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髪長姫は最後に笑う。 第一章(16)

第一章 「行為と好意」(16)

 口唇が、重なった。
 荒野はキスが挨拶代わりの文化圏にも何年か滞在したことがある。そのため、口唇の感触よりも、体全体を荒野に預けるようにしてしなだれかかってくる、未樹の感触のほうに、心を奪われた。
 表層の部分はあくまで柔らかく、それでいて、芯になにかどっしりとしたものが詰まっているような、未樹の体。押しつけられる乳房と、少し固く感じる、乳房を包む下着の感触。未樹の体臭……。
 そういった雑多な情報が荒野の脳裏でスパークし、荒野の身動きを封じる。

 荒野のものか、未樹のものなのか、心音だけが、やけにうるさく聞こえた。

 無反応の荒野には構わず、未樹は腕を荒野の首に回し、荒野の口を割って舌を差し込みながら、さらに体重をかけて、荒野の体をベッドの上に押し倒す。押し倒した荒野の体をまさぐりながら、荒野の舌を、自分の舌で弄ぶ。
 顔に感じる、未樹の吐息が、熱い。

「……もう……」
 しばらく荒野の口の中を舌でかき回した後、未樹は少し顔を離し、荒野の首に抱きつくような姿勢で、上目遣いに荒野を見上げた。
「わたしだって、恥ずかしいんだぞ……荒野君も、なにかやってよ……」
 未樹の声には、甘えるような響きが籠もっている。
「……な、なにかって、……その……」
 荒野の声は、うわずっていた。
「だって、おれ、……こういうの初めてで、その……」
「嘘ぉ!」
 未樹は少し上体を上げ、目を見開いて驚いた。
「え? 本当なの? 荒野君、落ち着いて見えるし、そのルックスだから、てっきりもうやりたい放題だったかと……」
 といって、自分の掌で口をふさぐ。
「い、いや……」
 荒野は、苦笑するしかなかった。
「……おれ、今まで、そんなことしている暇なんか、なかったっすよ……」
 荒野は、今まで荒野が関わってきた「仕事」の数々をサーチする。
 それらは大抵の場合、人を騙し、陥れ、場合によっては、間接的直接的に死に至らしめる……「ダーティ・ワーク」、だった。
 今、荒野に抱きついている未樹と自分とでは、所詮別世界の人間なんだな、と、改めて、荒野は感じ、泣きたいような気分になった。
 これだけ近くにいて、密着していても……住んでいる世界は、こんなに違う……。
「だから、ほら、そんな寂しそうな笑い方しないの」
 未樹は、荒野の頬の両側を、むにっ、と掴む。
「君が今までどういう生活送ってきたか、わたしは知らないし、詮索するつもりもない。
 わたしの知っている荒野君は、わたしより少し背が高くて、綺麗な銀髪で、ちょっとワイルドな感じのするかっこいい男の子。
 あと、そうね、君……茅ちゃんと一緒に居るときが、一番、活き活きしてた……」
 未樹は目を伏せて、荒野の上に仰向けに寝そべったまま、もぞもぞと身動きした。
「……そう、なんだよね……。
 君、荒野君さ、わたしが好きなのは、茅ちゃんの隣で屈託なく笑っている荒野君で、でも、荒野君は、わたしと一緒にいるときはそういう顔全然見せてくれなくて……。
 ……でもでも、それだけで引き下がるのは悔しいから、荒野君がまだだったら……荒野君の初めて、わたしが奪っちゃおう……うん」
 未樹は荒野のベルトに手をのばし、バックルをはずしはじめた。
「勘違いしないでね。わたし、誰にでもこういうことするわけではないし、一回したからって、付きまとったりもしないから。
 うん。荒野君の一番にはなれなくても、初めてには、なれる、か……」
「……未樹さん、おれには、そんな資格……」
 人に好かれるような資格……。
「だから、そういう面倒なこと、いわない!」
 未樹は、少し怒った顔をして、荒野に顔を近づけて、睨む。
「わたし、バカだから、そういう難しいことごちゃごちゃ言われてもよくわからない! わたしが君のこと好きで、やりたいからやるの! こっちから誘っているの! 君がいやなら拒絶すればいいし、拒絶しないのなら一緒に楽しめばいい。荒野君、難しく考えすぎ! それともなに? わたしって、そんな魅力ない? 一回だけの相手でも、駄目なの?」
 荒野は、言葉を失った。
「それに、ほら、君のここは、こんなにやりたがっているし……」
 そういって、未樹は、ジーンズの布越しに荒野の硬直を、挑発するように、まさぐる。
「……もう……。
 荒野君の体に、肌全体に、おねーさんの感触刻み込んで、一生忘れられないようにしてやるんだからぁ……」
 抵抗しない荒野をみて、受け入れられた、と判断したのか、未樹は大胆に荒野の着衣をはぎ取っていく。
「うん。
 わたしだって、遊んでいるように見えるかもしれないけど、そんなに経験豊富ってわけではないから。
 でも、それなりに頑張ってみる。
 わたし、バカだけど、今だけは、君の、荒野君の初めての相手としてふさわしい女になる。そう、努力する」
 そういって、手早く自分の服も脱ぎはじめた。

[つづき]
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