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髪長姫は最後に笑う。 第一章(7)

第一章 「行為と好意」(7)

 鼻ピアスの少年、大樹は姉に荒野のことを大げさに伝えたらしく、
「やっさんの事務所に殴り込んだっていってたから、なんかこう、もっとシュワちゃんにたいにマッチョでごつい子だと思ってたー。
 なに、実物は全然かわいーじゃない」
 とか、いわれた。
 荒野は、一見、痩せているように見え、愛想が良く細面であることも手伝って、初対面の人間には、良くいえば「細身の優男」、悪くいえば「青びょうたん」的な印象を与えるようだ。
 ただし、実態は、脂肪率が極端に少ない、しなやかな筋肉で構成された体の持ち主で、鍛えられた同族と比較しても「力持ち」のほうだった。荒野自身は、自分の体を「燃費の悪い体」と評している。確かに、性能的にすぐれてはいるが、その分、人一倍食べなくては性能を維持できないのだ。

 底の厚いブーツを履いた樋口未樹の目線は、身長百七十センチ強の荒野とほぼ同じ高さにあった。ので、未樹の身長は、百六十くらいと推測。
 その舌足らずな発音に、なにか外見から受けた印象よりも幼い印象を覚えたので、想定年齢を何歳か下方修正した話したほうが良さそうだ、と、荒野は思った。
 毛足の長いマスカラと濃いアイシャドウ、蛍光色に近い、光沢の入ったピンク色の口紅が、そんな感じの、全般に派手めのメイクが、冬だというのに一面小麦色に日焼けした顔にのっていたので、予測がぶれたらしい。
 推定十八歳、誤差プラスマイナス二歳。
 いずれにせよ、年上であることは確かなようなので、敬語を使わなくてはならない。ただし、あまり畏まらず、適度にフランクな感じも、だしながら。
 その辺の微妙なニュアンスの調整は、外国育ちの荒野は、あまり得意なほうではないのだが。

 鼻ピアスの少年の姉だと名乗る、樋口未樹は、荒野という少年に興味を抱いたようで、弟の大樹と同じように親しげに話しかけ、何分か立ち話をしているうちに、荒野は未樹が「これでも美容師の卵」だということを知り、ちょうどいい機会だから、茅の髪の問題を彼女に相談してみることにした。
「ちょっといろいろ事情があって、何年か髪を切っていない妹がいて……」
 というストーリーをでっち上げ、それとなく頼んでみると、
「うん。いいよ。聞いてると、難しいセットとかスタイリング無しでカットするだけなんでしょ? それなら、わたしでも大丈夫」
 と、快く即答してくれた。
「では、こっちも、その妹に確認してから、また連絡します」
 ということにして、荒野は、未樹と携帯の番号とメアドを交換した。
「すいません。これから家に帰って妹のメシ、作らなければならないので」
 というと、
「そっかぁ。今、妹さんと二人暮らしだったっけ? じゃあ、また今度。今度は妹さんも一緒に遊ぼう」
 といって、未樹と別れた。。

 例によって、スーパーに寄って山ほどの食材を買い込み帰宅すると、ネット書店のロゴが入った大きな段ボールがいくつも玄関近くの廊下に積んである。
 部屋の中に入ると、段ボールの一つを開けた茅がソファに座っていて、しかめつらしい顔をしてなにかを読んでいた。

 冷蔵庫に買ってきたばかりの食材を放り込んでから、茅になにを読んでいるのかと聞くと、「今日、送られてきたの」と、目の細い仏頂面の男が改造ライフルのスコープをのぞき込んでいる表紙を見せてくれた。
 表紙には「ゴルゴ13」と書いてあり、そのコミックブックは百数十余冊あった。
 荒野は、そのコミックが何十年も週刊発行のマンガ雑誌に連載されていた大作だとはしらなかったし、そもそも、「週刊発行のマンガ雑誌」などというものが存在することさえ、知らなかった。
『……日本文化は奥が深い……』
 荒野は、感慨を新たにした。

 その夜、茅が荒野のベッドに忍び込んできたのは送られてきた「ゴルゴ13」の既刊分すべてを読了した夜中になってからで、前日、前前日とほとんど眠れなかった荒野は、茅が来る頃には、すっかり熟睡していた。
 おかげで荒野は、久々に気持ちのよい睡眠を、たっぷりととることができた。

 そのかわり、翌朝になって、三島百合香が出勤する時間になっても起き出すことができず、後で、
「なんだ。ついに茅とやったか? で、一晩で何発やったんだ? ん?」
 などとからかわれた。

 荒野は、殺意を堪えるのに苦労した。

[つづき]
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