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髪長姫は最後に笑う。第四章(31)

第四章 「叔父と義姉」(31)

「さて、と……荒野たちは無事あっちいったな……こっからいよいよ本題だ。
 荒神のおっさん……」
「しかし、パチンコ屋とは考えましたね……この喧噪の中なら、ぼくたちがなにを話していても気にする人はいないでしょう……」
「……とかいいつつ、平気でこっちの分まで目押しもしてるし……適当に手を抜かないと、店のもんに怪しまれるぞ……」
「……いやぁ、ぼくらの目にかかれば、この程度の速度なんかとまっているようなもんです……。ま、あまり勝ちすぎるのもなんなんで、そろそろ負け越していきましょうか……」
「とかいいながら、また出してるし……。
 で、あんた。実のところ、なに考えているだ? こんな田舎町にいつまでもくすぶっていられる身分でもなかろう?」
「……いやぁ、本職のほうも、ちゃんとやりますよ。こっちの合間に……。
 長老に無理いって貸し作っちゃいましたからねぇ……。
 これでしばらく、週末はヨゴレ仕事三昧でしょう」
「いや……そっちの内部事情はどうでもいいけどな……。
 わたしが聞きたいのは、お前さんは荒野や茅たちの味方なのかどうか、ってこった?
 お前さん、一体なに考えている?」
「ぼくは、荒野君の叔父。それに、あの雑種……楓、とかいいましたっけ? あれを使えるように躾しなおしてみたくなったって、ただ、それだけです。
 ぼくが敵か味方か……それを判断するのは、ぼくではなく、荒野君のほうでしょうねぇ……」
 荒神は、うっすらと嗤った。
「彼……荒野君がこの先、ぼくら六主家とまともに相対したとき、一体どういう選択をするのか……。
 それを知りたいと思っているのは、ぼくも先生と同じですよ……。
 ……いや、先生よりも荒野君のことを深く知っているぼくのほうが、そうした興味は強いかも知れない……」
「……じゃあ、お前さん……。
 姫の仮説は聞いたんだろ? あれについては、どう思う?」
「さあぁ……。
 他の二宮はともかく、ぼく自身は、あまり興味ないなぁ……。
 あの、ねぇやと同じ名前の子は可愛いと思ったけど……。
 ぼくら二宮は、血筋よりも、個々人の修練とその成果を重視しますからねぇ……。
 遺伝子操作うんぬん、っていうのはようするに、よりよい素質を人工的に寄せ集めて都合のいい人間を作ろうって話しでしょ?
 そんな手間をかけるよりは、多少元の出来が悪いヤツでも、技を仕込むことで無理矢理使えるヤツに仕上げてしまったほうが、早い……と、我々二宮なら、そう考えます……」
 ……何百年もかけて、「普通の人間」を「使える人間」に仕立て上げる技術を、我々二宮は練り上げてきたんですよ……。ま。この点は、他の六主家も同様なんでしょうけど……。
 平静な態度でそう付け加える荒神をみて、三島百合香は脳裏に「二宮は、先天的な素質はあまり重視していない」とメモをする。
 荒神は二宮の長だという。
 だとすれば、荒神の価値観は、他の二宮の平均的な価値観と、大きくは乖離していない筈だ……。
 だから、「姫の仮説」が真である、と仮定した場合、二宮の関与は……ある種の取引による、消極的な協力者、といった役回りしか、果たしていないだろう……。
 少なくとも、主犯や企画者では、ないらしい……。
「……話題をかえるか……」
 三島は、隣りに座る荒神に向き直った。
「仮に、姫の仮説が真だとして……その企画を立ち上げたヤツらは、今後、どう動くと思うかね?
 お前さんがここに来ている、ってことは、茅の情報もお前らの間にただ漏れになっているってことだろ? ん?」
「さあ……ねぇ……。
 ぼくはそっちの側には立っていないんで、なんともいえませんが……新製品の試作品ができたら、まずやるのは性能テスト。その結果を考慮した上での、後継機の製造……。
 あたりが順当だと思うんだけど……なにぶん、モノがモノだからなぁ……。まともなテストが可能になるまでにものすごっく時間も手間もかかるもんだし……大方、今荒野君が確保している以外の姫を、直接ぶつけてくるかも知れませんねぇ……。
 そうすれば、どの完成品が一番使えるか、一発でわかる……」
「……ああ。
 その可能性は、野呂から紹介されたヤツも指摘していた……イヤな予測だが……」
「順当で、合理的では、ある……。
 三島さん、参考までにいっておくと、その手のことに熱心になりそうな六主家は、秦野か佐久間だね……。
 秦野は、六主家の中で、一番血を残すこと、子供の資質をコントロールすることに、拘る。
 佐久間は、優秀で従順な実働部隊を、喉から手がでるほど欲しがっている……。
 逆に、姉崎、野呂あたりは、その手の計画には、本気で乗り気にはなりそうもない……。野呂は、二宮と同じくらいに個々人の修練を尊ぶ連中だし……姉崎は……」
 ……あの連中が一番拘るのは、個々人の資質や能力ではなく、「血縁」だ……。
 と、荒神は吐き捨てるように断言した。
「血縁? 血と血縁って……」
「似て非なるモノですよ、三島さん……」
 女系の姉崎……彼女らの最大の武器は、体術などではない。
「寝技とコネクション。奴らは、自分たちの体を使って、世界中に網を張っている……」
 婚姻……という、太古から使い古されてきた手段で、じっくりと時間をかけて各地の有力者に間に入り込み、情報を収集する。太いパイプを構築する。必要とあれば、国家や企業などを、背後から乗っ取り、動かす……
 他の六主家から「姉崎」と総称される集団は、そんな性質を持った女たちだった……。
「……自身は背後に隠れ、他者を操る……それに「最弱」ということでは、姉崎と佐久間は共通しています。しかし……」
「傀儡操りの佐久間」は操る者を使い捨てにする。が、「女系の姉崎」は、操作する対象と利害を一致させ、同化し、とことん愛し、守ろうとする……。
「……だから、仮に姫の計画、というものが存在するとしても……姉崎が、積極的に荷担するわけはないと思います……」
 仮に今後、この件で姉崎が荒野君に接触してくるとすれば……。
「……多分、敵対行動はしないでしょう。
 だからといって、素直に荒野君に協力してくれるかっていうと、そいつは微妙な所ですが……」
「……随分と親切に説明してくれるじゃないか……」
「三島さんとぼくとは、これから同じ職場に通う同僚になるわけでしょ? 親切にしておいても損ではないでしょう。
 それに、この程度のことは、荒野君だって簡単に推測できる事だし……。
 ……それに、ぼくの敵は荒野君ではない。
 荒野君の父親、仁明だ……」
 荒神の朱い舌がひらひらと踊っていた。
「……今後、ぼくが仁明を倒すことがあったら……その時こそ、荒野君はぼくを『敵』と見なすようになるかも知れない……」

[つづき]
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