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彼女はくノ一! 第三話 (25)

第三話 激闘! 年末年始!!(25)

 その後、母屋のほうから羽生譲が呼びに来て、全員でお粥をすすって遅い朝食兼昼食を摂る。昨夜はどさぐさのうちに宴会に突入したし、あまり面識もない面子も若干いたので、わいわい騒ぎながらと軽く自己紹介をし合う。
「え? こっちのカノウコウヤって、おれとタメなの?」
 樋口明日樹の弟、大樹は、香也が自分と同じ学年と知ると、本気で驚いていた。香也は、荒野のように大人びているわけではないが、背だけはひょろりと高いから、初対面の人間に、年上に見られることもある。
「……知らなかった……うちの学校に、こんなすごい絵描くのがいて……それも、タメなんて……」
 ぶつくさ、いいはじめる。
「だってあんた、ほとんど学校来てないじゃない……。出席日数、大丈夫なの?」
「あ。それは、大丈夫。ちゃんと計算してさぼってっから……。
 それより、なー、あすねー。あすねーってこいつと、つき合ってんの?」
「つき合ってない! それと、そういうこと人前で聞くな!」
「……大樹君、恰好はあれだけど、結構楽しい子だなぁ……」
「……あー……この髪、みきねーの実験台になったら、いつの間にかこうなってたんですけど……で、ついでだから鼻にもピアスしてやれってノリで……でも、もうこっちの方向性もそろそろ飽きてきたんで、来年はイメチェンして硬派でいきます」
「……その前に、とりあえず、まともに学校通えよ……」
「あ。そうだ。樋口、お前、どうせこっち寄ってから学校いってるんだろ? 来年から、その子も一緒に引っ張ってくれば?」
「……え? あれ? そ、それは、その……」
「……あれぇ? おれたちと登校するの、そんなにいやなのかなぁ? 大樹君」
「こ、荒野さんの笑顔、時々怖いっす!」
「ついでにお前もだ、セイッチ! 毎朝、こっちに寄ってけ!」
「……って、おれん家は全然方向違うのに……いや、もう、まーねーには逆らっても無駄だとわかってますけど……」
「……あまり羨ましくないバカップルだな、おい。一年のほうのバカップルはほのぼのしているのに……」
「あいつらはねー。時々、他人が入り込めない空間作るから……」
「……誰?」
「あ。絵描きさんは知らないか……学校では結構有名だと思ったんだが……」
「狩野君は、大抵のことに関心ないから……この間手伝いにきてた柏妹と一年の子。男の子ほうも、線が細くて可愛い感じで……まあ、お似合い、かな……」
「……ああ。だからクリスマスのプレゼント……そうか……」
「……そういや、昨日はどうしてこっち来たんだ? 飯島?」
「いやだって、二人でいちゃつくのはいつもやっているし、賑やかなの好きだし」
「はいはい。ごちそうさま」
「でも……」
 樋口大樹は改めて、食卓に着いた人々の顔を見渡す。
「この面子で登校かぁ……壮観だなあ……特に女子。あすねーはちょっと平均値下げているような気がするけど……」
「あんたもでしょが!」
「……てぇか、男子は、カッコいいほうの荒野君以外は、せいぜい人並みだからなぁ……。
 でも、よかったな、こーちゃん。この面子に栗田君と大樹君が加わってくれると、こーちゃんの見た目の凡庸さが目立たないぞ!」
「……羽生さん、なに気に失礼なこといってません?」
「そうかぁ? 男も女も外見が全てではないぞ……」
「ああ。そうっすね。こっちの狩野香也君が、あんなに凄い奴だとは思ってもいなかったし……」
 またしてもブツブツ言いはじめる樋口大樹。どうやら、同じ学年で同じように不登校気味だった香也の存在は、以前から知っていたようだ。
「……その香也君を、登校するようにしむけたのが、あすねー……なのかぁ……どっちも、凄いよなぁ……」
「悩め悩め、青少年。愚痴だったらおねーさんが聞いてやるぞ。いつでも酒瓶担いでこの家に来たまえ」
「……酒は、もう、当分いいっす」

