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彼女はくノ一! 第三話 (22)

第三話 激闘! 年末年始!!(22)

 翌日の二十四日、早朝のうちに狩野真理が旅立ち、それを見送ってから、狩野香也、松島楓、才賀孫子、加納荒野と茅の五名は狩野家の前に集合し、路線バスに乗り込む。香也が幼い頃、一時預けられていた孤児院は市の外れにあり、狩野家からは、バスでも三十分以上かかる位置にある。
「……んー……悪いね。みんなに、荷物持ちさせちゃって……。いつもは真理さんの車でいくから……」
「そんなことは、いいんですけど……」
 バスの中で、才賀孫子は、香也に正面から問いただした。一昨夜の件以来、初めて香也とまともに会話しようとしている。
「こうして協力している以上、ちゃんと事情を説明してくださらないかしら?」
「……事情、っていっても……」
 香也は首を捻る。
「話せること、そんなに、多くはないんだけどね……。その頃のこと、あんま憶えてないんだけど……ぼくの両親が事故で亡くなったらしくて、身よりのなかったぼくがそこに預けられて……そこの職員やっていた真理さんと知り合って、真理さんが順也さんと結婚して、そのとき一緒にお世話になることになって……。
 まあ、ぼくもまだ、小さかったし、ほとんど後付で知ったことばかりなんだけど……。
 本当に、全然憶えてないからなあ……あそこに居た時のこととか……」
「……真理さん、狩野君のお母さんにしては若し、あんまり似てないとは思ったけど……連れ子かなんかだと思ってた……」
「……でも、これくらい、今、普通じゃないかな? 昨日、飯島さんのご両親も離婚してるって、いってたし……。それに、ぼく、恵まれている方だと思う。
 真理さんや順也さん、好きにやらせてくれるし……血の繋がりはないにせよ、それなりにうまくやっていけてるし……」

「ああ。来た来た。香也君。真理さんから連絡貰ったわよ。今年は大勢の友達と来るって。香也君、友達、できたんだね。それも、こんなに大勢」
 バスを降り、施設も玄関口まで行くと、四十年配の女性職員がわざわざ出迎えてくれた。
「背、また伸びたんじゃない? さ。みなさんも、こちらに……」
「あー……どこか、着替える所、貸して貰えませんか? 一人分、サンタの衣装を用意してきたんで……」
「あら、今年は本格的なのね。みんな、プレゼントよりも、似顔絵のおにいさん、楽しみにしているんだけど……」
「楽しみにしているの、小さい子ばかりですよ……。ちょっと育つと、こっちのほうなんか見向きもしないし……」
「そんなもんよ、子供なんて。すぐに大きくなるし、育てば変わるし……。香也君くらいかな? ここにいた時と、あまり変わらないのは……。背は伸びたし、少しはしゃべるようになったみたいだけど……」
「……んー……」
 香也はぼりぼり頭を掻いている。照れているらしい。
 外来者用の待合室みたいな場所でお茶を振る舞われ、一服している間に、松島楓が、普段は才賀孫子が商店街で着用しているサンタの衣装に着替え終えて、出てくる。それを機に、ぞろぞろと施設の中に入る。香也たちを出迎えた女性職員が、
「今年も、プレゼントを持ってきてくださったよー」
 と、あちこちで子供たちに声をかけまわっている。子供たちの反応は様々だった。無関心な者、楓の手から小さな包みをひったくるようにして、すぐ自分の遊びに帰る者、好奇心に満ちた目で香也たちを見つめるもの……。
 今年は、サンタの恰好をしている松島楓に興味を示す子供たちが多く、楓は、すぐに子供たちに囲まれた。
「……いつも、こんな感じなの?」
 香也に、樋口明日樹が尋ねる。
「だいたい。施設の公式な行事ってわけでもないし、大きな子供たちは、たいてい、外に遊びにいっているし……。
 荷物だけ送ってもいいかな……って思わないでもないんだけど……真理さんが、ぼくに、ここのこと、忘れちゃいけないって……まあ、ぼくは、自分に出来ること、するだけだけど……」
 そういって、香也がスケッチブックを取り出すと、廊下の隅にぺたん、と座り込んだ。すると、香也のことをしっている子供たちが、香也のまわりに殺到する。
 香也は、「はいはい。順番順番」とかいいながら、スケッチブックに子供たちの似顔絵を描き始める。ほとんど輪郭線だけできたような簡単な描写で、しかし、顔の特徴は、よく捉えている。相変わらず手が早く、一枚あたり、一分もかけていないのではないか。
「樋口先輩も、やってみますか? これ?」
「……わ、わたしは、狩野君ほど手が早くないし……あっ! あれっ!」
「うわぁ! 楓ちゃん! いくら子供たちが喜んでいるからって、子供でお手玉やっちゃ、駄目!」

 少し離れたところで、松島楓が、三歳くらいの子供を三人ほど順番に空中に放り出し、ジャグリングをしていた。順番に放り投げられている子供たちは結構喜んでいたが、見ている側は、心臓に悪い。

[つづき]
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