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彼女はくノ一! 第三話 (32)

第三話 激闘! 年末年始!!(32)

 入ってくる早々、炬燵に手足を潜り込ませた加納荒野に楓の東京行きの件を切り出すと、「……それは別に構わないけど……」と快諾し、その後、
「……おれ、楓に携帯電話持っているかどうか聞きにきたんだけど……」
 と、この家に出向いてきた用件を述べはじめる。
「これから緊急の用件なんかが発生することもあるだろうし……。うん。楓が持っていないようだったら、楓名義の、東京から帰ってくるまでに用意しておこう」
 楓が携帯電話はもっていない、というと、荒野はそういいながら一人頷いた。
「……ついでに……」
 茅が前に着ていたメイド服を貸してくれないか、と、羽生譲は荒野に重ねてお願いした。コスプレ、というほどのことでもないが、売り子の衣装としては、目立つに越したことはない。
「……うーん……あれ、茅、気に入っているみたいだから……どうかなぁ……」
 そんなことを言いつつも、荒野は、即座に茅に電話をかけて、確認してくれる。
「茅、いいって。それから、皆さん、夕食の準備まだですか? まだだったら、茅の料理一緒に食べて欲しいんですけど……」
 しばらく電話で茅と話した後、荒野はそんなことをいいはじめた。
「茅、最近料理に凝っているんですけど、練習熱心過ぎて、時々、作りすぎるんですよ」
 夕食の支度はまだだったので、全員でぞろぞろ荒野たちのマンションに赴くことになった。

 全員で荒野たちの部屋に入ると、メイド服を着た茅が出迎えてくれて、紅茶をふるまってくれた。茅がいれてくれた紅茶を楽しみつつ、試着、と称して、何故か女性陣が交代でメイド服に着替えはじめる。茅よりも背丈がある羽生譲が着ると、「なんとか着れないこともない」といった感じで、縦方向のサイズが圧倒的に足りなかった。スカートの部分が、ミニに見えてしまう。茅とほぼ同じ背丈の楓が着た場合、少しきつい部分もあったが、おおむねサイズ的にぴったりで、よく似合ってもいた。才賀孫子は、「使用人の服なんか」とかいいながら、決して袖を通そうとはしなかった。
 そんなことをしながら、和やかに茅がいれてくれた紅茶を堪能していると、荒野に電話がかかってきて、その電話を受けた荒野は、血相を変えて、もの凄い勢いでマンションの部屋を飛び出した。
 加納香也や羽生譲の耳には、三島百合香の声で、「……のろが……」とか聞こえたような気もするが、ごくぐく短い時間のことだったので、鮮明な記憶はない。
 その電話に反応したのは荒野だけではなく、座っていた茅も飛び起きて、普段の穏やかさとはうってかわった俊敏な動作で隣の部屋に飛び込む。松島楓に至っては、なぜかベランダに向かって走りだし、なんとそこから、外に向かって飛び出した。
 慌てて香也が後を追って見上げると、メイド服を着たまま、楓はするするとベランダの手すりを手がかりにして、上へ上へと伝い上がっている。
 五フロア上にある三島の部屋にむかっているようだった。
「これ、才賀の! 羽生、来て!」
 凛とした茅の声が聞こえたので振り返ると、茅は、羽生譲の手を引いて、荒野が出て行ったとき開けはなったままのドアから外に出るところだった。
 茅からごついライフルを渡された才賀孫子は、はじめ狼狽した様子を見せたが、同じく一体なにが起こり始めているのか理解していない加納香也の視線に気づくと、急にしゃんとした表情になり、
「なんで、わたくしが……」
 才賀孫子は、そんなことをいいながらも、ベランダにいる香也の隣に、肩を並べるようにして立つ。

 視線を上に戻すと、ちょうど三島の部屋からコートを着た人間が、こちらに背中を向けて飛び降りたところだった。思わず、
「あっ!」
 と香也が叫び声を上げのるほぼ同時に、コート姿は、くん、と、不自然に落下軌道を変え、非常階段の手すりに取り付いた。コート姿は慌てているのか、手すりから非常階段の上に乗り移る際、片手の手袋を落としたのが見えた。
 そこまで到達しかかっていた松島楓も、自力で、非常階段まで飛び移ろうとする。普通なら飛び移れない距離だったが、楓は、難なく非常階段まで跳躍した。
 コート姿は、楓から逃げるように、階段を下りはじめた。滑るような動きで、足音はたてていない。踊り場から踊り場まで、一秒もかけない非常識な早さだった。かといって、一気に飛び降りているようにも見えない。コート姿は、階段を下りながらも、時々、不規則に体を左右に振っていた。

 コート姿を追う、メイド服の楓。少し遅れて、いつの間にか姿を現した加納荒野が続く。
 ……どうやら、あのコート姿を、楓や荒野が追跡しているらしい……。
 ということを、香也がどうにか呑み込んだ瞬間、才賀孫子の携帯から呼び出し音が聞こえた。
『才賀! あのコート、撃って! 大丈夫。当てようとしてもあたらないから!』
 孫子の携帯から、茅のそんな声が聞こえる。
 孫子は、後半の「当てようとしてもあたらない」の部分で、表情を変えた。
 挑発、と、判断したらしい。
 即座に、本当に持っていたライフルを構えはじめ、驚いたことに、本当に引き金を引いて撃ち始めた。サイレンサーを装備しているのか、派手な銃声が響くこともなく、その代わり、孫子が引き金を引く毎に、「ぷしゅう、ぷしゅう」という間の抜けた排気音が聞こえる。同時に、才賀孫子の舌打ちも聞こえたので、茅の言うとおり、「当てようとしてもあたらない」らしかった。

 ……ある意味、分かりやすい性格だよな、彼女……。
 とか思いつつ、荒野は、持ってきたスケッチブックを広げ、孫子の「射撃のポーズ」をデッサンしはじめる。
 他ではまずお目にかかれないモチーフであるし、このような場では、自分は役立たずのお荷物である、という自覚もある。だとするなら、騒ぎが収束するまでは、好きにやらせて貰おう……。

 いつの間にか孫子は、携帯電話に耳をあてながら、標準を修正するようになった。
 どうやら、茅が指示を出しているらしい。

[つづき]
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