2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第三話 (43)

第三話 激闘! 年末年始!!(43)

 翌日、香也は「とにかく元の、自分本来のペースを取り戻そう」と決意し、相変わらず気まずいままの才賀孫子との朝食を終えると、そそくさと庭のプレハブに向かった。灯油ストーブに日を入れた後、とりあえず、リハビリを兼ねてスケッチブックに鉛筆描きで、思いつくままに昨日、ショッピング・センターで見かけた人たちの全身像を簡単にスケッチしていく。大掃除だとかで数日絵筆を取らない状態だったので、手をならす必要も感じていたので、まずは感覚を取り戻すため、とにかくなにも考えず、出来るだけ早く手を動かす。一体につき五分以上かけず、当然、細部は書き込むことはできず、ぼんやりとした人物像をA4のスケッチブック一面に三体から五体くらい書き続けてページをめくっていくと、鉛筆の芯が紙を滑る感覚に、段々「暖まってきた」という感触を得る……。

 二時間ほどそうして、香也が「かなり調子を取り戻して来た」と自身を取り戻しかけた時、孫子に案内されて堺雅史と柏あんなの二人がプレハブに入ってきた。二人とも、ぎっしりと紙の束の入った封筒を持っており、どうやら、それが昨日話していたゲームの資料、ということになるらしい。
『昨日の今日で、随分と用意がいいな……』
 と、何故かそのままプレハブから出て行こうとしない孫子を含めた三人に折りたたみ椅子をすすめながら、香也は思った。
「……これが、昨日話したゲームのシナリオとか設定書とかになるんだけど……」
 と、香也に封筒を差し出しながら、堺雅史はプレハブの内部をきょろきょろと落ち着きなく見渡している。母屋には入ったことはあってもプレハブの中を見るの初めてになる柏あんなも似たような感じで、スチール棚に無造作に積み上げられた紙やキャンバスの「量」に、半ば圧倒され半ば呆れているような表情をしていた。
「……んー……でも、これだけあると……すぐに全部には目を通せないなぁ……」
 ずっしりと重い封筒を受け取りながら、香也はいった。基本的に面倒くさがり屋な香也は、早くも昨日「話しを聞く」と約束したことを後悔し始めている。
「あ。それ、たまたまあったハードコピーと、昨日、急いでプリントアウトしたものが未整理でごっちゃになっているから嵩張っているけど……未整理で、結構すかすかなんで、実際には、見た目ほどには時間がかからないと思う……」
 堺は、慌てて香也に説明を補足する。
 香也が最初の封筒を開けて中身を取り出してみると、ゲーム内のタイムシートや分岐の示しているらしいチャート、登場人物一覧の箇条書き、その他、断片的なアイデアなどのメモが混在していて、確かに、ぎっしりと文章が詰まっているわけではない。
 しかし、こういうのはある程度予備知識を持っている開発者間で用いられる資料をいきなり持ってこられても、香也にはほとんど理解できそうになかった。
 その旨を香也が伝えると、堺はそういう反応も予期していたのか、
「どこかに使えるPC、あります?」
 といって、上着のポケットからケースに収まった一枚のDVDを取り出した。
「そういうと思って、今まで完成している分、持ってきたんだけど……」
「……んー……パソコンなら、譲さんのと真理さんのがあるけど……」
 留守中に勝手に使って良いのかな? という躊躇いがあったため、香也の返答は歯切れの悪いものになる。
「わたくしのを使って貰っても構いませんわ」
 いきなり、それまで黙って見守っていた才賀孫子が、口を開いた。
「……ねー。
 みんながそっちにいっている間、わたしはこっちに残っててもいいかな? 狩野君、ここにある絵、見せてもらっていい?」
 そんなことをいいはじめた柏あんなを除いた三人が、母屋に向かった。

 その日、香也は初めて才賀孫子の部屋に入った。
 孫子の部屋には机と本棚、それにクローゼットなどの必要最小限の家具しか持ち込まれておらず、機能的ではあったが、同時にどこか寒々とした印象も受けた。
 孫子はノートパソコンを取り出し、机の上に置こうとして、手を止めた。
「……考えてみたら、三人だと、居間でみるほうが都合がいいですわね……」
 そういって、ノートパソコンを持って炬燵のある居間へと向かう。香也と堺も、それに続く。

 炬燵の上でノートパソコンを立ち上げ、堺が持ち込んだDVDをセットすと、自動的にゲーム画面が起動した。
「教室ぼっこ(仮)」という、ゲームのタイトルらしい文字列が中央に大きく表示されていて、その下に、やや小さめの文字で、start、configuration、save、load、と表示されている。
「まだ開発中だから、このタイトルも仮題だし、文字も、フォントを大きく表示させているだけだけど、完成した時はちゃんとしたスタート画面を作るよ」
 そういって、堺は、慣れた手つきで孫子のノートパソコンのキーボードを操作しながら、制作中のゲームの内容を説明しはじめた。堺が「start」を選択すると、黒一色の背景に、白いフォントがずらずらと並びはじめる。


よくある「学校の怪談」が、その学校にも伝わっている……。

 二年B組には、毎年、出席簿に記載されていない生徒が一人、必ず紛れ込む……。

 出席を取っても、点呼をしても、なにも異常はない。
 しかし、教壇から教室を見渡して、指さして数えてみると、明らかに、一人多い。

 その「いるはずのない生徒」が誰であるのか、いくら調べても決して判明することはない……。

 ただ、一年の間に、そのクラスに欠員が出た時のにのみ、その「いるはずのない生徒」は、出現しなくなる……。
 どうやら、欠員分の生徒に成り代わって、普通の生徒として実在しはじめるらしい……。


 堺が何度かエンターキーを叩くと、辛うじて「人間」と判別できる殴り書きの輪郭線が、左右に二つ、出現した。顔にあたる部分は、「へのへのもへじ」が書かれている。
「ね。今のところ人物の立ち絵は、こんな感じ。絵師がなかなか見つからないんで、このままでいくと、シュルエットだけとか、写真を加工して誤魔化すとか、そんな感じになっちゃう……」
 そして堺雅史は、ゲームの概要を説明しはじめた。

「みれば解ると思うけど、基本的な設定は「座敷ぼっこ」のパクリ。
 そのクラスに転校してきた生徒が、情報を集めたり色々な人に話を聞いたりして矛盾点を探したりして、クラスの中にいるはずの「教室ぼっこ」を特定しようとする、一種の推理ゲーム……に、なるのかなぁ……。

 制作者の中にミステリが好きな人や設定作るのが好きな人が何人かいて、わいわい話しているうちに、
『これ、実際に作ったら面白いんじゃないか?』
 ってことになって、ここまで作っちゃったんだけど……。

 ただ、みんな凝り性だから……ほら、この封筒の中身も、ほとんどキャラクターの設定集だし……。
 これだけ登場人物が多いと、流石にヴィジュアル面でもキャラの差別化も欲しくなって、四十人くらいの顔を明確に描き分けられる絵師を捜していたところで……」

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking  HONなび


↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのきゅう]
アダルト検索ピーチナビ FC2ブログランキング アダルト検索風俗検索 アダルトなび2 アダルトサーチSa'gasuzo アダルト検索 ASS N@VI 満鉄総本部 ERO-RANK.COM アダルトのソムリエ アダルト簡単ナビ 0's ADULTちゃんねる


Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