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髪長姫は最後に笑う。第四章(27)

第四章 「叔父と義姉」(27)

 茅はしばらくソファの上でぐったりとしていたが、しばらく休憩してから薄目を開けて荒野の硬直に手を伸ばす。
「……おいおい……茅、大丈夫?」
 荒野は半ば呆れながらいった。
「疲れているなら、今日は最後までやらなくても……」
 そういいながらも、荒野の男性は先端が腹につかんばかりに反り返っている。
「……やるの……」
 茅は、荒い呼吸の中からも、そういう。
「荒野……他の人に……荒神に、あげない……」
 荒野は見えない物体に頭を殴られたような気がした。
『……荒神に、って……』
 荒野自身は、荒神の過激なスキンシップを充分に嫌がっているつもりだったが……。
『……まてよ……』
 茅の、性知識は極めて表層的なもので、かつ、かなり偏重がある。
 教科書か百科事典に書かれているような無味乾燥な文献、テレビ番組で放映する程度のラブシーン、それに、羽生譲が所有しているようなマンガ……事に、最後のが致命的で……。
 荒野は、荒神に抱きつかれた荒野を見て、茅が何度か「ぼーいずらぶ」という言葉を呟いていたことを思い出した。「ぼーいずらぶ」とは、つまり、同性愛を題材にしたある種のフィクションのカテゴライズ……と、荒野は理解している。茅も、羽生譲経由でその手の作品に触れている……。
 しかし茅は……そうした同性愛者や同性愛的な傾向を持つ人たちが、社会全般でどういう扱いを受け、どう位置づけされているのか……といった知識をもっているのかどうか……。
 性愛や恋愛に、ノーマルとされるものと、アブノーマルとされるものの、マイノリティとマジョリティの区別があることなどを……茅が理解しているかどうか……かなり、あやしい。
『……やっぱり、茅……アンバランスだよな……』
 荒野は、茅が「荒野を荒神に奪われる」ことを警戒しているのを、ようやく理解する。
「……こんなことしなくても、おれ、茅のほうがずっと好きだよ……。
 茅から、離れないから……」
 荒野が茅の頭を撫でながら、やさしくそう告げると、茅はふるふると頭を振った。
「……違うの……」
 茅は、荒野の男性を握りしめながら、複雑な表情をして、いう。
「……本当に、これ……荒野の……入れて欲しいの……」
 ……最初の動機こそ荒野の推測通りかも知れなかったが、いろいろやったりやられたりしているうちに、本当に発情してしまったらしい……。
 茅もだいぶ回復してきたようだし、荒野の方も充分に刺激されて茅の中を蹂躙したいという欲望をかき立てられていたので、急いで下半身だけ裸になり、避妊具を装着して、先端を、すっかり準備の整っている茅の入り口にあてがう。
 茅も、下半身にはなにもつけず、スカートを大きく捲り上げて、ソファの上で荒野を待ちわびていた。
「……服着たまま……こんな所、こんな恰好でやるの、初めてだなあ……」
 そんなことをいいながら、入り口に先端を接触させた恰好で荒野がじらすと、
「……早く……荒野の……欲しいの……」
 茅が、期待に頬を染めながら、おねだりする。
「茅、なにが欲しいの?」
「荒野の……」
「おれの、なに?」
「…………おちんちん」
 茅が言い終わるのと同時に、荒野は根元まで一気に茅の中に埋める。
 茅が、
「うひぃ……」
 という声を上げて、荒野の肩にしがみつく。悲鳴に似ていたが、明らかに歓喜を示す声だった……。
「茅の中……狭くて、熱い……」
 根元まで入った状態で、ソファの上に茅を組み敷きながら、荒野は茅の耳元に囁く。
「どう?
 茅……おれの、ずっぽり根元まで入れたよ……」
 埋めたまま、左右にゆるゆると腰を揺らすと、茅は顔をのけぞらせて、
「……ぅんっ……んっ……んっ……」
 と鼻息を荒くする。
 茅が顔をのけぞらせたところで、荒野は自分の顔を茅の顔を密着させ、口唇を重ね、舌を茅の口の中に入れ、ゆっくりと撹拌する。
 同時に、すっかり茅の中に埋めた自分自身も、出入りさせるのではなくて、埋めたままで先端で円を描くように、腰を動かす……。
「茅の中に入っているおれの、どう思う、茅……」
 ゆっくり時間をかけて、二カ所同時に茅の中を撹拌してから、荒野は顔を少し放して、茅の耳元に囁きかける。
「茅が気に入らなければ、このまま抜いちゃうよ……」
 囁きながらも、荒野は深く埋めたままの腰部を、ゆらゆらと動かしている。
「……荒野……意地悪なの……んんっ!」
 茅が恥ずかしそうに顔を背けてそういったところで、茅の奥深くまで刺さっていたものを一気に引き抜くと、茅が不満そうな吐息をついた。
「……茅がちゃんと感想いわないと、本当にこのまま抜いちゃうから……」
「荒野、抜いちゃ駄目!」
「入れて欲しい?」
 一気に引き抜いたので、辛うじて荒野の先端が茅の入り口に引っかかっている状態である。
「入れて! 荒野の硬いの、欲しいの!」
 引き抜いた時と同様、急激な動きで一気に茅の中を貫くと、茅は「うはぁ!」と息を吐いて、荒野の体にしがみつく。
「茅、ちゃんとおれのが全部入っているの、感じてる?」
「……感じる……荒野の硬いおちんちん、全部茅の中に入っているの!」
 茅がいい終わると同時に、荒野は、今度は一気に引き抜いて、間髪入れずに、再び、茅の中に元通りに埋める。
 茅は、荒野に貫かれながら、ソファの上で全身を痙攣させていた……。
「……まだ、茅の感想聞いてない……。
 茅、こうされるの、好き? 気持ちいい?
 ちゃんと、言わないと、このまま抜いちゃうよ……動かないよ……」
 再び、深く茅を貫いた状態で、荒野は茅の中で、円を描いた。
「動いて!」
 茅は、荒野にしがみつき、目を閉じながら、絶叫した。
「荒野の硬いの、気持ちいいの! 中で動くと、すごく気持ちいいの!」
 荒野が茅のお尻と太股を両腕で固定して、わざと乱雑に動き出すと、茅は喉を振り絞るように「いいの! いいの!」と声を上げながら荒野にしがみつき、ソファと荒野に挟まれた狭い空間で、じたばたと暴れはじめた。

 その日、二人はほぼ同時に絶頂を迎えた後、しばらくはぐったりと抱き合って、動かなかった……。

[つづき]
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