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第三話 激闘! 年末年始!!(37)
「……あは。あはは……」
羽生譲が場を取り繕うように虚ろな笑い声を上げた。
「……まあ、うちのこーちゃんに限って、女の子を押し倒すほどの度胸、ないしぃ……」
「女の子には、しょっちゅう押し倒されているようですが……」
ぴしゃり、という感じで、才賀孫子が羽生譲の言葉を遮るよ。かつて二度ほど、孫子はその現場を目撃している。
「……あうっ!」
その当事者の一人でもある羽生譲は、額を押さえてのけぞった。
「……痛いところついてくるなぁ、ソンシちゃんは……。
だからあれは、前にも説明したとおり、いろいろ事情があって……ついでに、ものの弾みで……」
「そのような説明は、必要ありません」
才賀孫子は、羽生譲を睨んだ。
「問題は、真理さんから留守を預かったあなたが、責任を放棄してこの家の留守にして、年頃の男女を数日二人きりで過ごさせてもいいのか、ということです」
「……なんだか、こっちはこっちで面白そうなことになってきたな……」
三島百合香がにやにや笑いながら成り行きを見守っている。明らかに、面白がっていた。
「……いや、たしかに年頃の男女二人きり、というのは間違いないけどさ……」
羽生譲は、手をおなかのあたりで組んで指をもじもじ動かし、才賀孫子を上目使いに見た。
「……真理さん、そんなに了見狭くないぞ。
それに、仮に、だよ。
うちのこーちゃんがソンシちゃんを襲ったとして……そのまま好きにさせるようなソンシちゃんじゃあ、なかろう?」
「当然です! 一秒もかからず沈黙させます!」
才賀孫子は、かろうじて「永遠に」という一語を付け加えたい衝動を堪える。
「……それと、ソンシちゃんの方が、こーちゃんに迫る心配もなかろう?」
「もっと、あり得ません!」
「じゃあ、二人きりでも全然問題ないじゃないか。間違いの起こる隙なし、だ。
それとも……」
羽生譲は、狼狽した様子で成り行きを見守っていた松島楓のほうを「びしぃ!」っと指さした。
「ソンシちゃんもうちらと一緒に来るか? その服着て、どーじんし一緒に売るか?」
才賀孫子は、羽生譲の指先をたどって、松島楓のほうをまじまじとみる。松島楓は、メイド服のままだった。
『……あの服を着て、コミケで売り子、ですって……』
才賀孫子の脳裏に、様々な思惑が去来する。
「……っふ。負けたわ……」
孫子は、そういってうやむやのうちに妥協した。
「……留守は任されたから、明日から二人で東京にいって、せいぜい頑張ってきなさい……」
孫子は晴れ晴れとした作り笑いを浮かべ、羽生譲にそう宣言する。
「……お前んところって、いつもこんな感じなのか……」
「だからこの家、おれんところってわけじゃないって!」
すっかり傍観者になっていった野呂良太と加納荒野はそんなことを言い合い、三島百合香は、羽生譲に親指を立てて「ぐっじょぶ! ナイス交渉!」とかいっている。
「それ、おいしい?」
「ん。いける」
狩野香也は周囲の騒ぎもどこ吹く風と目前の料理を食べ続け、加納茅は自分が作った料理の味が気になるのか、大体全員に味の感想を聞いて廻っている。
「……というわけで、羽生譲以下一名、明日より三日間、気張ってとーきょーでどーじんしを売って売って売りまくるのであります!
いくぞ以下一名!」
「はい! 師匠!」
翌朝、そんなことをいいながら、羽生譲と松島楓は早い時間に家を後にした。ホテルにチェックインして荷物を置いた後、軽く東京見物して明日に備えるという。売り物の本は製本所から直接会場に搬入されるので、着替えの入ったスーツケースだけを持っていた。
「わたし、東京行くのも新幹線乗るのも初めてなんですよー」
「そうかそうか。向こういったらなんか旨いもん食いにいこうなー。売り上げがよければ食事もどんどんごーせーにしていくから、そのつもりでー……」
「はい! 師匠!」
そんなことをいいながら意気揚々と駅に向かう二人を見送ると、狩野香也と才賀孫子の二人が取り残される。
なんとなく、顔を見合わせるが、香也は孫子かけるべき言葉が思い浮かばない……。
割と、気まずい。
「……じゃ、そういうことで……」
香也がきびすを返してさっさとプレハブに引っ込もうとすると、
「お待ちなさい!」
と、孫子に襟首を掴まれた。
「今日は何日かご存じかしら?」
「……二十七日……」
「何月の?」
「……十二月……」
「そう。十二月、二十七日。年末ですわよねぇ……」
香也は、孫子がなにをいいだすのか予測がつかず、内心ではかなりビクビクしている。
「……しかも、三十一日まで、この家にはわたしたち、二人きり……。
これって、とてもいい機会だと思いません?」
才賀孫子は、極上の笑顔を作って、狩野荒野とまともに目を見合わせた。
「……ということで、これから大掃除をいたします!
この家、広いし部屋数も多いから、男手は必須!」
それから五日間、香也は孫子にいいようにこき使われた。
普段、運動らしい運動をしない香也にとって、かなりハードな日々だった。
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つづき]
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