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彼女はくノ一! 第三話 (50)

第三話 激闘! 年末年始!!(50)

 そんな松島楓、ぬぼーっとした感じの狩野香也、鼻ピアスの樋口大樹の顔を順々に眺め、
「……勉強と言うことで言うと……こりゃ、わたしら二年生よりも、一年生のが、要注意じゃないかなあ……」
 と、飯島舞花が嘆息し、
「……同感……」
 樋口明日樹も舞花の視線を辿り、最後に狩野荒野の顔をまじまじと注視して、同意を示す。
「……狩野君、さ……美大とか、目指す気ないの?
 専門学校とか行って手に職、というのも悪くないけど……今の時期から計画的にコツコツと頑張れば、充分いけると思うけど……」
 香也の場合、実技に関しては人一倍時間をかけて基礎的な事柄を反復練習しているようなものだから……後は、他の学科のほうに足を引っ張られるのが、問題なのだ。美大に行くためには、その前段階として、ある程度の高いレベルの学校に進学した方が有利である……ということは、いうまでもない……。
「……なぁ、セイッチ……そろそろ、二人っきりで勉強、というのも飽きてきてないか?」
 飯島舞花はそういいながら隣に座る栗田精一の首に腕を廻す。
「まーねー! チョーク、チョーク!」
 そういいながら、舞花に半ば首を絞められかけている栗田精一は、さらに隣に座っている樋口大樹を引き寄せて、その首に腕を廻す。
「そーなりゃ、一蓮托生! 大樹、お前も付き合え! どうせ授業なんてほとんど出てないようなもんだから、ちんぷんかんぷんだろ!」
「こら! 栗田! おれを巻き込むなってーの!」
 栗田精一に引き寄せられた樋口大樹は当所そんな風に抵抗していたが、栗田が耳元で「お前なんか松島さんのついでだっつーの……」と囁くと、ようやく意図を察したのか、おとなしくなった。
「……そこまで言うんなら、しゃーねーなぁ……」
 飯島舞花と樋口明日樹は顔を見合わせて頷きあう。
「じゃ、そーいうことで……。
 新年からみんなで勉強会するから、松島さんも付き合ってね」
 樋口大樹とじゃれ続けている栗田精一から体を放し、立ち上がった飯島舞花は、そういって松島楓の肩を叩いた。
「セイッチ! 飲み物取ってくるの付き合え!」
 訳がわからないまま、いつの間にか「参加することになっていた」形の狩野香也と松島楓は、「え? え?」という顔をして、目をシロクロさせている。

「……で、この飲み物なんだけど……」
 スーパーの袋に満載して舞花たちが持ち帰った缶入り飲料を、樋口明日樹はうろんな顔をして眺めた。
「いいじゃん。せっかくのお正月なんだし。祝杯祝杯。
 今回は弱い人のために発泡酒や度数の弱いカクテル系も用意しました、みたいな……」
「……飯島、将来絶対酔っぱらいの大酒飲みなるよね……」
 樋口明日樹はそう呟いて軽くため息をついた。
 が……。
「……だいたいねー……」
 乾杯をしていくらもしないうちに最初にブレイクしたのは、当の樋口明日樹だった。
「……狩野君はもうちょっと自分の意志をはっきりというべきだと思うの。表にだすべきなの。わかる? 聞いている?」
「……この間のクリスマスの時は一緒になって酔っぱらっていたから気づかなかったけど……」
 飯島舞花はうんうんと一人頷いている。
「……樋口、絡み上戸なんだなあ……」
 ストレスを溜めやすい性格では、ある。
「……香也様香也様……」
 松島楓は泣きそうな声になって、隣に座る狩野香也にそっと耳打ちする。
「わ、わたしも、酔っぱらうと、あんなんなっちゃうんですかぁ……」
「……んー……楓ちゃんの場合は、もっと滅茶苦茶ハイになるというか……」
「……そこ! 人が話している時に仲良さそうにコソコソ内緒話しない!」
 樋口明日樹に座った目線を向けられ、指さされた香也と楓は、ぎくり、と体を強ばらせる。
「……いや、いいですよ。いいですよ。仲よくても……。でもね、狩野君、ちょっとよく考えてくださいね。ここに集まってきている人、なんだかんだいって狩野君の絵が無ければ、多分、今ここにこうして集まっていないんですよ……。
 柏さんの彼氏さんだってそうだし……狩野君の絵には、それだけ、人を動かす力があるのです! わかりますか? その意味、ちゃんとわかってますか?」
 樋口明日樹が香也の襟首を掴んでそういってがくがく揺さぶる。
 香也はなんとか「……う、うん……」と返事をすることが出来た。香也の返事を確認すると、明日樹はぱっと手を放し、いきなり支えを失った香也は、あやうく後ろに倒れ込みそうになる。
「よろしい。
 わかりゃーば、いいんですよ。わかりゃーば……」
 すでに呂律が回りきっていない口調でそう言い放ち、飲みかけの缶の中身を一気に空け、ぷはーっ、と息をついた樋口明日樹は、そのまま次の缶を手にし、プルトップを空けたと思ったら、それも、ぐびぐびと一気に飲み干した。
 さらに次の缶に手を伸ばし、プルトップを空けながら、香也の顔を見据える。
「……で、狩野君……。
 こーんな美少女ばかり侍らせて、さ……。君、これから一体どうするつもりなわけ? こんなかで君が一番好きなの、結局の所、一体誰なん?」
 樋口明日樹の言葉を受け、一瞬にしてその場の空気が凍りついた。
 狩野香也、松島楓、才賀孫子の三名の体が、傍目からわかるくらいに硬直している。香也の隣に座っていた楓は、香也の袖の布地を、ぎゅっと掴んでいた。
『……おれ、さっき、それどこのエロゲですか、っていったけど……』
 姉の言葉がもたらした硬化と効果を目の当たりにして、樋口大樹は、内心で冷や汗をかいた。
『……あれ、撤回したい……家庭内ハーレム状態……実際にあったとしたら……それは地獄だ!』
 地獄、までとは行かないかも知れないが、明日樹の言葉は紛れもない、地雷だった。言い出した明日樹自身からして、明らかに怯えた表情をして香也の返事を待っている。
「……んー……」
 しばらくの沈黙を挟んで、ようやく狩野香也がのんびりとした声を上げる。
「……それ、しばらく前から考えてたんだけど……自分でも、よくわからないんだよね……。その、好きとか一番とかって……多分、ぼくには、そういうの、まだ早いんだと思う……」

[つづき]
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