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彼女はくノ一! 第三話 (6)

第三話 激闘! 年末年始!!(6)

「……しかしまあ、十八金のエロ同人誌なのに、助っ人のほとんどが十八才以下のしか集まらなかった、というあたりが笑えるよなー……。
 ……いいけど……」
 とか何とかいいながら、羽生譲は、てきぱきと仕事を割り振っていく。
 人物のペン入れは自分でやることにして、美術部所属で絵心のある樋口明日樹には背景の仕上げ(香也は、人物だけではなく背景の小物まで鉛筆書きでかき込んでいた)、手先が器用で実力のほどが把握できている柏(姉)はトーン張りとか効果線の処理。
 その他の、初参加の三人は、とりあえず、ベタ塗りとか枠線引きとか、比較的誰にでも無難にできそうなところから手をつけて貰う。ペン入れが終わった原稿が溜まってきたら、消しゴムかけもやってもらおう。
 今回は全体的に量が多いので、手をつけられるところからどんどん片づけていかないと、仕事が消化しきれないおそれがあった。

「あ。わたし、もうすぐ何時間か抜けます。
 駅前にいかにないと……」
「その後わたくしも、入れ替わりに」
「そっかぁ……。
 くノ一ちゃんとゴスロリ子ちゃんは、商店街の方と掛け持ちだったなぁ……。
 クリスマスまでの辛抱だ。がんばれ」
 今現在、楓が忍装束だったり孫子がゴシック・ロリータ・ファッションで決めていたりするわけではないが、初対面時の印象がよほど強かったのか、羽生譲は普段から二人をそう呼んでいる。

「実際にやらせてみると、予想を越えて人が集まりすぎた」ということと、「二人目当てでやってくる客層が明確に違う」ということが判明したので、ここ数日、楓と孫子は時間差をつけて出勤するようになっている。楓のファンは子供や家族連れの人が多く、孫子の歌を聴いてリピータになるのは比較的年配の人が多かった。楓は三時から七時まで、孫子は七時から十一時まで、商店街に立つことになっていた。未成年である孫子に夜間の仕事をやらせることに反対する声もあったが、
「……わたくしに不埒な振る舞いをしようとする輩は、かなり、後悔することになるでしょうね……」
 という本人のひと言と、あと、実際に孫子に絡んで「かなり、後悔すること」になった酔っぱらいが実在したので、黙認される形になった。
 ちなみに、その時の一件は、「正当防衛」、かつ、「不起訴」である。その一件以来、孫子に軽々しく言い寄る者は皆無になった。

「わたしも、今夜は帰りまーす」
 学校帰りで、そのまま様子見をかねて立ち寄った柏(妹)も、手をあげる。
「鞄置いてきて、着替えも持ってきたいし、まぁくんのごはんも……」
 柏(姉)のほうは、いつものことなので長期滞在の用意をしてきていた。
「あの……通い、でも、いいですか?」
 樋口明日樹がおずおずと手を挙げた。樋口家は、狩野家から歩いて五分ほどの距離であり、そもそも泊まり込みをする必要性があまりない。
「遠慮しなくていいよ、そんなもん」
 猛烈に手を動かしながら、羽生譲が答える。
「儲けは、ちゃんと働きに応じて平等に配分するから。
 好きに出入りしてくれぃ!」
 羽生譲も、一度仕事に集中しだすと、目が据わってきて、口数が少なくなる。
「……あ。でも、今夜は三島先生が陣中見舞いでメシ作ってくれるとかいってたな」
「な、なんでここにミニラ先生が出てくる!」
 柏(妹)が悲鳴に似た声を上げる。夏以来、柏(妹)は三島百合香に苦手意識をもっている。
「お隣りのマンションに住んでいるご近所さんでな。最近、うちとは家族ぐるみの付き合いになってるんだよ、センセとカッコいいほうの兄弟とは」
「カッコいいほうの兄弟?」
「わはは。ようやく昨日から放映されたばかりだから、まだ知らないか。もうじき有名人になるぞ、あの二人。分からない人は駅前のマンドゴドラのショーウィンドウをちぇっきッ! だ! あれもわたしの力作だしなー」
「あ。」
 柏(姉)が顔に掌をあてて、目を見開いた。
「ひょっとして、あの、萌え萌えーな猫耳ちゃんたちですか?」
 柏(姉)は毎日のように食事を作る関係上、商店街にも日参している。
「そー。それそれ。黒猫ちゃんと白猫ちゃん」
 くくっく、と、羽生譲は笑いをかみ殺している。それでも、手は止めない。
「そっかぁ……。ちづちゃんも萌え萌えーっときたかぁ……。
 これは、予想以上にブレイクしそうな予感……」
 自分が企画に関わったコンテンツが好評だと、やはり嬉しいらしい。
「すごいですねー。今年のゆず先輩はー。
 黒猫ちゃんと白猫ちゃん、それに、ひょっとして、トナカイさんとサンタさんも、先輩のプロデュースですか?」
 羽生譲と付きあいの長い柏(姉)は、羽生譲のことを「ゆず先輩」と呼ぶ。
「わかる? わかる? まあ、わたしだけではなく、共同プロデュースみたいなもんだけどな……」
「あ! 商店街!」
 突然、それまでおとなしかった樋口明日樹が、中腰に立ち上がって、松島楓と才賀孫子を交互に指さしはじめる。
「サンタ! トナカイ! サンタ!」
「ああ! 本当だ!」
 少し遅れて、柏(妹)も、二人の正体に気づいた。
「最近、商店街でビラ配っているサンタさんとトナカイさんだ! なんで! どうして!」
「……いやぁー……あはは……なんていうかぁ……」
 手をとめ、照れたように笑って後頭部を掻きながら、松島楓は、小さく首を傾げた。
「……浮き世の、義理? ……に、なるのかなぁ……それとも、一宿一飯?」
 たぶん、最後のは激しく違う。
「お仕事。お金のため」
 向かっている原稿から顔も上げず、ポツリと呟くように答える才賀孫子。
「あー。じゃあ、ぼく、プレハブのほうに戻ってカラーページやっているから……」
 自分に矛先が回ってくる前に、早々と逃亡を図る香也。

 狩野家での闘いの始まりは、こんな感じだった。

[つづき]
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