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彼女はくノ一! 第三話 (8)

第三話 激闘! 年末年始!!(8)

 そうこうするうちに、羽生譲のいう「第ン回、ポロリもあるよ! 女だらけの修羅場ちっく天国、怒濤の冬コミ攻略籠城合宿」も、三日目に突入した。
 完全泊まり込み体制の柏(姉)、元からこの家に住む羽生譲、松島楓、才賀孫子の三名、自宅と狩野家を往復しながら手伝うのが、柏(妹)と樋口明日樹の二名、という布陣である。狩野香也は試験休みの初日、合宿二日目に残っていたカラーページの作業も全て完了し、現在では、自分の絵を描く日々に戻っている。スケージュール的にいよいよ危ない、ということになれば、即、呼び出されるはずだが。

 作業に従事する者の半数以上が未経験者である割には、作業の進行状況に遅滞はなかった。
 絵心のある樋口明日樹は、最初の方こそ慣れないペン描きに苦戦していたが、「こういうのもあるよ」と、羽生譲が極細のロットリングやフェルトペンを差し出すと、途端に作業効率を上げた。香也もそうだが、普段、筆の感触に慣れた者にとって、ペンが紙を擦る感触は、あまり心地よいものではないらしい。
「でも、ペンで引いた線って、きれいですよね」
 樋口明日樹とは逆に、ペンでの作業に拘るのが柏(姉)、こと、千鶴さんである。もともとおっとりした所のある彼女は、効率よりも仕上がりの美しさに拘泥する傾向がある。今回、貴重な経験者である彼女は、初めて、人物へのペン入れもまかされることになった。予想されていたことだが、羽生譲だけでは全然消化しきれなくなったのだ。手はあまり早くないが、その分、丁寧で、一枚一枚着実に消化していった。
 一番、負担がかかっているのが、企画者である羽生譲である。彼女はこの三日、あまり寝ていない。目の下にクマを作り、買い込んだドリンク剤をダース単位で空にしながら、それでも、手は止めない。さすがに軽口を効く余裕は段々なくなってきているが、それでも初日とさして変わらない作業ペースを維持しているあたり、やはり場慣れした印象を与えた。
 最初の頃、「まず、慣れるまでは」と、ベタ塗り、枠線引き、消しゴムかけなどに従事していた三人は、それぞれの器用さを判断され、今ではさらに細分化された分業体制になっている。
 三人の中で一番手先が器用だった才賀孫子は、「削り」まで含めたトーン処理、それに微妙な階調を伴ったベタとホワイトの処理、までをまかされるようになった。
「ここ、チンコを抜いた所から、ぶわっと白濁液が噴出して、そんで、次のこのコマでは、それがとろりと垂れている感じで」
 みたいな羽生譲の指示に眉をひそめながらも、なにも言わず黙々と作業を続ける。エロ系だから、その手の液体の描写も、当然多くなる。
 孫子ほどではないが、そこそこ器用だった松島楓は、効果線などの単純作業に加え、樋口明日樹だけでは間に合わなくなってきた背景の一部のペン入れも手伝うようになっていた。
 本人は、慣れない作業に緊張しているようだが、その緊張がいい方に転がって、時間を経るにしたがって、いい線を描くようになっている……と、羽生譲は判断した。今回が初めて、ということを加味すれば、掘り出し物的な即戦力、だと思う。
 初めてなのに、少し教えただけで、トーンやホワイト修正までこなしてしまう才賀孫子のほうが、どちらかというと、例外的に器用すぎる。
 残った柏(妹)のほうは、ベタや枠線、消しゴムかけなどの単純作業を続けている。
 とはいえ、この単純な、誰にでも出来る作業が、実は、作業量的には一番膨大だったりするから、専任でそれだけをやってくれる人間がいてくれるのは、かなり助かる。このうち、枠線の作業は全て終わっているが、ベタはまだ大半が残っていて、消しゴムかけの作業は、これから原稿が上がってくるにつれ、どんどん溜まってくるはずだった。
『……場合によっては……』
 羽生譲は、そんなことも考えはじめている。
『……こーちゃんを呼び戻したり……お隣りの三人にも手伝って貰うかな……』
 日程的には、そろそろ半分近く消費しているわけだが、作業としては、まだまだ全体の半分に届いていない……。
 ほとんどの人員が今回初めて、ということを考えれば、かなりいいペースだとは思うが、全員、これから時間とともに疲労をため込んでいく。その分、ペースも落ちるはずで……。
 後の方にいくに従って、きつくなるはずだ……と、羽生譲は考えている。考えながら、手を動かしている。

 翌日、作業開始四日目にして、羽生譲はついに陥落した。
 いや、それまでほとんど寝ていなかったところを、六時間の仮眠をとった、ということなんですけど。
 周囲にしつこいぐらいに「この時間になったらたたき起こすように」と念を押し、六時間の仮眠をとった後、跳ね起きた羽生譲は、作業の進行状況をチェックし、
『……手遅れになる前に、手をうっておいた方がいいか……』
 と、判断する。そして、庭のプレハブに出向き、
「先生、お願いします」
 と、狩野香也に頭を下げた。
 それから台所を通りがかると、ちょうど狩野真理と肩を並べて調理をしていた三島百合香がいたので、
「センセ、お願いします」
 と、加納兄弟にも応援要請を伝えるよう、言付けた。
 三島百合香は、試験期間中ということもあって、ここ数日は毎日のように食事作りにこの家に来ている。もともと料理が好きだというが、多人数の食事を毎回用意しなくてはならない狩野真理には大歓迎されている。味のほうも、おおむね、どころではなく、大好評である。

「……んー。時間ないし、サインペンでやっちゃっていい? ちょっと仕上がり、荒れるけど……」
 作業部屋に入ってきた狩野香也は、まず全体の進行状況をチェックしてから、羽生譲と軽く打ち合わせを済ませ、あちこちからかき集めた原稿の束を、自分用に割り当てられた机の上に置き、その上から一枚、手前にとって、自分の目前に置く。
「まず、人物からやっちゃうね」
 新品のサインペンの封を切り、おもむろに、原稿の上に置く……。
 と、同時に、その手が、「ぶわぁっ!」という感じで、動く。
「……うわぁ……」
「……はやっ!」
 柏(妹)と松島楓が、感嘆の声を上げた。声は出していないものの、才賀孫子も、目を見開いて驚愕の表情を作っている。他の三人は、多少の差はあっても、香也の働きぶりをみたことがある。樋口明日樹は、自分の原稿のほうに顔を向けながら、にたにた笑っている。
 狩野香也が一枚目を手放すまで、十分強しかかからなかった。
 そのまま直ぐ、次の原稿と入れ替える香也に、
「……狩野君……なんで……そんなに早いの?」
 結局、香也が一枚目を手放すまで見ていた柏(妹)が、驚きを隠せない三人を代表する形で、そう尋ねる。
「……基本的に、自分で描いた絵をなぞっているだけだし……」
 答えつつ、香也は、手を止めない。
「それに、マンガの線って、シンプルで、少ないし……」

 さらに翌日になると、加納兄弟も参戦してきた。

[つづき]
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