られているわけで……。
 今更跳ね起きたところで、現状に対処できるなにか有効な手だてが打てるわけでもなし……。
 松島楓は、自分を介抱してくれた恩人を口封じしよう……と、即座に判断するほどには、非人道的にはできていない。そうした「甘さ」以前に、平然と「忍装束を人目にさらす」という失態を犯してしまうドジっ娘属性が「評価」されて、ほぼ同年代だという『加納茅』の世話役という、毒にも薬にもならないお役目を仰せつかったわけだが……。

 松島楓自身はあまり自覚していなかったが、「忍としては役立たず」、「見ていて飽きない道化」、というのが、松島楓への周囲の評価であり、そうした、他の任務には圧倒的に向いていない人材も、「加納茅を笑わせる」というかなり特殊なミッションにおいては、なにかしらの一助になろう……そう判断されて、(もちろん、ぜんぜん期待されずに)その土地に派遣されたのだった。
 ごく端的に一言でいうと、「やっかいばらい」。松島楓の忍としての無能さは、能力不足(彼女の身体能力的なスペックは、同年代の仲間と比較しても、決して劣るモノではなかった)というよりも、どこまでもお人好し、かつ、ここぞというときに派手な失敗をしでかす通称「ドジっ娘属性」、それに彼女の「天然」ぶりにあった。
 素直で、明るくて、嘘をつくのが下手で、考えていることがすぐに顔に出る……という松島楓の性格は、この年頃の少女としてはともかく、忍としての適性的には、とことん問題がありすぎた。

 加えて、彼女の、すさまじいまでの「天然」ぶり。
 なんで今時、訓練地の村からこの市まで、何十キロもある道のりを、自分の足で走って行かなければならないのか。普通なら、例え一族の者でも、公共の交通機関を使うか、十八才以上であれば、自分で車を運転していく。
 そうした、たかだか「普通の移動」をするだけのことでも、彼女は「公式な任務だから」と、古式ゆかしい装束に身を固め、徒歩でいく、という、百年以上昔と変わらない、つまり、現代では目立って目立ってしょうがないスタイルを、平気で採用する。
 こういう判断をしてしまう、彼女の思考回路を「天然」と評するのは、かなり的確な評価である、とされた。少なくとも、彼女を使う側の人たちの間では、誰もその評価に異議を唱えなかった。

 で、体よく厄介払いされ、しかもそのことをまるで自覚していない彼女は、空腹と闘いながら、今、自分が置かれた状況を把握しようと、無駄な思考を重ねていた。そうこうする間にも、どこからか、ものすごくおいしそうな、なにかを煮ている匂いが漂ってきて、昨夜からなにも食べていない彼女の胃袋を刺激する。きゅるるるる、という、可愛い音が、お腹の辺りでする。
『たんたかたんか、たんたーん』
 アカペラで「タブーのテーマ」を歌う女の声が、二人分、聞こえる。

 あれから、狩野真理と三島百合香の二名は食材その他の戦利品をどっさり持ち帰り、まだ日も高いというのに、そのまま鍋の用意をし、三島百合香がしこたま上等な酒類を持ち込んだこともあって、すぐに宴会になだれ込んだ。
 加納真理は、思わぬ臨時収入があったので、かなりご機嫌だった。
 三島百合香と羽生譲は、それぞれ性格は違うが、元々異様なまでにノリがいい。
 酒が回り始めると、すぐに、
「一番! 三島百合香、脱ぎマース!」
「おー!」(拍手)
「二番! 羽生譲も、脱ぎマース!」
「おー!」(拍手)
 という騒ぎに発展した。
 女同士の気安さ、ということもあってか、普段なら止めに入るはずの狩野真理も、口笛をふいたりはやし立てたりしている。

 自分で脱いだセーターで胸を隠しながら、流し目をして「ちょっとだけよん」といったところで、羽生譲がすぐそばで寝ている松島楓の変化に気づいた。
 背中合わせに立っていた半裸の三島百合香の背中を肘でつつき、目配せをする。その動作に狩野真理もすぐに気づき、振り返って、松島楓の体に覆い被さるようにして、目を瞑ったままピクピク動かいている彼女の顔を、覗き込む。

 それまで騒がしかったのが、不意に静まりかえったので、いぶかしく思った松島楓が薄目を開けると……。
 そこには、お酒が入って赤くなった、ちょっと年齢がいったおねーさんたちの顔が三つ、どアップで待ちかまえていた。どれもニヤニヤ笑いを浮かべて、興味津々、という感じで、松島楓の表情の変化を生暖かく見守っている。
「し、しぇー!!!」
 恐慌に駆られた松島楓の絶叫が、加納邸に谺した。

[つづき]
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