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彼女はくノ一! 第三話 (13)

第三話 激闘! 年末年始!!(13)

「お風呂イベント発生!」などといいながら、突如、羽生譲が狩野香也の入浴時に乱入してくることとは、別に珍しいことではなかった。……数年前、までは。

 なにしろ、香也は「笑わない、しゃべらない、反応しない」子供だったし、羽生譲は、そんな香也になにかしらのリアクションを起こさせることに、躍起になっていた時期がある。特に、この家に同居し始めた当所は、名目上は「順也の弟子」ということだったにせよ、それ以外に様々な副次的な事情があり、「なんとか先生の役に立ちたい」と焦っていた時期もそれなりにあって、絵の腕の方にイマイチ自信の持てない譲は、それ以外の、例えば、家庭での活躍に力を入れていた時期があり……その時、よい標的になったのが、つまり、あまり健全な情緒的発育をしているように見えなかった、狩野香也の存在だった。

「んっふっふっふ。こうしてお風呂いっしょするのもひさしぶりだねー。こーちゃん……」

 なにかにつけ、感情表現が極端にうすい子供だった香也も、「年上の、かなりきれいめなおねーさん」にあたる羽生譲から過度の接触を受けたりすると、やはり、照れたような恥ずかしがるような、まともな反応をしめした。その他の時は話しかけても反応しないことがほとんどだったから、特にこの家に同居しはじめた当所、羽生譲はまだ幼かった香也に、なにかにつけてべたべたと「物理的接触」を行った。

「……今年の年末は、ほんとうにご苦労様だったねー。おねーさん、感謝の印に、今日は、お背中でもお流しするー……」
 ねっとりとした口調でそういいながら、全裸の羽生譲が、湯船に浸かっている狩野香也の体の上に覆い被さって、顔を近づけていく。

 羽生譲が「お風呂イベント」と称して香也の入浴時に乱入してきて、香也が慌てたり恥ずかしがったりする反応を楽しむのも、そんなわけで割とよくあることだった……数年前まで、は。
「お風呂イベント」が発生しなくなったのは、ひとつは、そんな小細工を労せずとも、だんだんと香也が譲と会話をするようになったからだし、もうひとつは、香也が成長して、ちょっと混浴もシャレにならない年齢になってきたからで……ようするに、今夜の羽生譲は、充分に様子がヘン、だった……。
「……譲さん、なんかあった?」
 香也は羽生譲に、そういった。
 なにしろ付き合いが長い。というか、羽生譲は、香也が今の人格を形成する上で、かなり影響を受けた人物でもある。香也がこの年齢になっても、まだ、「お風呂イベント」を発生させる、というのは、やはりなんらかの変調がある、と、そう感じた……。
「……わかる、か?」
 ドアップになった羽生譲の顔が強ばり、次いで、目尻に、じわり、と、涙がにじむ。
「……昨日の夜、な……。
 ……馬鹿親父と、あった……」
「……あ……」
 香也は、譲の父親、譲市と直接の面識があるわけではない。しかし、この狩野家、それに譲と、どういう経緯があった人物であるのか、ということは、知らされている。
「あ。あ……」
 まだ少年であり、加えて、人付き合いが苦手な香也は、譲に、なんといっていいのか、分からない。
「……落ち着いて、譲さん……」
 自分の上に覆い被さっている譲の肩に手置いて、そういうのが、精一杯だった。
「……ごめん……こーちゃん……」
 ふわり、という感じで、譲は、香也の上にそのまま抱きつき、肌を密着させる。
「……このまま、泣かせて……あと、泣き顔、絶対みるな……」
 そういって、向き合った姿勢でべったり香也に抱きつき、首を交差させるような姿勢で、静かに嗚咽を漏らしはじめる。

 香也は、真っ赤な顔をして硬直しながらも(正面から向き合いながら、全裸同士で抱き合っているわけで、当然、乳房をはじめとして、譲の体の感触や体温は、まともに伝わってくる。それに、体臭……)、手のひらで軽く譲の肩を叩くとかして、譲が落ち着くのを、待った。
 待つよりほか、為す術がなかった。

 五分もそうしていただろうか。
「……ごめんな、こーちゃん……」
 まだ鼻をぐずぐずさせながらも、譲はなんとか顔をあげ、香也の体との間に、少し隙間をあけた。
「……情けないよな……普段年上ぶってるのに、こーちゃんにこういう甘え方するの……でも……」
 香也は、あまりにも気色のいい感触のする譲の体が離れたことに、半分ほっとしながら、残りの半分は、残念がっている。そして、こんな時でも譲を異性として意識している自分の浅ましさに、自己嫌悪を抱いている。
「……よかったなー……ぼーっとしているように見えても、こーちゃんもちゃんと男の子だ……」
 ……まあ、全裸で抱き合っている相手には、香也が反応していることが丸わかりなわけで……でも、こういうシュチュエーションの時に、正面からそれを指摘するのはどうか、とは、思う……。
「……んっふっふ……本当、よかったよ。こーちゃん、わたしのことも、ちゃんと女として見て貰えているんだ……」
 譲と香也の関係は、ちょっと複雑だ。幼少時から長年同居している、少し年齢の離れた、異性。
 現在の関係と距離感を掴むまでに、かなり時間がかかった……。
「それで、もう使ったの、このでかくなったの。あの、くノ一ちゃんに……。
 ここまできたら、おとなしく白状しちまえよぉ、こーちゃん……」
 そういって、湯に濡れた肩をすり寄せてきて、香也の耳元に、囁く。
 少し泣いて落ち着いたのか、普段の譲のペースに、かなり戻っているような気がする……。
 というか、ぶっちゃけ、「立ち直るの、早すぎ」、と、思わないでもない。

「……なんか、その表情みてると、なにもいわないでも答え分かるような……。
 ……しかしまあ……これをなー……。
 前にみたときは、あんなに可愛かったのに……いつの間にか、こんなに立派になって……」
 譲は、香也の上に覆い被さるようにして、中腰になりながら、お湯の中に手をいれて、香也の、反応している部分を物珍しそうに撫でさすっている。
「……意外だよなー。こーちゃん、ぼーっとしてるし、奥手とかそういう以前、な感じだから、初体験、かなり遅れると思っていたけど……。
 いざとなったら、わたしが筆おろしすのかなーって、比較的最近まで思っていたり……。うん。わたしか、あすきーちゃん……ダークホースが、真理さんだと思ってた……」

 ……しみじみとした口調でいいながら、そんなこころを、微妙に触らないで欲しい……。
 と、香也は思った。

[つづく]
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