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彼女はくノ一! 第三話 (31)

第三話 激闘! 年末年始!!(31)

 終業式、という儀式を終えて家に帰ると、まだ昼前だった。最近ではめずらしく、家には誰もいない。真理は遠出、羽生譲はバイト……あとの二人は、買い物か用事でもあるのだろうか、とか思いつつ、自分一人では昼食の準備をする気にもなれず、着替えてそのままプレハブに向かう。
 ガラリ、と庭の引き戸を開けると、才賀孫子と目があった。
「……あ……」
 孫子は、両手にキャンバスを持ち、顔をこちらに向けた姿勢で固まっている。
 どうやら、スチール棚に放置してあった香也の絵を見ていたらしく、完成品のキャンバスが、何枚か、床に立てかけてある。
 香也が学校にいっている間に、香也の絵を鑑賞していたらしい。
『……どうせ観るんなら、堂々と観にくればいいのに……』
 とか、思わないでもないのだが、今までの経緯もあるから、孫子の性格だと素直になれない部分もあるのだろう。
 孫子がしどろもどろに、
「……ここ、汚いわね。ろくに掃除もしてないでしょ。そう。掃除よ掃除。あんまりあちこちが埃かぶっているからこのわたくしが……」
 とか、言いつのろうとするのを、遮る。
「……あー……好きにみてて、いいから……」
 香也のほうにしてみれば、自分の作業の邪魔さえしなければ、周囲にいる誰がなにをしようが一向に構わないのだが……孫子のほうにしてみれば、自分には目もくれず、すぐにキャンバスに向かおうとする香也の姿にも、カチンとくるものがあるのだった。
「じゃあ、勝手にやらせてもいます!」
 孫子はそういって、スチール棚に放置してある完成品の絵を何枚か両手に抱えて外に出ようとすると、ガラリ、と引き戸が開いた。
「やぁ。ソンシちゃんもきてたのか。なに、絵、持ち出して。え? 掃除? 虫干し? ああ。今日、晴れてるからね。手伝うよ。うん。この間は、あんまじっくり観る時間がなかったから、ちょうどいいや……」
 制服姿のままの、飯島舞花と栗田精一だった。
 さほど親しくない飯島や栗田が手伝っているのを黙ってみているわけにもいかず……こうして何故か、香也も混ざって四人でプレハブの大掃除をすることになってしまった。
 まず、庭にビニールシートを敷いて、香也の絵を一枚一枚広げていく。
 昔描いた絵など、香也にしてみれば失笑してしまいたくなるくらいの稚拙さなのだが、飯島あたりはそんな未熟な絵に関しても、しきりに関心している。
 スチール棚の上がほぼ空になったところで、他の家具も同様に雑巾で丁寧に拭い、床も掃き清める。
 もともとさほど広くないプレハブを四人で分担して掃除するので、掃除自体は、小一時間もかからずに終わった。
 一段落して、大量の荷物を抱えた松島楓が帰宅してきた。
「……今日のお当番だったんで……」
 楓は文字通り、山ほどの食材を、両手で軽々と抱えていた。
 楓が「皆さん、昼食がまだなら、これから作りますから、こちらでご一緒したら……」みたいな誘い方をして、「あ。じゃあ、手伝う」と、飯島舞花も楓の後に続いて母屋の中に姿を消した。
 香也も風を通して寒々しいプレハブに戻る気にならず、他の人々と同じようにぞろぞろと母屋の居間に入った。
 味噌煮込みうどんの昼食をわいわいと騒がしく食べ終え、才賀孫子が「バイト代がはいったから参考書買いにいく」と席を立ち、飯島と栗田のカップルも「ちょっと庭で虫干ししている絵、みせてな。片付けるの手伝うから」と続いて席をたった。それを機に、香也もプレハブに戻ることにし、楓は、食器を片付けるために台所に入る。
 それから二時間ほどプレハブに籠もって作業をすると、「これ、棚に戻し解けばいいの?」と私服に着替えた飯島舞花が、庭に置いていた絵を抱えてプレハブに入ってきた。どうやら一度自分の家に帰って、着替えてきたらしい。
 香也と栗田も手伝って三人で絵を棚に戻し終えると、「これから二人で映画観にいく予定なんで」と、二人は狩野家から去っていった。
 ああいうところは、結構普通のカップルしているよな、と香也は思う。
 二人を見送り、プレハブに戻ろうとしたところで、羽生譲のスーパーカブが帰ってくる。
「寒い寒い」
 といいながら、庭に止めたスーパーカブから降りた羽生譲は、香也に向かって、
「くノ一ちゃんとソンコちゃん、いるかなあ?」
 と香也に尋ねた。羽生譲は、未だに「孫子」を「ソンコ」と呼び間違える。
 楓は居る、孫子は買い物にでて、帰っているかどうかわからない、と答えると、「そうかそうか。それはよかった」といい、「実は、コミケの売り子要員に予定していた子が、急に盲腸で入院してな。代わりの売り子、急いでみつけなけりゃならんのよ」と事情を香也に話した。
 二人で居間に入ると、楓も孫子も炬燵に入って、くつろいでいた。
 羽生譲がコミケの売り子の話しを二人に持ちかけると、
「なんでわたくしが、あんないかがわしい場所にいかなければなりませんの!」
 と、才賀孫子は即座に拒絶する。報道される映像などから偏見をもっているのか、それとも、過去になにかトラウマになるような出来事でも経験しているのか……そんな、にべもない拒絶の仕方だった。
 松島楓のほうは、
「わたしは別に構いませんけど……ただ、何日もここを離れる、ということになると、加納様のお許しを得ませんと……」
 と、答えた。
「……そっかぁ……そういやくノ一ちゃん、カッコいいほうのこうや君の下僕だったな……」
 羽生譲も頭を掻いて納得し、「ちょいとお隣りいって、聞いてこようか」と腰を浮かせかけた時、
「……すいませーん……」
 他ならぬ、当の加納荒野の声が、玄関から聞こえてきた。

[つづき]
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