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髪長姫は最後に笑う。第四章(8)

第四章 「叔父と義姉」(8)

 二十七日。
 三島百合香が里帰りをし、羽生譲に連れられて松島楓も東京に向かった。荒野たちや残された加納家の人々はそれぞれに静かな年末を過ごしているはずであり……と、いうところまで考えて、荒野は、あることに気づいて愕然とした。

 狩野真理は、二十四日から年内一杯留守にする予定だという。
 その上、羽生謙と松島楓まで泊まり込みで東京に出かけていったら……その間、狩野家には、才賀孫子と狩野香也の二人きり、ということになる……。

 基本的に荒野は、他人の生活には干渉したいとは思っていないのだが……それでも、やはり心配にはなってくる。
 才賀ってたしか、香也のこと、一方的に嫌っているんじゃなかったっけ?
 才賀孫子と狩野香也の初対面の時の状況を知る荒野には、それなりに納得ができるところもあるのだが……。

『大丈夫かいな、あの二人……』
 その事を茅に相談してみると「大丈夫なの。才賀、絵描きのこと、嫌ってないの」と即座に断言した。
 これで茅は、意外と観察眼が鋭い。その言葉をそのまま信じたかったが……今までの二人の挙動を思い返してみると、荒野の不安は、にわかには晴れかった。

 それで、買い物にかこつけて外出し、それとなくお隣の狩野家の様子を伺ってみると、才賀孫子にこきつか……もとい、才賀孫子の指示を受け、庭に出した畳をはたいている狩野香也の姿を、生け垣越しに認めることができた。
 大掃除、ということで、かなり徹底的に使役されているらしい……。
 その様子を横目にみて、茅は澄ました顔をして、荒野にいった。
「ほらね。仲、いいの」
 ……ああいうのも『仲、いい』といっていいのだろうか?
 内心、そう思わないでもなかったが、少なくとも荒野が想像していたような気まずい雰囲気に包まれていたわけではないので、一応、安心することにした。

 茅と荒野は自転車でショッピングセンターに赴き、そこで昼食を摂ってから例によって大量の食材を買い込んで、夕方、日が沈む少し前くらいに帰宅する。
 その後、二人の共同作業で手間暇のかかる料理をし、夕食として食べ終えた後、どちらからともかく体を寄せ合い、今度は避妊具をつけて、二回ほど続けざまに性交した。

『……まるでどっかの……普通のカップルみたいだな……』
 茅を抱きながら、荒野はそう思う。
 荒野に抱かれるのは二度目なのに、早くも性感が育ってきているのか、茅は、荒野の与える刺激に対して、昨日よりも激しく反応した。
 あそこも、昨日よりはよほどほぐれていて、荒野自身を柔軟に包み込み、絡みついてくる。昨日とは違い、全然、痛がらなかった。それどころか、荒野が一度果てると、物足りなそうな顔をして、すぐに次を求めてくる。
 確かに、放出した後も、荒野の硬直はとけていなかったが……
「……荒野の……匂い……へんな、匂い……」
 茅は、幼い風貌に似合わない淫蕩な表情を浮かべ、荒野自身から避妊具を抜き取り、その中身を、ずるずる音をたててすする……。
 そんな茅の様子に、荒野は、激しい違和感を覚えた。
「……茅って……いやらしい女の子だったんだな」
 別に、女性に性欲があってもかまわない、とは思う。
 でも普通、昨日の今日で、こんなにも、性行為に「順応」してしまえるものなのだろうか?
「……やぁ……茅、荒野の匂い嗅ぐと……どんどん変に……欲しくなっていくの……我慢、できない」
 茅はそういって、火照った体を荒野に巻き付けて、避妊具を抜いたばかりの荒野自身を、そのまま自分で導くように再度挿入させようとする茅を、ようやく押しとどめる。
 明らかに発情した茅を鎮めるために、荒野は、再び新しい避妊具を装着して、茅が満足し、体力を消耗してぐったりと動かなくなるまで、茅の上でせわしくなく動かねばならなかった。

 女性との経験に乏しい荒野は、漠然とした違和感を覚えただけだが……こんな時に限って、女性で、かつ、医学的な知識にも明るい三島百合香が、不在なのだった。

 あまりにも静かで、平和な日々の裏で……新しい変化の兆しは、そうした所から、静かに始まろうとしていた。

 荒野と裸で抱き合っていない時の茅は、基本的に以前と変わらなかった。
 明くる朝、昨夜の自分の狂態を記憶していた茅が、起きるなり、子供のように声をだして泣き出した。
「……こんなの……本当じゃない……本当の、茅じゃないの……でも、荒野と一緒にいると、どうしても我慢できなくなるの……」
 やはり茅にとっても、昨夜の状態は、普通のものではなかったらしい。
「……わかってる。おれ、ああいう茅も嫌いじゃないけど……でも、ちゃんと、あの状態の茅が普通じゃないってわかっているから……我慢できなかったら、いくらでも、お相手するよ」
 荒野は、裸のまま泣きじゃくる茅の肩を抱いて、平手で静かに叩き続けた。
「……おれ、ああいう茅も、今の茅も……どちらも、好きだから……」
 もう何日か様子をみて、いよいよ本格的にやばそうだったら、三島百合香に電話で相談してみよう、と、荒野はそう思った。

