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髪長姫は最後に笑う。第四章(1)

第四章 「叔父と義姉」(1)

 狩野家を辞して、野呂良太が完全に姿を消すのを確認してから、加納荒野と加納茅、三島百合香の三人はマンションに向かった。最近は栗田精一とともに狩野家によく出入りするようになっている飯島舞花は、そのまま泊まっていくという。
 帰る前に、松島楓から「わたし、本当に東京にいってもいいんでしょうか?」と尋ねられたが、荒野は「遠慮せずに行ってこい」とだけ、答えた。楓は東京行きを楽しみにしていたし、それに、野呂良太が伝えてきた「他の六主家が動き始めている」という情報も、まだ裏がとれているわけでもない。
 仮に、茅の正体が野呂良太の推測する通りのものだったとしても……荒野は、今後、他の六主家の連中が接触してくるにしても、必ずしも衝突する……とは、思っていない。
 中には、茅の身柄を要求してくる者も、確実にいるのかもしれないが……その辺は、別の代価を支払うことで、いくらでも話しがつきそうな気がした。荒野に限らず、加納の者は、その手の交渉事には長けているのだ。

 涼治が故意に茅の居場所をリークしているのだとしたら……そこには、何かしらの意図があるはずだ……と、荒野は、思った。
 多分、涼治は……茅を抱えた荒野が、他の連中にもみくちゃにされて、それでも自分の意志を貫けるかどうか……それを、試しているのだろう……。
 荒野は、そう、推測した。
「あのじじいのやりそうな事だ」、と。

「……今年は、帰らないつもりだったけどな……」
 マンションのエレベータの中で、突然、三島百合香がそんなことをいいだいした。
「……やっぱ、年末年始、故郷に帰る……。
 ついでに東京に寄って、野呂がいってた男に接触して来ようかと、思う」
 三島は、野呂と同じ結論を、もっと早く出せなかったことに責任を感じているのかも知れない……。
 荒野はそう思ったが、口に出しては、こういった。
「……へぇえ……先生、故郷があるんだ……」
「お前な、わたしをなんだと思っている? ここいらと同じような、田舎の小さな開業医の生まれだよ、わたしは。医学部にいって免許はとったけど、どうも臨床は性に合わなくてな……で、研究職に進んで、そこでお前とこのじいさんに引っ張られて、今ではこんなことやってるって寸法だ……。
 ……人生、どこでどうなるのか、わかったもんじゃないな……」
 そんなことをいいあって、三島百合香と、別れる。
 明日には出発する、といっていたから、次に三島と再会するのは、年明けになるかも知れない。

 マンションの、自分たちの部屋に戻ると、いきなり茅に抱きつかれた。
「……どうした?」
 茅に抱きすくめられたまま、荒野はいった。
「……怖いの……」
 荒野の体に腕を回しながら、茅は、全身を震わせている。
「……自分で、こうなんじゃないかな、って思っていたそのままのこと……あの男がいったから……。
 それで、怖いの……」
 三島は、再三「茅は頭がいい」ということを荒野に強調していた。
 荒野も、そのことを実感するような出来事に、何度か遭遇している。
 だから、荒野たちがたどり着けなかった結論に、茅のほうが先にたどり着いていたとしても……別段、不思議には思わない……。
「……そっか……今まで、自分だけで、抱えていたのか……」
 荒野は、茅が、自分のルーツに関して不安を抱いていることを察してやれなかった自分に対して、苛立ちを覚えた。
 荒野も、茅の体に腕を回し、力を込めて、抱き返す。
「……すまない……気づいてやれなかった……でも……」
 茅の髪に顔を埋めるようにして、囁く。茅の匂いがする。
「……もう、一人だけで悩まないでくれ……おれたち、相棒だから……これからなにが起こっても、おれだけは、茅の味方だ……ずっと、側にいる……」
「……ずっと……本当に……」
「……本当に……約束だ……だから、泣くな……」

 茅が泣くのを目の当たりにするのは、二度目だった。
 一度目は、一番最初にあった時、あの病室で。
 二度目は、今。
 なんだかおれは、茅を泣かせてばかりいる……と、荒野は思った。
 もっと笑わせなければな、と。
「……茅、どうしたら、笑ってくれる……」
「キスして。それから、ベッドに連れってって」
 そうした。

 今まで同居してきて、そうなる機会はいくらでもあった。が、荒野は、今まで茅を女として扱ったことはなかった。一緒に風呂に入ったり、裸で抱き合ったりしたことはあっても……キス一つ、していない。
『……結局、保護者意識が、いつまでも抜けていなかったんだろうな……』
 あるいはそんな荒野の態度が、茅を傷つけていたのかも知れない、と、今にして、荒野は思う。
 すでに茅は、子供ではない。自分が、子供ではないように。

 一番最初、茅を見たとき、その目の中になんの表情も見いだせないことに、戸惑った。でも、茅は、荒野の存在を認めると、すぐにぼろぼろと泣き出した。
 ……あ。人形が、人間になった……。
 と、その時の荒野は、思った。

 それから何ヶ月かたって、この町で再会した茅は、前の人形に戻っていた。
 でもすぐに、茅は自分から動き出し、様々ことやものや人と触れ、どんどん表情豊かになっていった。長いようにみえて、茅と荒野がこの部屋に住み始めて、まだ二ヶ月と少しにしか、ならない。
 これは、お人形さんが女の子になるの期間として、長いのか、短いのか?

 ……まあ、かなり、風変わりな女の子、ではあるけど……。

 口唇を重ねると、茅の頬に朱が差した。
 茅は、荒野の首に腕を廻し、貪欲に、荒野の舌を求める。茅の舌が、荒野の口唇をこじ開け、硬くなった茅の舌が、荒野の口の中を蹂躙する……。
「……そんな真似、どこで覚えた……」
「……マンガ……」
 羽生譲の、だろう。ヘンな知識の宝庫だ。
「……実験台にされてるかな?」
「……馬鹿……。
 荒野じゃなけりゃ、こんなこと……しないの」
 拗ねたようにそういって、荒野の首にぶら下がるようにしてしがみつき、茅はさらに、荒野の口を貪る。
「……前は、どうしてこんなことするのか……わらなかったけど……」
 茅は、両手と両足を使って、荒野の胴体にしがみついている。
「……やってみると、いいの……荒野の唾……甘い。もっと、欲しい。
 荒野。ベッドまで、このまま……」
「……もう、とまんないよ、おれ……」
「……止めないで……早く」
 荒野は茅をぶら下げたまま、ベッドへと向かった。

『……茅は、もう、女の子……でもない』
 と、荒野は思った。
『……女、だ』

[つづき]
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