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彼女はくノ一! 第三話 (40)

第三話 激闘! 年末年始!!(40)

「ええと……今日、二十九日だったけ?」
 大掃除を終えて一息ついた所で、樋口明日樹は携帯の画面を確認した。
「そっかぁ……じゃあ、今日は帰らなくちゃ……両親が今日から旅行に行く予定だから、大樹のご飯作らないと……」
 そういいながらも、明日樹はなかなか腰を上げようとしない。
「なんなら、あなたもこっちに越してくる?」
 孫子が、珍しくそんな話しを樋口に振ってくる。
「そんなこと、できるわけないでしょ。うち、両親とも健在で、こっちにお世話になる理由ないし……。それに……たしかにこの家、居心地がいいけど、でも、それだけだと……なんか違う、とも、思うし……。
 ね。才賀さんの家はお金持ちなんでしょ? いきなりこんな庶民の家に放り込まれて、不自由だと思わないないの?」
「たしかにお金はありましたけど……その、才賀は、かなり特殊ですから……」
 年端も行かない子供にナイフ一本渡して未開地に数十日以上放り出す、などという「教育」を普通にやられている孫子は、曖昧に言葉を濁すしかない。
「これでもわたくし、全然甘やかされておりませんのよ……」
 軽く眉をひそめて肩をすくめる。そんな仕草が気障に映らない風貌を、孫子は持っていた。
 たしかに実家の才賀は何代も続いたお金持ちで、自分はそこの令嬢……に、あたるわけだが……世間一般でいう、いわゆる「セレブ」とか「深窓の令嬢」と同一視されると、かなりの違和感を覚える孫子であった。
「……ふーん……まあ、どんなことろでも、事情はあるか……」
 明日樹は、炬燵の天版に突っ伏して、今度は香也に話しを降る。
「ね。狩野君はどう? この家、やっぱ居心地、いい?」
「……んー……この家、というよりも……」
 香也は、なにをいうにも、大体最初に言いよどむ。
「……真理さんや、順也さんが、好きにさせてくれるから……気楽、ではある……と、思う……」
「順也さん、狩野君に英才教育とかしるんじゃないの?」
「しないしない。
 順也さん、『絵なんて、描きたいやつが勝手に描くもんだ』っていってるよ」
 実際、香也は職業画家である順也に指導とかをしてもらった覚えが、見事にない。
 子供の頃、ちょっと目を離した隙に、香也の描きかけの絵を順也が勝手に完成させてしまった事はあったが……あれは、単純に悪戯だろう。
「うーん。順也さん自身が、子供みたいな人だからなぁ……ぼくと二人して、真理さんの掌の上で遊ばせてもらっている、みたいな感じかなあ、家は……」
 明日樹は、「そうなんだ」と頷いただけで、それ以上この話題には突っ込んだことをいってこなかった。
 しばらく休んで、明日樹は帰っていった。

 孫子と二人残された形の香也は、ひどく気まずく思いはじめた。なにかしら用事や話題がある時はいいのだが、そうでない時に孫子と二人きりになると、香也はかなり緊張する。
「……今日は、もう絵は描きませんの?」
 炬燵にあたりながら参考書を開いていた孫子がいきなりそういったので、香也はビクリ、と、体を震わせる。
「え? あ。うん。ちょっと気が抜けちゃって……それに、時間的にも半端だし……」
 数日前から、香也は「自分の絵の新しい方向性」を本格的に模索しはじめている……が、未だ、具体的な構想は見えてこない。それと、すでに夕方といってもいい時刻であり、今から作業を開始しても、ちょうど集中して頃に夕食を呼ばれることになる。
 だから、「気が抜けて」いることも、「時間的に半端」であることも、決して嘘ではない。
「あなた、少し前に今度は人間を描く、とかいってましたわよね?」
「……う、うん」
「わたくしをモデルにしたい時は、そうおっしゃい。協力できる時は、するから」
「……う、う……ええ!」
 思わず相槌を打ちそうになって、途中から今度は絶叫する香也だった。
「……な、なんで?」
「忘れたとは、いわせませんわ……」
 孫子は能面のような表情になって、すうぅっと目を細める。
「あなた、この間、このわたくしに向かって、『動くな』と命令いたしましたよねぇ……」
「……あ!」
 野呂が来た日、ライフルを構えた孫子をデッサンした……時のことを、香也はようやく思い出した。
「……あ、あれは、珍しいポーズだったから、つい……」
 思い出してみるに、確かに自分は、孫子に向かってかなり強い調子で「動くな」とかいったような気もする……。
「べつに、謝れ、とはいってません。ただ、いきなりあんなことになるよりは、あらかじめ了解をとってからやってもらったほうがいい、と、そういっているのです……」
 孫子は少し頬を染め、顔を伏せたが……これはその時、香也の命令に逆らえなかった自分を恥じている……と、本人は、思っている。
「わたくし、同年輩の人間からあんな強く命令されたの、初めてでしたの……」
「……あぅあぅあぅ……」
 香也はしばらく、傍目にそうとわかるほどガクブルしていたが、すぐに、
「ちょ、ちょっと用事思い出した!」
 とかいって、居間から飛び出していった。

「……馬鹿」
 一人残された孫子は、ぽつんと独り言をいった。

[つづき]
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孫子がツンデレに!

  • 2006/02/05(Sun) 01:47 
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