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彼女はくノ一! 第三話 (46)

第三話 激闘! 年末年始!!(46)

 簡単な昼食を済ませ、羽生たちが買ってきた土産の菓子折を開けてお茶などしながら、なんとなく全員で居間に居座ったまま、だらだらと過ごしているうちに、飯島舞花と栗田精一が尋ねてきた。
 飯島舞花が、
「掃除してたら、押し入れの奥から、使ってない蕎麦打ちの道具が出てきたんだけど……」
 と、玄関口で早口でまくしたてる。要するに、それで年越し蕎麦を打って、この家のみんなと食べてはどうか、ということらしい。
「あー。いいんじゃないか? うちのほうも、一食分、手間が省けて助かるし……」
 この家の住人を代表して、羽生譲が答えると、
「……じゃあ、早速材料買ってきます!」
 と、飯島が勢いよくきびすを返そうとする。
「どうせなら、多めに買ってこいなー。
 狩野兄弟とか、あすきーちゃんところにも声かけておくからー……」
 その背中に、羽生譲は、そう声をかけた。飯島の後に続いて、栗田精一が頭を下げながら、「すいませんねー。まーねー、いいだしたら聞かないし、あれで寂しがり屋なもんですから……」とかいいながた、飯島舞花の後を追う。
 一旦マンションの方に消えた二人は、すぐに自転車をこいで戻ってきて狩野家の前の道を通過した。
「……って、いうことだから、ソンシちゃん、茅ちゃんとあすきーちゃんとこに、連絡よろしくな」
「……いいですけど……」
 同性で、年齢が近く、メアドを交換している才賀孫子が、ほぼ自動的にこのような時の連絡係をすることになっている。
 飯島舞花と栗田精一は三十分もせずに買い物から戻り、前後して、加納兄弟と樋口兄弟も集まってくる。
「……なんかクリスマス以来、この面子、固定しちゃっているね……」
 とかいいながら、樋口明日樹は自然に台所に入り込んでお茶を入れる手伝いをしている。何故か明日樹と共についてきた大樹も炬燵に入って、荒野、栗田、香也とどうでもいいようなことを話し込んでいる。大樹と荒野は以前かた面識があり、栗田と大樹は同じクラス、香也と栗田たちは、クラスは違うものの、一年生だ。
 また、栗田と大樹は、現在だけでなく、同じ地元民ということで、小学校の頃から同じクラスになることが多く、仲がよい……と、言い切ってしまうのは微妙だが、お互いのことをよく知っている、腐れ縁的な知り合いだった。共通の知人の近況など、それなりに話題がある。
「……しかしまあ、飯島先輩が、あのまーねーだったとはなー……よくぞ育ったもんだ」
「うーん……そういや大樹も、おれも一緒にまーねーにいじめられてた口だよなー、あの頃は……」
「……それでもでも、いいじゃないか、お前は……。
 その時にフラグ立てて、今ではちゃんとつきあってるんだから……そこいくとおれは……」
「……フラグって……そんなにいい面ばかりじゃないぞ、まーねーのお供は……」
「はい! そんなこといっている暇あったら、セイッチはこっち来て手伝う!」
 いつの間にか二人の背後に忍び寄ってきた飯島舞花が、栗田の耳を摘んで小強引に立たせ、にこやかな表情のまま、台所の方に引きずっていった。
「……まあ、あっちはあっちでいいとして……ワケわかんないのは……」
 樋口大樹は紙の束を炬燵の天板の上に乗っけてぼーっと眺めていた狩野香也を指さす。
「お前だお前! お前のところ、一体どうなっているんだ! うちのあすねーだけじゃなくて、だな。
 こーんなぷに系とか……」
 と、松島楓を指さす。
「こーんな怒った表情が魅力的なおねーさんとか……」
 と、才賀孫子を指さす。
「こーんな年上の美形おねーさんとか……」
 と、羽生譲を指さす。
「こういった方々全員と、同居している……だとぉ……。
 ふざけるな!
 うはうはハーレム状態じゃないか!」
「……あー。少年……」
 羽生譲は、真剣な面持ちで、こほん、と一つ、咳払いをした。
「うちのこーちゃんは、もう一人、血のつながりがない若くて美形な義理母とも、同居しておる。
 さらにいうと、だな……この家には、外見上はとってもロリロリーな、白衣が似合う女教師も、頻繁に遊びに来ておる……」
「それどこのエロゲですか!」
 樋口大樹がさも口惜しそうに叫んで、炬燵の天板を、拳で叩き出す。
「この馬鹿!」
 その樋口大樹の脳天を、背後に立った樋口明日樹が、手にしていたお盆ではたいた。
「他人様の家でなに恥ずかしいこと叫んでるか、この、馬鹿、弟が……」
 樋口明日樹は、大樹が「もう、止めて、勘弁してくれ……」と懇願するまで、ごんごんごん、と、いつまでも大樹の頭をお盆ではたき続ける。すっかり、目つきが座っていた。

 そんなことをしているうちに、楓からメイド服を取り戻した茅がかなり本格的な紅茶を御馳走してくれたりして、すっかりまったりモードになってしまった。
 松島楓は届いたばかりの携帯を取説と首っ引きで弄っていて、周囲の孫子や茅や飯島が、アドバイスしたり番号やメアドの交換をしたりしている。テレビは年末特有の毒にも薬にもならない番組を垂れ流しており、荒野がその番組を不思議そうに眺めている。香也は、堺が持ってきた資料に目を通し終わったのか、スケッチブックを取り出して、資料を見ながらさらさらとシャーペンを走らせはじめる。栗田と大樹は楓の携帯よりもそっちのほうが珍しいのか、香也の手元を覗き込んでいる。
 そのうち、順也の個展に行っていて数日留守にしていた狩野真理の車が帰ってきて、それでは、と飯島舞花が挽いてあった蕎麦粉をこね始める。はじめは物珍しさでその作業をみていた面々も、結局順番に手を出すことになり、こねる者、こねた生地を麺棒で平らに延ばす者、それを切る者、など、自然にローテーションが出来ていった。
 みんなでわいわいやるうちに、何だが予想以上に生蕎麦が出来上がってしまったが、ゆでて皆で食べ始めると、意外に早く、全てなくなってしまった。
 自分たちの手で作った蕎麦は、「……本物の蕎麦って、こういう食べ物だったのか……」という風味が、ちゃんと感じられ、まったくもって蕎麦の味がした。麺の細さが不揃いだったりも、したのだが。

[つづき]
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