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第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(10)
「いやぁ……たんのーしたぁー」
羽生譲がお腹のあたりを撫でながら、いった。
「やっぱ、炬燵に鍋物は冬の醍醐味だよねー」
「ご馳走様でした。本当、おいしかったです」
「すごく、おいしかったです。ありがとうございました」
樋口明日樹と松島楓も口々にいって、狩野真理に頭を下げる。
「はい。ごちそうさま。香也。もう遅いんだから、後でちゃんと明日樹ちゃん、送っていってよ」
「んー……」
狩野香也の普段から細い目をますます細めて、背を丸めて炬燵のぬくもりと楽しんでいる。
「……いいけど。でも、今日の味付けは、いつもと少し違ってたね」
「ああ。今日は三島先生も手伝ってくださったのよ」
「ええ!」
「あうっ!」
真理のその言葉を聞いた途端、香也と明日樹は上体をのけぞらせ、
「みにら先生が!」
「料理できたんですか!」
と、口々にいいあった。学校での三島百合香養護教諭の武勇伝は、いろいろと耳に入ってきている。
「なんだよー。わたしが料理できるのがそんなに意外かよー」
当の「みにら先生」は半眼になって生徒たちを見つめた。
「ふん。いいもんねー。ちゃんと料理の腕ほめてくれる男いるもんねー」
と、拗ねたような表情をしてそっぽを向き、立ち上がる。
「さてっと。ママさん。もうぼちぼちいい時間なんで、お暇させてもらいます。今日はどうもごちそうさまでした」
と一礼して、上着を着はじめた。
「あ。じゃあ、わたしも帰ります」
樋口明日樹も帰り支度をし始め、
「ん。送ってく」
香也も外出の準備をし始める。
真理とともに洗い物の片づけを手伝っていた松島楓も、
「あ。わたしもお見送りを……」
と、いいかけたが、「その服装で外出したら、いくらなんでも目立ちすぎ」と、その他の全員に押しとどめられた。
「んー。じゃあ、わたしは寝ますのだー。おやすみー」
と、かなり御神酒が入った羽生譲も早々に自室に引き上げ、狩野真理に「こっちはもういいのよ。長旅で疲れているでしょ。先にお風呂入っちゃって」といわれ、松島楓は恐縮しながらも、その言葉に甘えることにした。
『……お仕えする方が、優しそうな人でよかった……』
楓は、脱衣所で服を脱ぎながら、今日一日の出来事を振り返った。あわただしいようでいて、その実なにもやっていないような、騒がしい、奇妙な一日だった。
ただ一つ確実にいえることは、今日のような他愛もない馬鹿騒ぎは、やってみると実は楽しい、ということだ。
『……世の中には、こんな平和な毎日を送っている人たちもいるんだな……』
と、鍛錬また鍛錬の、自分の過去を思い出して、ちょっとブルーになったりもした。
『……今日のような日が、いつまでも続くといいな……』
そして楓は、ある決心をした。
自宅から歩いて五分ほどの樋口家まで明日樹を送っていき、「晩酌につき合え」という、顔なじみなった明日樹の父親の誘いを断って、香也はそうそうに帰宅した。
いろいろと珍しい事にばかり遭遇し続けたおかげで、妙に気怠い。今日は朝以外、ほとんど絵をかけなかったので、少しは手を動かしたい、という気持ちも強かったが、今の香也のコンディションでは、まともな線一つ引けやしない、ということも、経験上、わかっていた。
こういう日は、風呂にでも入って早めに寝るに限る。
帰宅すると、母親の真理は炬燵の卓上に突っ伏して寝息をたてていた。
もともと酒に強い方ではないし、今日はなにかとはしゃいでいたから、疲れがたまっているのだろう。香也は脱いだ上着を母親の背中にかけ、風呂へと向かう。
風呂場の電気が消えていたので誰も入っていないと判断し、さっさと服を脱いで、ざっと体を流し、湯船に入る。
ふぅー、と、息を吐いて、ふと天井を見上げると、そこに全裸の松島楓が、張り付いていた。
……ということで、みなさま長らくお待たせいたしました(書いているほうも、長かった)。
次回更新分から、しばらく待望のえろえろシーンが続きます。
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つづき]
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