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彼女はくノ一! 第三話 (36)

第三話 激闘! 年末年始!!(36)

 たまたま同席していた羽生譲も、一連の話しを聞いていた。
 野呂良太がいきなり羽生譲が知らない「加納妹の正体」なるものについて延々と推測を並べはじめると、最初は呆気にとられ、次に納得していく。
『……そっかぁ……似てないとは思ってたけど……そうか、やはり血は繋がっていなかったか……』
 全体に、羽生譲の感想は、そんな平凡なものだった。
 すでに謎のニンジャ集団の首領の跡取りの隣人がいて、くノ一や財閥のお嬢様と同居しているのである。
 今更、友人が強化人間だった、と判明しても……羽生譲の感覚的には、「そうかそうきたか」程度の、軽いインパクトでしかなかった。
 基本的に羽生譲は、目前の人間について、極端に性格や素行が悪くない限り、自出や来歴を気にすることはない……という、ごくごく一般的な日本の庶民的な気質を持ち合わせていたので、そうしたことに関して、あまり深く受け止めなかったし、考えもしなかった……。
『……だから、どうした?』
 というのが、羽生譲の結論である。

 たまたま同席していた才賀孫子も、一連の話しを聞いていた。
 野呂良太がいきなり才賀孫子が知らない「加納妹の正体」なるものについて延々と推測を並べはじめると、最初は呆気にとられ、次に納得していく。
『……道理で浮世離れしている、と思いましたわ……』
 孫子は、自分の事を棚に上げて、そんなことを思う。今までの茅の言動を頭の中で走査し、そのちぐはぐな部分をピックアップして、チェックする。孫子は茅の生い立ちや特殊な育ち方について、なんの説明も受けていなかったわけだが……なるほど、今、野呂が説明したような事情が背景にあったのならば、合点がいく点が多い。
『……で、加納荒野の役割は、その子がうまく一般社会に順応できるかまでの教育係兼お目付役兼護衛、という形、か……』
 護衛、には、松島楓も含まれるのだろう……。
 一度「決闘」を経験して以来、才賀孫子は、なんだかんだで松島楓のことを認めている。性格的にはともかく、戦力的には、「たいしたもの」だと……。
『……加納荒野や楓がこんな所でくすぶっているのはおかしいと思っていましたが、そういう事情なら……』
 なんとか納得できる、と、孫子は思う。
 それはともかく……。
『……そういう、茅という特殊な存在を……一族の加納以外の勢力は、どう扱うつもりなのかしらね……』
 茅と……それを守ろうとする、荒野と楓の立場は、かなり微妙だ……と、一族について、表面的な知識を持ち合わせている孫子は思う。
 長老の涼治には、それなりに大事にされているようだが、熱心に庇護されているわけではないらしい。茅、という一族の将来にとって重要な因子を、こんな薄い人員で扱っている、ということは……荒野も、試されているのだろう。
 今後、茅をどのように扱うのか……その度量を……。
『……面白くなってきましたわ……』
 そうした場にたまたま居合わせた、才賀という部外者……自分の立ち位置を確認して、孫子は、そう独りごちる。自分たちのような特殊な存在が、年々からはじまる、普通の、一般人の学生としての生活を全うできるのか、否か……。

 たまたま同席していた狩野香也も、一連の話しを聞いていた。
 野呂良太がいきなり狩野香也が知らない「加納妹の正体」なるものについて延々と推測を並べはじめると、最初は呆気にとられ、次に納得していく。
『……ふーん……』
 ……まあ、納得、といっても、香也の場合、こんな簡単な感慨をもった、という程度のことなのだが……。
 香也は、遺伝子操作云々についても、時折テレビ番組で取り上げられる程度の情報、あるいは、羽生譲が資料として持ち込んでくるマンガやアニメの設定程度の情報にしか触れておらず、従って、
『……あれって、もう、本当にできるんだ……』
 くらいの感慨しか、湧きようがなかった。
 狩野香也にとっては、茅の正体も、社会情勢その他の「自分にはあまり関心の持てない情報」の一部にすぎず、従って深く心にとどめる、ということもなかった。