 そろそろ準備しないと三時から商店街ではじまる最後のショーに間に合わないから、と羽生譲が言いはじめたのを期に、解散、ということになった。
 今日で最後だし、昨日はいけなかったから……と、香也が「見に行く」といいだすと、加納兄弟、樋口明日樹、飯島舞花、栗田精一も、そのまま同行する、という。
 準備がある、といって先行した羽生譲、松島楓、才賀孫子の三人に少し遅れて、全員でぞろぞろと駅前に向かう。移動の時間を考えても、開演まだかなり間があったが、駅前まで出れば、時間を潰す方法はいくらでもある。
「今日はマンドゴドラ、寄ってく?」
「……んー……どうだろ? 並んでいる人がまた多いようだと、お邪魔しても悪いかなあ、という気もするし……」
「……もう、イブ過ぎちゃったからなぁ……どうなんだろ? 予約のお客さんは、かなり捌けているはずだけど……」
「売れ残ったの、安売りってするのかな?」
「するとしても、明日か、今日の夜遅くからだよ……」
「じゃあ、マンドゴドラは、まず、様子をみてからってことで……」

「お。来た来た」
 店の前をぞろぞろと通りかかると、マンドゴドラのマスターの方から声をかけてきた。
「今日は団体様か。いいよいいよ、みんなで休んでいきなよ。そのかわり……」

 ちょうど人数もいるし、ということで、店の模様替えを手伝うことになった。
 人出のほうは、二日前、荒野たちが立ち寄ったときよりは落ち着いている。前ほどではないにせよ、それでも、長蛇の列ができていた。
 その行列をかき分けるようにして、全員でゴム手袋をはめて、ショーウィンドウに描かれた雪景色の白い塗装を落としていく。その作業には、十分もかからなかった。
「……この行列も、君らのおかげみたいなもんだ。今後も、毎日でもうちに寄っていってくれ!」
 と、例によってダイナミックな笑顔を浮かべ、マンドゴドラのマスターは、荒野の手をとってぶんぶんと振っている。

「……んー……ここら辺? なにを、描きますか?」
「……まー……オーソドックスに、門松、羽子板、独楽……あと、一富士、二鷹、三なすび……ってえのは?」
「……塗料のほうが……白と、黒と、緑……かー……。
 んー……こんだけあれば、なんとか……」
「はいはい。ペンキが飛ぶことがあります。もう少し、離れてください」

 香也はぶっつけ本番で、白い塗料を刷毛に乗せ、ざざざ、っとショーウインドウに富士山を描く。塗料がショーウインドウのガラス面をしたり落ちていくところまで利用して、雪峰の富士を、ざざっ、と大胆な動きで仕上げると、何事かと見守っていた行列の人々から、歓声があがる。
 続いて香也は、富士山から少し離れた店の入り口近くに、大体実物大の門松の絵を描く。その近くに、白と緑を適当に混ぜながら、精緻なタッチで羽子板の絵を添え、次に、富士山の上に黒の塗料で墨絵風の鷹を、最後に、緑と黒の塗料を混ぜながら、富士山の麓になすびを描き加えた。
 香也が刷毛を置くと、見物していた人々の間からため息がもれ、パチパチと拍手が聞こえだした。

「……君たち、凄い友人もってるなぁ……本職でも、ここまで見事じゃないぞ……」
 試しに、と、香也にやらせてみたマンドゴドラのマスターのほうが、ものの三十分もかけずにあっさり仕上げてしまった手際のあっけに、呆気にとられている。
「……んー……。前に、はじめrてペンキ使った時、ちょっと粗く仕上げちゃったんで、フラストレーション溜まってたかなー……」
 そんなことをいいつつ、刷毛と塗料を片付けだした香也は、服も汚していない。
「……仕上がりもそうだが、パフォーマンスにもなっているじゃないか……」
 マスターの言葉通り、たまたまそこに居合わせた行列のお客さんたちの拍手は、いつまでもなりやまない。
 なにしろ、香也の筆先には躊躇い、というものがまるでない。ざっ、ざっ、と、一見無造作に、大胆に腕を動かし、その後には完成品が残っている。このように大きな作品をざっくり完成させる様子は、見せ物のような様相も帯びてくる。
「よっしゃあ! いいもん、見せて貰ったお礼だ! 今日から君も、うちの店、フリーパスでいいよ!」
「……あの、嬉しいんですが、ぼくは、甘いのは、ちょっと……」
 狩野香也は、加納荒野と違い、甘い物はあまり好きではなかった。

 加納荒野と茅、その他の一同がカウンターにずらりと座って、ケーキをぱくつく頃合いを狙って、マスターは、店の上部に据え付けられたモニターに流している映像を、クリスマス・モードから正月モードに切り替えた。
 行列客から「おおぉう!」という歓声があがる。
 店の中にいた荒野たちは、店を出るまで、モニターの中の猫耳荒野と猫耳茅が、その衣装を、サンタから羽織袴と振り袖に取り替えていることに、気づかなかった。

[つづき]
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