 その日の昼間、涼治から、振り袖が送られて来た。和服の知識がない荒野がみてもかなり立派な、光沢のある美しい柄の着物で……たぶん、目玉がとびでるほど、高価な品、なのだろう。
『……なにを考えている、あのじじい……』
 そういって、胸元を鷲掴みにして、存分に揺さぶってやりたくなった。
 茅は、そうした荒野の内心の苛立ちを察したのか、無理に笑顔を作って、「お正月、これを着て、一緒に歩こう」と、いってくれた。着付けは、自分でできるという。
『……そうか。おれ、こういう笑い方、してたんだ……』
 そんな茅の笑顔をみて、荒野は痛々しさを感じた。荒野自身、以前、樋口未樹に、「寂しそうに笑う」と指摘されたことがある。
 この時の茅は、荒野の目には、確かに「寂しそうな笑い」を浮かべているように見えた。
「……うん。絶対、これ、茅に似合うよ……」
 荒野は、口では、そういった。

 茅は今、自分が何者なのか……あるいは、これから自分が何者に変貌しようとしているのか……そうした不安に、押しつぶされそうになっているはずなのだ……。
 それでも、懸命に抗いながら、なおかつ、荒野に余計な心配をかけまいとしている……。

 そして荒野のほうは、そんな茅に対して、側にいてやることくらいしか、できないのだった……。

 野呂良太に紹介された「東京の男」に接触した三島百合香から、電話がかかってきたのは、その日の夕方だった。
「……あの野郎、頼みもしないのに結構つっこんだことまでくちゃべりってくれやがって……」
 と、悪態混じりの前置きをしてから、三島は、その男から聞いたという内容を、手際よく荒野に話して聞かせた。

 その内容というのはは……今まで一族の内部にいた荒野が、あえて目を背けてきた事柄を、一つ一つ指摘し、暴き立ててていくような感じで……。
『なるほど……おれたち一族って、敵にまわすと、かなりやっかいな存在だ……』
 三島の話す内容を聞きながら、荒野は、かえって冷静さを取り戻し、ふつふつと闘志が沸いてくるのを感じた。
 三島の説明が一区切りしたところで、すぐ隣で聞き耳を立てていた茅に、「例の異常、三島に話しても、いいか?」と確認してから、昨夜の狂態について、簡単に説明する。
「……のろけか? それは」
 一通り、荒野の説明を聞いた後、三島百合香は素っ気なくそういった。
「あの男の話し、今、説明したろ。茅が、なんらかのマインド・コントロールを受けているのは、十中八九、たしかなんだ……荒野との性交渉がトリガーになって、そういう風になる、という暗示をかけられていても、おかしくないってこったろ?
 向こうさんの意図はわからん……いや、待て! ひょっとして……。
 荒野。なぜだかわからんが、向こうさんにとっては、お前さんと茅が一緒に居続けることが、都合がいいらしい。
 一回ヤった後、そうなったってことは……ようするに、色仕掛けが通じる相手なら、それで身動きをとれなくしちまえってこったろ?
 今まで、茅はなんともなかったんだから……。
 で、茅。一緒に聞いているんだろ? お前さん、それでなにか不都合があるのかね?
 茅、お前さん、毎晩のように荒野とやりまくりっるのが、そんなに不服か?それともなんか、実害があるのか? ん?」
 茅は、真っ赤になって俯いていた。
「……いや、わかった。たぶん、そういう意図で、そういう暗示をかけられていた……んだと、思う……」
 ……三島のいうとおり、茅にどんな暗示やトラップが仕掛けられていたとしても……なぜ、そんな暗示がかけられていたのか、その意図を類推すれば、対策をたてることも可能なはずだった。
 対策が可能な相手なら……加納荒野は、例え相手が一族全体であろうとも、簡単には負けない。負けて、やらない……。
 一時、茅の心情を察して、少々弱気になっていた荒野だったが、相手の意図が段々よめてくると、げんきんなもので、持ち前のふてぶてしいまでの自信が蘇ってくる。
「でもとりあえず、今、先生が茅をからかったことは許せないから、帰ったら一発殴る」
 そういって一方的に三島との通話を切り、荒野は茅に向き直った。
「……ということで、おれとしては今夜も茅と遠慮なくやりまくりたいんだが……つき合ってくれますか? お嬢さん」
 茅は真っ赤になりながらも、こくこくと頷いた。

[つづく]
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