 たまたま同席していた松島楓も、一連の話しを聞いていた。
 野呂良太がいきなり松島楓が知らない「加納妹の正体」なるものについて延々と推測を並べはじめると、最初は呆気にとられ、次に納得していく。
『……え? あれ? えっ、とぉ……』
 香也同様、遺伝子操作うんうんについての正確な知識を持たない松島楓は、「茅が、今後一族の他の勢力に狙われる可能性がある」という部分だけをかろうじて理解した。
『……って、ことはぁ……敵さんは、一族の関係者、っていうことなんですかぁ?』
 想定される敵が一般人ならば、自分と荒野が揃っていれば、多少武装していてもなんとかしのげる……楓は、そう思っている。
 しかし、同じ基本系の技が使え、それ以外に門外不出のオプション系の技術まで使える、加納以外の六主家が相手となると……状況的には、かなり厳しくなるのではないか……。
 それまで楓は、茅のことは「なんとなく重要人物らしい」という認識しか持っていなかった。なんといっても、自分はともかく、荒野が直々に身の回りの世話をしているのだ。しかし……。
『……そこまで複雑なことになっているとは……』
 思わなかった。基本的に楓は、その手の想像力に乏しい側面があるし、また、「自分は命じられた仕事さえ、こなしていればいい」とも、思っている……。
『……でも、負けないのです……』
 楓は、心中で拳を握りしめる。気合いでどうにかなる問題なのかどうか……とは、自分でも不審に思っているが、それでも、自分は荒野の指示に従い、自分の出来ることを完遂するのみ、と……。
 ここ数日、狩野家での生活が気に入ってしまい、はしゃぎ気味だった自分に、渇を入れられた思いがした。そこまで考えて、ふと、あることに気づく。
『……あっ!』
 楓は、無言のまま羽生譲のほうに振り返った。
 そこまで難しい局面なら……今、自分がここを離れるのは、やはり……。
「楓」
 そんな楓の心中を見透かしたかのように、荒野は楓に向い、静かに声をかけた。
「なにも心配するな。予定通り羽生さんと東京に行け。楽しんでこい。それとな……お前、気張りすぎだ……」
 ……例えば昨日、お前、何時間寝た?
 と荒野に問いただされ、楓は返答につまる。
 深夜や早朝にこっそり起き出して、トレーニングを兼ねて、楓が夜な夜なこの近辺を飛び回っていたことを、当然のことながら荒野は察知していた。他の人々には気づかれなくても、荒野はごまかせないだろうと楓自身も思っていたが……。
「張り切るのはいいが、今……いや、今後、お前に倒れられたりすると、いざという時に、こっちが困るんだ。
 羽生さんと東京にいって、たまには羽延ばしてこい」
 息抜きも仕事のうちだ、と、荒野は、そういう言い方をした。
「加納!」
 そんなやりとりをみていた才賀孫子が、荒野のほうに近寄ってくる。
「わたくしにも、なにか出来ることがあれば……」
 加納の跡取りに貸しをつくっておくのは、今後のためにも得策である、というのが、孫子の思考法だ。
「うん。じゃあ、今後も茅のいい友人でいてくれ」
 荒野の返答は素っ気ないものだったが。「仕事として才賀に助力を頼むこ気はない」という意思表示であるとも、「茅の友人なら、茅に危害が加わりそうになった時、助けるのは当然だ」とも、解釈できる……。
『……一筋縄ではいかないか……』
 孫子は心中でそう呟いた。しかし孫子は、そうした複雑な状況の中を泳ぐのが、嫌いではない。
「……しかし、こっちはこっちで大変だなあ……楓と羽生さんが東京行くとなると……何日かこの家、才賀と香也君の二人きりになるんだ……」
 続いて荒野がそう漏らすと、その場にいたほぼ全員が「えっ」という顔をして、お互いの顔を見合わせる。

 羽生譲も松島楓も、才賀孫子も狩野香也も……そのことについて、荒野に指摘されるまで、気づかなかったらしい……。

[つづき]
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